介護事業においては、マネジメントの重要性が特に最近注目されています。

ご存知の通り、2024年から厚生労働省は介護事業の経営状態を開示するよう求めています。

現状、介護事業の経営は、旧来通りの運営を行った場合には物価高騰や、慢性的な人材不足で大変苦しい状況が続いています。

そのような状況の中で「マネジメント」の重要性は増すばかりです。では今までは介護業界において、「マネジメント」というものはそもそも機能していたのでしょうか。

他業界との比較や、デイサービスの実際の現場における事例からマネジメントを考えてみたいと思います。

目次

  1. 1.介護におけるマネジメントとは
  2. 2.現場から考えるデイサービスのマネジメント
  3. 3.管理部門を確保するための施策
  4. 4.まとめ

【1.介護におけるマネジメントとは】

介護福祉業界に身を置く方であれば、「マネジメント」という単語で多くの方が思い浮かべるのはケアマネジャーさんが行う利用者様のケアマネジメントのことではないでしょうか。

また「アンガーマネージメント」も身近ではないでしょうか?自分の怒りの感情をどのようにコントロールするかという場合、現場で有用なマネジメントとして研修でも扱われることがあります。

このようにマネジメントには多くの種類がありますが、今回は、「介護事業を管理運営する上ではどのようなことが必要か」という意味に限って解説します。

「厚生労働省のイメージする介護の”マネジメント”」

厚生労働省は、介護事業における「マネジメント」という仕事をどのように捉えているのでしょうか。

厚生労働省が運営する職業情報提供サイト(愛称:jobtag(じょぶたぐ)、日本版O-NET)というサイトがあります。

「ジョブ」(職業、仕事)、「タスク」(仕事の内容を細かく分解したもの、作業)、「スキル」(仕事をするのに必要な技術・技能)等の観点から職業情報を「見える化」し、求職者等の就職活動や企業の採用活動等を支援するWebサイトです。

この職業情報提供サイトに介護事業の施設管理者はこのように紹介されています。

”施設管理者の役割は、公的施設の場合は施設の管理・運営と人材及び業務のマネジメントである”
引用:job tag(厚生労働省職業情報提供サイト|日本版O-NET)

引き続き、定義を引用しますと、

施設の管理・運営とは、【建物や設備の管理や必要に応じ改修などを行い、施設内の環境の維持、改善に取り組む。また、介護施設の運営方針や事業計画、年間目標の設定を行うこと】をいい、また業務マネジメントも含んだ内容となっているため、【提供するサービス内容や利用者とスタッフ数のバランスなどを踏まえて、具体的な施策を立案し、施設の運営を行う。加えて、利用者の数が安定的に推移するように、入居促進のための営業やイベントを開催し、入居者となる方の家族、近隣住民への周知活動を行うことも仕事である】とされています。

また、人材マネジメントとは、【スタッフの管理がメインとなり、採用、育成、定着支援が重要となる。優秀な人材を採用し、適正な人員配置に留意する。また、勤務表の作成、スタッフの福利厚生の管理や行政への手続き、残業・有給休暇の消化状況の把握などの労働時間管理、スタッフの出退勤やシフト体制の管理などの労務管理を通して、働きやすい職場環境づくりを行うことも大切な仕事といえる】、また【スタッフの介護スキルの向上を目的とした研修や関連の法令や規則を守るためのコンプライアンス教育などサービスの質の向上を図るための人材育成も行う】としています。

その他に有料老人ホームなど民間の営利法人の場合は収支のマネジメントも求められます。経営目標を持って入居促進のための営業イベント開催などを行ったり、ご家族や近隣の方への周知活動も仕事の範囲となります。

例に上がっていたのは施設系の介護サービスではありますが、これが厚生労働省の考えている施設管理者業務です。

また、管理・運営という仕事においては、介護というのは高齢者の生活を一時的または長期に支援する仕事なので、【リスクマネジメント】という面が強く求められます。

では介護現場で求められる【リスクマネジメント】とはどのようなものがあるのでしょうか。

ざっと主要なものをあげてみても以下のようなリスクがあります。

  • 地震・台風・水害等の自然災害
  • 火災
  • 情報漏えい
  • 訴訟
  • 風評被害
  • 労災事故
  • 職員不祥事
  • 近隣からの苦情

それぞれ詳細を詳しくは述べませんが全て気を配らなければならない大きなリスクです。特に地震や洪水は最近頻繁に起きているので、BCPの作成などは欠かすことができないものでしょう。実際に令和6年に策定が義務化されました。

他に事前対策することができるリスクとして

  • 建物や設備の老朽化や故障
  • 運営資金の枯渇
  • 猶予期間のある制度変更への対応

などがあります。管理者の仕事が非常に多岐にわたっていることがよくわかります。

「一般企業におけるマネジメントとの違い」

こうやって対応すべき項目を箇条書きに並べてみると介護福祉事業における「マネジメント」は、一般企業における管理者層の行うべき仕事と文面上、大きく違わないことが分かります。

前項で並べた介護施設長の仕事を大きく分類すると以下の4つになると思います。

  1. 業務マネジメント: 施設運営全体サービス内容、具体的な施策を立案実施、設備維持管理
  2. 人材マネジメント: スタッフのマネジメント。人材の採用、育成、定着と適正な人員配置働きやすい職場環境づくり
  3. 収支マネジメント: 入居促進のための営業、利用者のご家族や近隣の方への周知活動、運転資金管理
  4. リスクマネジメント: 予想できないリスクへのBCPの推進、制度変更への対応

サービス提供をこなしつつ人事、経理、リスク管理とこれに伴う事務仕事を全て管理監督しなくてはならないというかなりのハードワークです。

ほかの業種で「施設管理者」を置き換えてみると、例えばホテルや旅館の総支配人ですと「施設管理」と「人のケア」という部分では共通点があると思います。

そのような一般企業のホテルや旅館の総支配人と最も大きく異なるところは、ズバリ顧客獲得です。

旅館やホテル業などの場合、売上を上げるためには立地やコンセプトにもよりますが、基本的には不特定多数の新規の顧客を開拓し、リピーターを増やすというための施策を考えねばなりません。そのために営業や宣伝活動は不可欠なものです。

これに対し介護施設管理者の場合、地域に受け入れられるという面とケアマネジャーに介護施設の事を知ってもらうという地道な認知活動が必要になります。

しかも対象者は、介護保険の利用者様に限定されます。非常にニッチな市場であることがわかります。ただし、介護保険の枠内でのサービス提供である場合、必ず国保連合会に正しい請求ができれば資金は入金されるので、売上回収の手間や不安というのは介護業界の場合はないのが特長でしょう。もちろん、保険外や自己負担分であれば利用者様との金銭のやり取りは必要です。

いくら売上の回収はある程度保証されているとはいえ、地域の趣味趣向も違う利用者様の生活支援サービスで他事業所と差別化し、個別の事業所として営業することで新規獲得していかなくてはならないというところを考えると、介護の業態にもよりますが、一般企業に比べると営業面では介護福祉事業のマネジメントの方が大変なような気がします。

「給与面から見たマネジメント層」

さて、介護の施設長の給与と、先ほどから出ている一部共通点のあるホテルの総支配人の給与を比べてみるとどうでしょうか。

インターネットを検索すると、業種別に平均年収を表示している求人サイトがありました。

こちらのサイトでホテルの支配人を調べてみると2024年9月時点の国内の平均給与は年収約514万円です。ざっくり500万円前後が全国平均だということが分かります。

次に介護施設長と調べてみると同じ2024年9月時点の平均給与は年収約291万円です。

これらの数値は、求人サイトに掲載されている求人データが元になっているので実際の正確な介護施設長の給与ではありません。また、介護施設長も、ホテルの支配人も最初の給与は「候補」という形で低く抑えられている傾向があるのは否めません。

しかし、同じような例としてあげたホテルの総支配人と比べると”平均”はずいぶん差があることが分かります。

理由を探るべく、求人データをよく見てみると、介護施設長という募集要項には給与だけでなく待遇面で大きな差があることが分かります。

ホテルの総支配人と見劣りしないレベルの給与を提示している企業や団体もあれば、なんと業務委託で時給数千円の介護施設長を募集しているところもあります。つまり、「介護施設長」という職種は、募集しているところによって待遇差が激しいので平均額が低く落ち着いてしまっているようなのです。つまり、業務委託のような求人内容ではない介護施設長であれば、ホテルの支配人の求人内容とはそう変わらない給与の提示もあるという事になります。

念のためですが、ホテルという業態と介護事業というサービスとでは、施設を利用されるお客様の目的も提供されるサービスの種類も全く異なり、必要な設備も責任も多くが異なります。あくまで「施設管理」が必要で「人をケア」するという共通点のみの例で出しただけですので完全な比較対象にはなり得ないことはお断りしておきます。

介護施設の場合は通所であれ施設系であれ、生活に支援が必要な高齢者に寄り添い、生活能力の維持・向上のサポートや介助を行うお仕事です。そういった面から考えると、介護施設の方が利用者様の体力や動作の面から考えると、庇護や保護の観点から何かしらのリスクに直面する頻度は高く、責任を感じる場面は多いのではないかと思います。

いずれにせよ、厚生労働省の定義する介護施設長の仕事の質及び量を考えると、平均給与や待遇は低い事があると言わざるを得ないのではないでしょうか。

「介護施設長の給与は間接労務費?」

では、なぜ介護の管理者、施設長の給与を上げられない場合があるのでしょうか。

一般の会社で言えば、介護施設長の経費は間接労務費です。詳しい説明はここでは省きますがサービスを提供する原価とみなすことはできないということです。

しかし介護保険で基本が成り立っている介護事業者は、サービスを提供しない限り入金はありません。サービス提供を行う人については、必ず回収できる仕組みがあるのですが、間接的な費用については、介護保険内で手当をする仕組みが加算しかないのです。

一方で、厚生労働省は経営計画というものを開示するように求めています。

業務の管理、人材管理、経営計画や運転資金の確保等は、介護事業の運営に必要不可欠であり、これらの業務を行う人が必要です。これらは明らかに間接労務費です。

必要な間接労務費を賄えない介護保険制度の実態があるわけですが、具体的な事例としてデイサービスのマネジメントを考えてみましょう。

【2.現場から考えるデイサービスのマネジメント】

ここでは、知人が経営しているリハビリ中心のサービスを提供するデイサービスを参考に、具体的なデイサービスというのを考えてみます。

ちなみに知人は管理者で、名刺には「管理者兼取締役」とありました。が、一時はほぼ毎週現場に入って送迎を行っていました。

なぜ、「取締役」という一般的には経営層である役職の方が現場の送迎をしているのか理由を検証していきます。

「デイサービスの人員配置基準」

ご存知の通り介護福祉施設の事業所開設にあたっては人員の配置基準というのは厳密に決められています。デイサービスを運営するにあたっても当然決められています。

多少まどろっこしい面もありますが、管理者の仕事が兼務で認められている事実を理解するには人員配置基準から入る必要があります。

仮に午前1単位、午後1単位に分けて、午前中10名、午後10名のご利用者様を抱えるデイサービスを維持運営するのにどのような資格を持った人が何人必要なのでしょうか。

「必要となる人員・設備等」

※資料出典:厚労省資料 社保審-介護給付費分科会 第141回(H29.6.21)
通所介護及び療養通所介護(参考資料)P2

この厚生労働省の指針に乗っ取って利用者定員が10名の場合必要な人数とはこのようになります。

職種必要人数資格要件備考1備考2
管理者事業所毎に1名なし常勤専従職務上支障がない場合は、認められる
看護職員単位毎に1名看護師もしくは准看護師常勤である必要なし
介護職員単位毎に1名
15名に1名が目安
なし生活相談員または介護職員のうち1人以上は常勤でなければならない
生活相談員事業所毎に1名社会福祉主事、社会福祉士、精神保健福祉士、生活相談員または介護職員のうち1人以上は常勤でなければならない
機能訓練指導員事業所毎に1名理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護職員、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師、はり師又はきゅう師加算取得には常勤専従が必要職務上支障がない場合は、認められる

シンプルな表に見えますが、介護職員の必要な職員数の計算方法はもっと複雑です。おおよそ15人を超える場合は、一人増える利用者が増えるごとに必要な介護職員の数が増えていくという計算です。

では、この5つの職種の内、常勤で何人の職員が必要なのでしょうか?

厚労省の資料には「生活相談員または介護職員のうち1人以上は、常勤」という記述があります。

また、個別機能訓練加算Ⅰという加算を取りたければ、機能訓練指導員は常勤でなくてはいけません。しかし、兼務は可能です。

注目していただきたいのはデイサービスの運営にあたる管理者は、常勤専従ではありますが、特別な資格要件はなく、無資格でもできる職種として扱われています。職務上支障がなければ他の職種との兼務が認められます。

もう少し正確には、同一事業所内の他の職務、または他の事業所の職務との兼務が認められていましたが、これは令和6年の法改正で緩和されました。同一敷地内でない事業所、施設であっても兼務が認められるようになりました。

つまり、実際に運営したら厳しい労働環境にはなりますが、営業時に事業所内に最低3名の常勤職員がいて、各々が適切な資格を有していれば、このデイサービスは人員配置基準を満たしているということになります。

「管理者を兼務せざるを得ない理由」

最低3名の常勤職員が必要だとして、次はデイサービスの収入面を見ていきます。

現在のところ、デイサービスの収入は介護保険請求によるところが大きいです。

介護保険請求は、介護度と利用時間によって点数が決められており、1点が10円として計算されます。

デイサービスの利用者がほぼ100%おやすみなしにデイサービスに来てくれたとしても、午前10名、午後10名というパターンであれば1ヶ月の介護保険による収入はほぼ上限が決まってしまいます。

人手不足で他業界との人材獲得競争もある中で、職員の給与を上げるためには、常勤の人数を削減するために管理職の兼務も認めざるを得ないというのが実態なのだと思います。

「兼務でデイサービス管理者は可能か?」

上記のような理由で、建前上は、職務上支障がない場合でといいつつも、実際には経営上の理由から、小規模のデイサービスの管理者は兼務されることが多いと思われます。

では実際に兼務で、デイサービスの管理者の業務は可能なのでしょうか?

前項で述べた管理者の仕事は大別して、①業務マネジメント(施設運営全体サービス内容、具体的な施策を立案実施、設備維持管理)、②人材マネジメント(スタッフのマネジメント。人材の採用、育成、定着と適正な人員配置働きやすい職場環境づくり)③収支マネジメント(入居促進のための営業、利用者のご家族や近隣の方への周知活動、運転資金管理)④リスクマネジメント(BCPの推進、制度変更への対応)の4つです。

デイサービスであれば、大規模な施設は不要かもしれませんが、施設の借用、維持管理、機械や道具のメンテナンスという業務はやはり発生します。

これらの管理者の業務に加えて、介護現場の仕事をするというわけですから、やる気があれば可能は可能なのでしょうが、管理者の個々人の善意と努力によってギリギリ回っているという方が正しい気がします。

仕事を丸投げできる部下はいないので、究極のプレイングマネージャーとしての役割を求められる厳しい仕事です。

しかも給与面で言うと一般の会社の管理職とは大きく水をあけられている場合もあります。また、他の業界からマネジメントの能力のある人をスカウトしようにも、給与や待遇面で納得がいく条件を提示しないと来てはくれません。

管理者の方が管理業務に専念できるような体制を作る必要があります。

【3.管理部門を確保するための施策】

管理者をはじめとして、マネジメント業務に専念できるようにするには、独立した管理部門が必要になります。そのためにはまずは間接労務費を確保する必要が出てきます。

そのためにはどうすれば良いのでしょうか。

簡単に考えた場合、介護保険の制度の中で、例えば管理者が常勤でいる場合は、マネジメント加算をします、というのは手っ取り早い解決策に思えます。しかし社会保障費が膨らむ中、そのような手当は提案したとしても、すぐに現実になるとは思えません。

また、相当のものとして一般企業の職責手当がありますが、あくまでも管理職が会社の【利益】に貢献するという職責に対して認められるものです。

利益という概念がない介護業界で、その職責と貢献度合いの尺度が曖昧なまま手当だけをつけても、能力のない管理職だけが増えていくような気がします。

では介護保険に頼らず、間接労務費を賄えるだけの収入を確保するにはどうすればいいのでしょうか。

「規模の拡大」

これはすでに起きつつあることです。同一敷地内でなくとも、管理者は兼務が認められるようになりました。

小規模なデイサービスであっても、人気が出るようなサービスを提供し、2つ目、3つ目と事業所の数を増やしてゆけば良いわけです。

同一敷地内に、親和性の高い介護事業を新たに展開するのも1つのやり方です。サービス付き高齢者住宅と通所介護事業所を併設したりするのはよくみられます。

介護業界でM&Aが増えているというのもこうした事情があると思います。

規模を拡大して管理部門を共通化すれば、間接経費も間接労務費もまかなうことができ、良いサービスやICT化等への新たに投資ができる余地も生れてきます。

「混合介護」

上記のような規模を追求するやり方で、間接経費や間接労務費を捻出することはできるでしょうが、収入を増やすということは難しい事です。

介護保険の収入は上限がある以上、これからは介護保険外の収入を増やしていく方法を模索するべきだと思います。

混合介護は現在一部規制緩和されています。しかし、実際に利用しようとすると内容は不完全であり、使い勝手はよくありません。というのも、認められているのはあくまで被介護者だけであるということもあります。

まだ法的には認められていることが少ないですが、今後は混合の介護を認めるべきだと思います。

医療の場合は、保険内治療と、保険外治療を明確に線引きをすれば、同一の医者が施術をすることは認められています。

身近な例では、歯科です。歯の虫歯治療では、患者が詰め物を選ぶことができます。保険内の治療であれば金属になりますし、保険外では高くはなりますがセラミックを選ぶこともできます。どちらを選んでも、同じ歯科医で施術をしてもらうことができます。セラミックの保険外治療をやる場合は、医者が交代するなんてことはありません。

同じように介護の世界でも、同一人物が連続して介護保険外サービスを提供できるようにすべきだと思います。それが収入を分かりやすく増やせる方法でもあると思います。

介護ヘルパーに代表される訪問介護の世界では、混合介護が認められないことは特に難しいことだと思います。

現在では、利用者様のために夕食を作るのは介護保険内サービスでも、一緒に住んでるご家族のために夕食を作るのは介護保険外サービスなので、一人分しか作ってはいけないわけです。

しかし、1人分の夕食を作るのも、2人分の夕食を作るのも、それほど手間は変わりません。

介護保険があるからここまでしかやってはいけないという減点主義的な発想ではなく、サービスは提供しますけれども、その代わり介護保険外の利用料を請求させていただきます、という形にした方が、サービスを受ける利用者様から見ても使いやすいと思います。

デイサービスでも同じです。今リハビリなどに特化した特化型のデイサービスが少しずつ増えていますが、こういった特化型のデイサービスの付随的なオプションサービスは有料サービスとして考えても良いのではないでしょうか。

例えば自宅でもリハビリができるトレーニング機器をレンタルしたり、年1回の体力計測も兼ねたゲームイベントへの参加費等、トレーニングの後の栄養管理がされたプレミアム夕食等も良いかもしれません。

ある程度自由に介護事業者がサービスを設計し収入の確保ができるように、法規制を見直していただきたいなと思っています。

【4.まとめ】

介護事業におけるマネジメントの厚生労働省の描く理想と、一般企業のマネジメントとの比較、現場におけるマネジメントの一例としてデイサービスにおけるマネジメントと、制度的な人員配置基準まで掘り下げてみてきました。

介護のICT化等が叫ばれていますが、残念ながら、未だに導入が「促進」の状態から変わっていないのは、多くの事業所で肝心の管理者の方がマネジメント業務に十分な時間が取れないことで専念できておらず、ICT化を検討する時間さえもないという実態があるからではないかと思います。

介護保険は、完璧とは言えませんが、なくてはならない制度です。定期的に制度の見直しが入るというのも救いです。

介護という業界から一歩離れて、人生最後の時間を預かるサービスとして、「利用者目線」で介護業界を見てみるとより多様なサービスが生まれてくる可能性があると思います。

インフラとして最低限の質の保証は必要ですが、それ以上に業界としてより利用者から見て魅力のあるサービスが生まれるように、緩和の成功事例が他業界で存在するような法的規制についてはどんどん緩和して欲しいと思います。

合同会社も株式会社も運営を認められる介護業界、経営部分でのマネジメントにも選択肢がもっとあって良いはずです。

※参考資料:job tag(厚生労働省職業情報提供サイト|日本版O-NET)
施設管理者(介護施設)の解説ページ

著者プロフィール

上尾 佳子

合同会社ユー・ラボ 代表
WACA上級ウェブ解析士
愛知県出身

バブル期に大手通信企業に入社し、通信システムの法人営業を経験。
1990年代、インターネット検索ビジネスを手がける新規事業部に移り、ポータルサイト運営に関わる。以後20年間一貫して、データを活用したマーケティング支援に携わる
2011年IoTスタートアップに合流、介護福祉用具カタログをデジタル化するアプリをきっかけに介護業界について知見を深め、2014年独立。
家族の遠隔介護をきっかけに、中小企業へのデータ活用したデジタルマーケティング支援を行うかたわら、介護サービス利用者家族という視点で情報発信を行っている。現在介護関係のサービスを運営中。

介護のDX化、ICT化について考えるサイト「介護運営TalkRoom」

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