協力医療機関という言葉は一般的にはクリニックのような小規模の病院の協定書でよく見かけます。皆様はそんな協定書が張り出されているのをご覧になったことはありますでしょうか?
協力医療機関は介護にもあります。
特別養護老人ホーム(特養)、介護老人保健施設(老健)、特定施設、介護医療院のような施設の他にも、グループホームや有料老人ホームのような宿泊を伴う施設、また通所介護や訪問介護のような在宅介護サービス事業所にも協力医療機関は存在しています。
2024年の介護報酬改定では、協力医療機関連携加算が創設され、にわかに注目を浴びています。今回は、新しい加算「協力医療機関連携加算」について解説します。
目次
【1.協力医療機関とは?】
協力医療機関とは、厚生労働省が定めた制度で、介護老人福祉施設や介護老人保健施設などの介護施設または指定障がい福祉サービスおいて、入居者の容体急変時に24時間365日対応していただける医療機関を予め定める事を制度化したものです。つまり介護施設におけるかかりつけ医のようなものですが、医療機関は立地も近い必要があります。
また、逆もしかりで、介護施設側も入所者の病状が改善し退院が可能となった場合には速やかに再入所ができるようにしておく必要があります。
なお、介護施設が協力医療機関として医療機関に協力を仰ぐには、「協定書」等を締結している必要があります。
【2.協力医療機関連携加算とは?】
協力医療機関連携加算とは、介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院、認知症対応型共同生活介護について、協力医療機関との実効性のある連携体制を構築するため、入所者または入居者の現病歴等の情報共有を行う会議を定期的に開催することを評価する加算です。
令和5年11月の社会保険審議会において、高齢者施設等と医療機関の連携強化についての議論が行われました。そこでは協力医療機関の指定を明記してもなかなかその連携が機能していない事や新型コロナ感染症の教訓をどのように活かすか、地域包括ケアの目線からの関係構築、DXの推進などの意見が出され、対応策が議論されました。
※出典|厚生労働省 令和5年11月16日 社会保障審議会介護給付費分科会(第231回)資料5
(高齢者施設等と医療機関の連携強化|改定の方向性)
そして協力医療機関との平時からの実効性ある連携体制の構築を目的として新設となった「協力医療機関連携加算」については令和6年度の報酬改定により施行されています。
協力医療機関連携の構築は令和6年改正省令附則第6条において令和9年3月31日までが経過措置期間で努力義務となっており、その間が現行加算の適用期間となります。
【3.対象の介護サービス】
対象となるのは以下のサービスです。
- 介護老人福祉施設
- 地域密着型介護老人福祉施設
- 介護老人保健施設
- 介護医療院
- 特定施設入居者生活介護
- 地域密着型特定施設入居者生活介護
- 認知症対応型共同生活介護
【4.算定要件】
協力医療機関連携加算の算定要件は以下の通りです。
協力医療機関との間で、入所者等の同意を得て、当該入所者等の病歴等の情報を共有する会議を定期的に開催していること。
引用|厚生労働省|令和6年度介護報酬改定における改定事項について P35
1. (3)⑳ 協力医療機関との定期的な会議の実施
また、会議の概要は以下に規定されています。
介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院、認知症対応型共同生活介護について、協力医療機関との実効性のある連携体制を構築するため、入所者または入居者(以下「入所者等」という。)の現病歴等の情報共有を行う
また、特定施設における医療機関連携加算について、定期的な会議において入居者の現病歴等の情報共有を行う
引用|厚生労働省|令和6年度介護報酬改定における改定事項について P35
1. (3)⑳ 協力医療機関との定期的な会議の実施
算定要件は単純に見えますが、会議の概要を確認すると「体制を整える」という事が単純ではないことが分かります。指定医療機関の加算要件もあるため併せてクリアすることが必要です。
そのため「この地域の利用者様の主治医になっている事が多い、近い、親切な職員が多いので、あそこのクリニックが良い」と考えて、「そういうことですのでお願いします!」で簡単に決めることができないのがポイントです。また、会議についても定めがあり、協定も締結する必要がありますので、加算要件の体制構築は作るまでが大変だと言えます。
協力医療機関連携加算を算定するには、以下の協力医療機関の加算要件を満たした協定である必要があります。
また、以下3条件を満たした医療機関を指定権者(市区町村)に届け出ることが加算を多く取得するためには必要となります。
- 常時対応体制の確保:入所者等の病状が急変時などに、医師や看護職員が相談対応する体制が常時確保されていること
- 診療体制の確保:高齢者施設等からの診療の求めがあった場合、診療を行う体制を常時確保していること
- 入院受け入れ体制の確保:入居者等の病状が急変時などに、入院を要すると認められた入所者等を受け入れる体制を原則として確保していること。施設入所者専用の病床を確保する必要はなく、一般的に地域で在宅療養を行う者を受け入れる体制があればよい
※3条件は複数の医療機関と連携を確保することで条件を満たすことも認められています。
この要件を満たした協力医療機関との協定書等を1年に1回以上、協力医療機関との間で、入所者の急変時などの対応を確認するとともに、その協力医療機関の名称などを指定権者へ届け出なければなりません。
▼届け出の様式は以下のリンクよりダウンロードできます。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_38294.html
【5.単位数】
算定要件と協力医療機関の条件を全部満たしていれば、加算単位数は多くなり、満たしていなければ少なくなります。
また、対象サービスによっても単位数は変わりますので把握が必要です。
対象施設 | 協力医療機関の条件 | 単位数 |
---|---|---|
介護老人福祉施設、 地域密着型介護老人福祉施設、 介護老人保健施設、 介護医療院 | 1、2、3 | <1~3の算定要件を満たす場合> 100単位/月(令和6年度) 50単位/月(令和7年度~) <それ以外の場合> 5単位/月 |
特定施設入居者生活介護、 地域密着型特定施設入居者生活介護 | 1、2 | <1~2の算定要件を満たす場合> 100単位/月 <それ以外の場合> 40単位/月 |
認知症対応型共同生活介護 | 1、2 | <1~2の算定要件を満たす場合> 100単位/月 <それ以外の場合> 40単位/月 |
【6.協力医療機関連携加算の注意点、適用期間とは?】
協力医療機関連携加算は、対象介護サービスでしか算定できません。
施設内の利用者様の中で対象外となる利用者様については注意が必要です。
「算定時に混同しやすいサービス対象者」
- ショートステイ(短期入所生活介護)のみの利用者
- 要支援2(総合事業)のグループホーム利用者
また、前段でも触れていた通り、こちらの加算には適用期間が儲けられています。
協力医療機関連携を構築する猶予期間を令和9年3月31日としており、それまでこの加算は適用ができます。加算の算定を目指すことで協力医療連携機関連携を推進することができますので、可及的速やかに連携体制を構築することが望ましいとされていることからもこの猶予期間になるべくお早めに準備を進め、加算を取得してください。
「厚生労働省の解釈通知について」
一言で「会議」、一言で「連携」と言ってもどんな内容をもってしてそのように認められるかについては非常に難しい決断となります。
是非、こちらの資料を参考にイメージを固めていただければよいと思います。
※参考資料:厚生労働省 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(短期入所サービス及び特定施設入居者生活介護に係る部分)及び指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について(平成12年3月8日老企第40号厚生省老人保健福祉局企画課長通知)(抄)別紙2 P35~36
「一部抜粋」
- 毎回の会議で入居者全員の詳細な病状を共有しなくても良い、診療の可能性のある入居者や新規入居者を中心に共有すること
- 協力医療機関が複数あった場合にはそれぞれの医療機関と会議を設けること
- 会議は1ヵ月に1回の開催が必要とあるが、入居者情報が電子的システムにより医療機関で随時確認できる状態の場合には「定期的に年3回以上の開催」で良い
- 会議はオンライン開催可能(但し、厚生労働省の医療情報システムの安全管理に関するガイドラインの遵守が必要)
- 入居者の病状が急変した場合の対応確認と一体的な開催が可能
- 協力医療機関への情報提供方法は電子でも良いが、医師または利用者の主治医から署名もしくはそれに代わる方法において受領の確認が必要
【7.まとめ】
協力医療機関連携加算は、現行の形は令和9年3月31日までとなります。その後介護医療連携は義務化するため、最終的には体制は構築する必要があります。
必要事項と意味を理解し、適用期間を終了する前に早めに対応することが加算を算定するコツとなります。
最後までお読みいただきありがとうございました。
※介護保険制度の詳細については各自治体の介護保険制度の担当窓口にお問合せください。