梅雨の時期を迎え、もはや夏なのではないかと感じるような暑い日も多くなって来ています。

季節が移り変わることに合わせて、介護事業所で実施するレクリエーションも春夏秋冬、利用者様に毎月季節を感じて楽しんでいただくために行事を押さえて考えなくてはいけない・・・

暑い夏の時期、強い日射、いつもに増して注意が必要な水分補給、暑さの肌感もにぶく冷房環境は果たして本当に寒いのか否か、熱中症のリスクヘッジを考えつつ、利用者様のためにどんなレクをやったらいいのか、お悩みのレク担当の方は多いと思います。

また、対象に関しては、男性も女性と一緒になって楽しんでいただけるようなレクを考えるのは、案外時間がかかります。

そこで、なるべくご利用者様の脳トレや認知症の予防に役立つもので、施設やデイサービスの運営の役に立つようなレクについて、調査してみました。

実際に楽しんでいることがわかる動画かつ、参加されている利用者様の笑顔が多いものを中心にまとめました。

今回、よくある塗り絵や書道、工作など制作系のレクは素材ダウンロードサイトも沢山ありますし、基本みんなでというより、個々でやるものなので省きました。

ただし、ここで一口に「夏」と言っても縦に長い日本列島、北海道と九州では季節はだいぶ違います。お盆や夏祭りと言っても西日本と東日本では時期が違います。

ここでは月毎のレクをあげていますが、関東中心のカレンダーになっていることをご了承ください。

あくまで夏という季節を感じられるレクリエーションとして、参考にしていただければと思います。

【6月のレクリエーション】

6月はじめじめと湿っぽくなり雨が降りがちです。足元が悪い中、外に出るわけにもいかず、室内でのレクが中心になります。最近は急に気温が上がったりするので、室内のレクとは言っても熱中症には十分に気をつけましょう。

「輪っかリレー」

室内で男性の高齢者も女性の高齢者も同じように楽しめるレクリエーションとして、輪っかを使ったレクリエーションが好評です。

輪っかの材料は新聞紙を使って大きなものを作ってもいいですし、ゴム紐など大きなものを買ってきても良いです。これを隣の人に渡していくというシンプルな単純なゲームです。

輪っかを渡していくのも割り箸を使ったり、自分の腕で渡していったり、色々なパターンがあります。でもやっぱり笑顔が大きいのは自分の腕で渡していくという方ですね。

海外では再会するたびにハグしたり、肩を叩いたりするのは日常的に行う動作です。国家の首脳同士も合うと頬を近づけたりして挨拶してますよね。

でも、日本では高齢者でなくとも大人になると、他の人の体に触れるということ自体が少なくなります。恥の文化とはよくいったものですが、日本人の多くは触れ合いを「恥ずかしい」と感じます。

ただ、人とふれあい温もりを感じるということはもともと心地の良いものだと思います。ちいさな子供のほっぺは見るとついつい触りたくなってしまいます。

今の若い方はフォークダンスではなくてヒップホップになってしまってちょっと通じないかもしれないのですが、シニアの皆様は若かりし頃、学生の時に男女交互で輪になってフォークダンスを踊ったりしたことはないでしょうか。

好き嫌いは別として、ただ手をつなぐというだけでドキドキしたことを思い出す人は多いのではないでしょうか。

輪っかリレーを腕で渡すと盛り上がるのは、自分の伴侶・連れ合い以外の異性の隣に座って近しく会話するという機会ができることで、非日常を感じるからだと思います。

自分の伴侶がなくなってしまい、一人暮らしになればなおさらです。

ですので、高齢者の方が自分の伴侶・連れ合い・親戚以外の方と「ちょっぴりドキドキ」できるようなイベントを準備してするというのは、粋な計らいなのではないでしょうか。

輪っかのイメージ

「たこ焼き」

室内でできるおやつレクの鉄板はたこ焼きです。

春夏秋冬いつでもできます。あえてここで夏のレクに持ってきたのは夏祭りをイメージできる食べ物だからです。

食材を切ったり、準備したりという作業自体が手指の運動と頭の体操になります。

また料理は基本、共同作業です。お互いにコミュニケーションを取ってたこ焼きを焼いていくことになります。

たこ焼きを丸く焼くというのは簡単そうに見えて、案外技術が必要で難しいものです。

これも楽しいプラス、手指の運動になります。

そして最後は食べる楽しみが待っています。

たこ焼きが良いのは、桜餅やホットケーキ類などのスイーツに比べて男性も参加しやすく作るのを一緒に楽しめるからです。甘いものが苦手な男性はいても、しょっぱいものが苦手な男性は正直拝見したことがありません。

味付けもマヨネーズ派、醤油派など思い思いに味付けができます。

ビールは飲めなくても、ノンアルコールビールでたこ焼きというのも案外いけます。

ホットプレートがあれば安全にできるので、雨で外に出れない日のおやつレクにもうってつけです。

たこ焼きのイメージ

【7月のレクリエーション】

二十四節季では、7月7日頃は小暑、7月の下旬は大暑。
ですが、最近は猛暑で7月に入ったら外に出たくなくなるようなまさに地獄のような暑さが続きます。

体はようやくエアコン冷房に慣れてきたというところだと思います。エアコンが効いていて寒いという高齢者の方も多いので、温度管理には十分注意しましょう。
エアコンが効いている室内でも、脱水症状には気をつけてレクを行いましょう。

「七夕」

7月のイベントといえば七夕です。地域の商店街や自治体で、七夕のお祭りで盛り上がる街もあると思います。帽子をかぶって日陰を選んで地域のお祭りに参加しましょう。

地域のイベントがなくても、七夕は日本人であれば全世代が季節を感じられる素晴らしいチャンスです。

七夕のイメージ

七夕の飾り付けで事業所を飾りましょう。施設であれば、入居されているご利用者様は、口には出さないかもしれませんが、きっと昔のことを思い出しておられるはずです。また、思い出を口に出されるようなことがあれば、それはとても良い傾向です。

デイサービスなどで、七夕にちなんだレク企画というのもおすすめです。

七夕にちなんだ歌をみんなで歌うというのも良いですし、七夕のコンサートをやっておられるところも多いです

七夕に近所の幼稚園や、小学校の子供達と交流会をやっている施設やデイサービスも多いです。

ただ交流会をするだけでなく、幼稚園の子供達と利用者様方が一緒に七夕の飾り付けを作って、一緒に飾りつけるというところまでやっておられる施設もありました。

元気な子供達と一緒にいると、利用者様もエネルギーを感じて、活力がもらえると思います。

七夕コンサートでも飾りつけでも、アクティビティーの種類は問わず、地域との交流の貴重な機会になります。

地域の農家さんから七夕の笹を寄付してもらうというデイサービスもありました。そういった形で、自然に地域とのふれあいができるレクになると素晴らしいと思います。

七夕は給食も特別なメニューを用意しているところが多いと思いますが、レクがあって給食で七夕ゼリーのようなイベント定番メニューが出ると高齢者でなくても嬉しくなってしまいますね。

「うちわレク」

うちわでパタパタと風を起こすだけの簡単なゲームです。

が、これをチーム対抗でやったりすると結構皆さんで盛り上がっています。

うちわのイメージ

うちわでパタパタあおぐものは何でもよいのです。

牛乳パックにかぶせたスーパーのビニール袋を吹き飛ばすというのもあれば、4人で卓を囲んで紙風船をタワーから脱出させるというゲームもあります。
卓球台でピンポン玉をうちわであおぐというような真面目にやったらかなり疲れそうなゲームもありました。

誰でもできそうなゲームですが、やってみると腕が疲れたり、難しかったりします。

最初は乗り気でなかった男性が、真剣になってうちわをあおいでいる表情は見ていてこちらまで、気分が盛り上がりハラハラして楽しくなりました。

ゲームの準備も、全て100均で揃うものばかりですのでコストもかかりません。腕の力を使いますのでご利用者様のリハビリや運動になります。
ただ、症状の重い方の参加についてはやり方やルールを特別にする必要があります。

【8月のレクリエーション】

一年中で最も暑い季節。そして、夏祭りや盆踊りなどお祭りの多い季節でもあります。エアコンの効いた部屋ばかりにいるので長袖の方が良いという高齢の方も多いと思います。
室内の温度調節や体調管理、脱水症状には最も気遣いが必要です。
最近は夏に窓を開けても涼しくありませんので、外気を入れるタイミングが非常に限られた難しい時期です。

「すいか割り」

夏しかできないイベントといえばスイカ割りです。

みんなで声を掛け合ってスイカを割るのは、夏の鉄板レクと言えるでしょう。
スイカは利用者様の力で振りかぶってもなかなか割れないことが多い難敵です。
事業所によっては安全性などを考えて、紙やスチロールで簡単に割れる「安全なスイカ」を準備するところもあるようです。

しかし、そんな工作をするよりも、やはり本物のスイカを目隠して割ってもらい、割れたばかりのスイカを切って食べるというのがやはり盛り上がります。

目隠しをしてご高齢の利用者様に歩いてもらうというのは確かに危険だという面はあります。ですので、盛り上がりの陰には、ご利用者様を常に後ろで支えている職員の方がいます。

目隠しをしたスイカ割りプレイヤーを見守る形で、周りでイベント参加している高齢者の方が応援で声をかけます。「もう少し右」とか「もう少し左」とか。

この声掛けで盛り上がったり、笑い声が上がったりします。

スイカを割ってくれないと、今日のおやつがないというのも張り合いになっていたりします。

割ったばかりのスイカを切ってゼリーと一緒に食べたりするのも一つの楽しみです。

スイカという果物は大きくて重く、傷みやすい果物であるため、持ってかえるのも食べきるのも大変で、高齢者の一人暮らしだとなかなか食べる機会がない食べ物です。

スイカのイメージ

昨今、本物の大きなスイカを見ることも稀で、この季節ならではですね。

そういう意味でも参加しているご利用者様全員が楽しめるイベントレクだと思います。

「魚釣りゲーム」

こちらも夏と季節に引っ掛けて魚釣りゲームです。

少しだけ準備は必要ですが、材料費がそれほどかかりません

お魚は100均でそのようなお魚の絵が書いたもの調達できればそれでもいいですし、調達できなければトランプでも構いません。

そのトランプや魚の絵をハードクリップで挟んだら“お魚”の出来上がりです。

これをブルーシートの上にばらまいて、磁石がついた釣り竿でハードクリップがついたお魚を釣り上げるだけ。ゲームのやり方はいたってシンプルです。

例えば、一人の制限時間30秒の間に何匹の魚が釣れるかをチーム対抗で競います。

簡単で誰でもできそうに思いますが、これは良い手先の訓練になり、同時に集中力の向上にも役立ちます

【9月のレクリエーション】

介護事業所や施設にとって、9月の最重要イベントと言えば敬老の日です。また、9月はみんな楽しみにしているお月見の月でもあります。ようやく夜の暑さは和らいでくるとはいえ、まだまだ日中は暑い日が続きます。
まだまだ脱水症状対策は気を抜かず行いましょう。

「月見団子づくり」

9月といえば、中秋の名月でやはりお団子が食べたくなりますね。

おやつレクとして月見団子をご利用者様みんなで作って食べるというイベントも盛り上がっています。

素材は白玉粉と水、喉に引っかかるのを防ぐのにお豆腐を入れて工夫されている事業所もありました。

白玉粉を練って、均等に分けて丸める。これも参加するご利用者様の全員の共同作業です。
それを茹でて、みたらしのタレを作ってかけるというおやつ作りのプロセスはとても簡単です。

どんなものでも、やっぱり茹でたてや作りたては美味しいですよね。

だんごのイメージ

お団子の作り方は知っていても、子供が大きくなり独立してしまったりすると、お団子を作る機会もなんとなく遠のいてしまいます。

「自分でお団子を作るのは何十年ぶりや」という参加者様の声も聞かれました。

それぞれに昔の楽しい記憶を思い出しながら手を動かすことができるおやつイベントです。

「敬老の日」

敬老の日は、長年にわたって社会に尽くしてきた方を敬愛し、長寿をお祝いする日です。
敬老会は介護事業所や施設にとっては言わずと知れた、もしかしたら正月並に大規模となるイベントで、年内でも盛大に開かれている傾向があることがほとんどです。

地域に開かれたイベントとして、近所の幼稚園の子供達がダンスや歌を披露してお祝いをする事業所もあります。単に舞台でダンスを披露するだけではなくて、入居者様と握手会なんていう粋な計らいをしているところもあります。

もちろん、普段仲良く接している職員さんが出し物をして楽しませていたりもしますね。

また、どなたでも参加できるという意味で、ビンゴゲームなどのゲームをやって盛り上がるという事業所もあるようです。

しかし、敬老の日のイベントの王道は、やはり表彰式でしょう。

表彰式と言っても、紅白横断垂れ幕を張って堅い挨拶をする事業所もあれば、カジュアルにプレゼントと賞状を渡して終わり、という事業所もあります。

しかし、印象的だったのは堅い挨拶をされている事業所で、所長がスピーチをし、ご利用者様一人一人の名前を書いた表彰状を渡し、そこで感謝の言葉を述べるという儀式です。

儀式=退屈なものと侮ってはいけません。自分個人の名前を呼んでもらって、人前で表彰してもらう機会が、人生に何度あるでしょうか。

賞状のイメージ

利用者様本人も、いつお迎えが来るか等と冗談で言ってみたり、心の中で思ったりはして達観されておられる方は多くいます。

どのご利用者様の人生にも、人には語らないそれぞれの物語、特に戦争を乗り越えてきた世代にとっては筆舌に尽くしがたい苦難の時代があります。

それぞれの人生に対して事業所の施設長さんが普段ない改まったスーツなどを着て登壇し、自分の名前を呼んでくれる。そして、人前に出て表彰状をいただく。
誰だって自分の名前が呼ばれれば、それは嬉しいものです。

小学校の卒業式または職場の退職以外では、まず見かけない光景です。

施設長さんがスーツで出るわけですから、お元気な利用者様は、シャツとオシャレな蝶ネクタイできめて表彰式に臨んでおられました。その姿勢がとても印象的でした。

この表彰式を何歳の方にやるかというのは事業所によってバラバラなようです。

やはり傘寿、米寿、卒寿などの区切りの年齢の方をお誕生日の順番に登壇してもらうというパターンが一般的なようです。

施設によっては、90代でもお元気な方がたくさんいて、100歳のお祝いをしている事業所もたくさんあります。

【まとめ】

以上、夏という季節にちなんだレクリエーションをまとめてみました。

料理というプロセスにご利用者様全員で参加して、できたものをみんなで食べるというおやつレクは、やはり鉄板です。作るおやつはやはりご高齢の方が昔食べていた、単純なものがやっぱり良さそうです。

また敬老の日の表彰式は、昭和という激動の時代を乗り越えてきた高齢の方が、表彰状を貰う姿が印象的でした。

コンサートやプロの芸能人を呼んで、特別なお祝い料理を作って楽しく食事をするというのもとても楽しくて良いと思います。

ですが、敬老の日は「みんなで楽しむイベント」で終わらせるのはもったいないと感じました。

表彰式という形で、ご利用者様にとって、一人一人の人生に意味のあるイベントにしてあげてください。これはご利用者様を近くで見ている高齢者施設やデイサービスだからこそできるイベントです。

上にも記載いたしましたが、戦争を経験した世代にとっては戦争がなく平和な今の世だからこそできるイベントに感慨深い思いを抱かれることでしょう。

以上となります。夏レクのネタに悩む職員の方の参考になれば幸いです。

著者プロフィール

上尾 佳子

合同会社ユー・ラボ 代表
WACA上級ウェブ解析士
愛知県出身

バブル期に大手通信企業に入社し、通信システムの法人営業を経験。
1990年代、インターネット検索ビジネスを手がける新規事業部に移り、ポータルサイト運営に関わる。以後20年間一貫して、データを活用したマーケティング支援に携わる
2011年IoTスタートアップに合流、介護福祉用具カタログをデジタル化するアプリをきっかけに介護業界について知見を深め、2014年独立。
家族の遠隔介護をきっかけに、中小企業へのデータ活用したデジタルマーケティング支援を行うかたわら、介護サービス利用者家族という視点で情報発信を行っている。現在介護関係のサービスを運営中。

介護のDX化、ICT化について考えるサイト「介護運営TalkRoom」

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