【要約】

  • 厚生労働省では、健康保険証だけでなく、介護保険証もマイナンバーカードに一体化する方針を固めている
  • 医療は先行して2024年12月からスタートする
  • 介護情報基盤がどう構築されるのか注目していかなければならない

【1.マイナカード、いわゆるマイナンバーカードと保険証との関係】

マイナカードとはマイナンバーカードのことで、個人番号通知書カードなどの必要書類を自治体の役所窓口に申請、手続きすることで得られるデジタルに対応した個人番号カードです。また、既に国民の70%超が作成済みという状況であるため、若い人であればほぼ全員お持ちなのではないでしょうか。

少し前に、マイナポイントのキャンペーンがあったことは記憶に新しいでしょう。筆者も区役所が手続きの人たちでごった返ししていた記憶があります。

マイナポイントのキャンペーンでは、普通にマイナンバーカードを作るだけでなく、健康保険証も一体化する「マイナ保険証」を登録するとさらにポイントアップできたことは覚えていらっしゃいますでしょうか?かく言う筆者も追加ポイント欲しさに健康保険証機能を付加しました。さらに新しい物好きも加わって早速病院でマイナカードリーダーを発見してマイナカードで診察して頂きました。勿論、その後の調剤薬局でも使ってみました。顔認証がちゃんと認証されるか少し怖かったですが問題なく、ほっとしたことを覚えております。このマイナカードですが、健康保険証機能はこのマイナポイント時代に付加した方が大半なのではないでしょうか?

そして、ご存知の通り、日本の保険制度は健康保険だけではありません。

そう、国民皆保険の対象、介護保険です。
介護保険は若いうちは存在すら認識していないこともある保険です。40歳以上で保険料の支払いが発生し、その年齢でがんやパーキンソン病などの特定疾病により介護が必要であれば第二号被保険者となります。認知度の高い「介護保険」については、65歳での第一号被保険者となります。現在国内では約3,600万人以上がこの保険証を所持しています。
この介護保険があるからこそ、日本人は老後の心配については他国に比べると少ないと言ってよいでしょう。老いてもなんとか生活できるという安心は何物にも代えられません。

マイナカードの介護保険証との一体化については社会保障審議会にて繰り返し議論が行われており、「2026年の導入を目指す」となっています。しかし、現時点では、利用者だけでなく事業者に対する配慮についても検討課題が山積みであることは周知の事実です。パスワード管理問題、自力で取得できない高齢者対策、高齢者を対象とした犯罪被害を防ぐ方策、情報保護への懸念、事業者でも心理的・経済的、運用負担もかなりのものです。政府の方針では、「しばらくは紙と併用で」とはアナウンスされています。しかし、それがいつまで続くのか、不安が募ります。

【2.マイナ保険証普及の状況を注視すべき】

マイナカード自体の普及は全国民あたりで70%を超えていて、「かなり普及している」状態と言えます。2024年の12月2日には紙の保険証の新規発行が廃止され(発行済みの健康保険証の使用は有効期限内は可能。有効期限は最長で2025年12月1日まで。)、どれくらいの混乱があるのか、まずは医療の状況に注目しています。

今まで使えていたものが使えなくなるということは、若い人には大きなリスクではないかもしれませんが、高齢者にとっては非常に厳しいことです。例えば、スーパーのレジに並んでいる人を見ると分かりやすいですが、スイスイ進むセルフレジの待機列に高齢者が並んでいる様子をあまり見かけません。筆者のような中年以下がセルフレジ愛用者層の中心だと思われます。

【3.社会保障審議会の状況】

このマイナカードと介護保険証の一体化については、「介護情報基盤」という言葉がキーワードになっています。厚生労働省は、国のインフラとしての介護DXを推し進めようとしており、介護事業所・施設、医療機関、自治体等の関係者が利用者情報を電子的に共有することで享受できる手続きの簡素化とペーパーレス化というメリットを国民全体に届けるべく、今、生みの苦しみのさなかにあります。

社会保諸審議会では「介護情報基盤」というキーワードがかなりの回数で出現しています。これは社会保障全般にわたる情報をいかに統合し、管理工数を減らしていけるかという時代の過渡期の象徴のように感じられます。日本の人口が減っているということは公共サービスも縮小せざるを得ないということは誰でもわかりますが、そのために電子化が必須で今しかないという切迫したタイミングであるということでもあります。

【4.介護情報基盤とは】

では、介護情報基盤とは具体的にどういう意味なのでしょうか?

介護情報基盤とは、介護事業所やケアマネジャー、医療機関、利用者、市町村などの自治体の間で介護情報を共有する仕組みのことになります。

2022年に政府より、「医療DXビジョン令和2030」が提言され、医療のDX化、効率化、医療資源の適正な利用といった問題の解決が目的とされています。この中で、政府は3つの取り組みについて推進するとし、そのうちの一つが、「全国医療情報プラットフォーム」となります。

参考資料:厚生労働省|第4回「医療DX令和ビジョン2030」厚生労働省推進チーム資料について

「全国医療情報プラットフォームとは」

全国医療情報プラットフォームとは、医療情報基盤、介護情報基盤、行政・自治体情報基盤を構築することで、医療・介護・自治体に関するサービスを受ける際の手続きの簡素化や共有、情報の二次利用を行うことでのサービス向上をはかる仕組みです。

全国医療情報プラットフォームの全体像(イメージ)

出典:厚生労働省|全国医療情報プラットフォームの全体像(イメージ)

行政においてはこの「医療DXビジョン令和2030」の提言による取組の推進項目が元となって、現在も介護情報基盤についての議論が行われているのです。

なお、この全国医療情報プラットフォームが完成した暁には、電子カルテ・予防接種・電子処方箋・レセプト・介護・手続きの状態が医師も医療機関も介護関係者も自治体も利用者情報が簡単に確認できるため、医療では診察や検査に活用が期待され、また利用者自身も自分の状態を確認することが容易になるということです。

【5.医療は2024年12月から】

医療という単語が強調されていることでもわかりますが、まずは医療方面からメスが入っています。その結果が2024年12月からのマイナ保険証です。

マイナ保険証が使えない場合の資格確認書はありますが、積極的な宣伝がないですので、やはり国としてはあまり使わないで欲しいのだろうなという雰囲気は感じます。

2024年12月以降、医療機関ではどのような状態になるのでしょうか。
これが介護に置き換わった場合、認知症や寝たきりなどの問題で介護施設だけでなく居宅介護に関わる介護事業所がマイナカードを保管しなければならないなどの問題が追加されてどんな問題が予想されるでしょうか。

まずは先行している医療を注視しなければならないでしょう。

【6.マイナカードリーダー(読み取り機)って高い?】

さて、実際に介護保険でマイナカードの運用が始まると、カードリーダーは必須の設備となります。

今現在、医療機関が導入しているような顔認証システム付きの設置型のカードリーダーはどんなに安くても10万円以上が当たり前の相場になっており、しかも、12月に備えてか現在品切れが目立ちます。

また、医療領域で介護領域にも近い動き方がある「訪問看護」では、オンライン資格確認の方法として「マイナ在宅Web」というシステムがあり、NFC対応のモバイル端末であれば、無料で利用可能となっています。

ただし、そのNFC対応のモバイル端末という機種の限定において、決して安くない機種代が要求されます。

現在は事業毎に上限指定された補助金があるようですので、介護分野ではどのような形で補助金が出るのか気になります。

【7.まとめ】

2024年12月からの健康保険証のマイナカードとの一体化を皮切りに、2026年以降で介護保険証との一体化の方針も示されています。

今現在、先行する医療情報基盤の方でどのような課題が発生し、どのように解決・処理されたのか、我々は国民としてもしっかり見ておかなければならないでしょう。

医療はロジックが積み重なって様々なシステム化が介護より先に進みました。介護も後を追う形で現在、様々なロジックでシステム化が進んでいます。

医療で成功したからそのまま介護で成功するかというとそうではない部分もあるでしょう。国民皆保険制度である介護保険だからこそ、今課題に直面している介護業界だけでなく国民全員が認識すべき情報です。

※この記事は2024年11月に書かれたものです。ご覧になる年度や時期によっては内容が古くなります。最新の正しい情報は各自治体にお問い合わせください。

※介護保険制度の詳細については各自治体の介護保険制度の担当窓口にお問合せください。