先日SNSで、「勤めている介護事業所内に介護ソフトがない!」という嘆きのつぶやきを見ました。

今時、介護ソフトが入っていない介護事業所があるということは正直、驚きでした。

その方は訪問介護にお勤めのようでしたが、やはり経営者側に理解がなく、介護ソフトを導入しないで未だにエクセルで帳票類を作成されているということでした。

私としては結構な衝撃でした。もう当たり前だと思っていた介護ソフト。当たり前すぎてあるのが当然だと思っていました。普及しているということは、多くの方の支持があって便利だと認識されているからです。しかし、普及しているということが理由にならない事業所様があるということです。

ここで改めて在宅介護事業の方がどのような観点で介護ソフトを選んだらよいのか、ということを分かっていただきたくこの記事を書いています。

なぜなら、今の介護ソフトは種類が多く、選ぶこと自体が非常に難しいのではないかと常々思っていたからです。

介護と言っても、入居施設系と在宅系とでは全く異なり、要求される仕様も違ってきます。

全ての介護事業者の要求を満たすパーフェクトな介護ソフトというのは、現実には存在しないと思います。

自分たちの事業にあった介護ソフトを選ぶ参考にしていただければ幸いです。

【介護ソフトの導入状況】

「介護ソフト導入率」

冒頭で、介護ソフトを導入されていない訪問介護の方のお話をしましたが、では実際に介護ソフトはどのくらい導入されているのでしょうか?

令和2年に厚生労働省が各介護サービス提供事業所について母数2,500事業所(全体で母数2,500に満たない場合は全数調査)に実施した調査によれば、全てのサービス種類で5割超の施設・事業所が介護ソフトを導入しており、「介護老人福祉施設」、「短期入所生活介護」、「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」、「夜間対応型訪問介護」、「地域密着型介護老人福祉施設」、「地域包括支援センター」では9割超の施設・事業所が導入していました。一方、「介護療養型医療施設」、「認知症対応型共同生活介護」「訪問リハビリテーション」では4割強の施設・事業所で介護ソフトは導入されています。

※出典:厚生労働省「介護現場におけるICT環境の整備状況等に関する実態調査」

介護業界のICT化が叫ばれて久しく、導入率が9割を超えているサービスが多いという実態があり、厚生労働省の動向を見ても、ICT化という流れは今後ますます加速していると思われます。この調査は令和2年でしたので、ここにコロナ禍という特殊事情が加わった後ですと、より導入は増えているのではないでしょうか?

どのソフトを選ぶにせよ、もしもまだ事業所に介護ソフトを導入していないのなら、事務効率を上げて事業所でよりよいケアを提供するのであれば、まずは他の事業所と同じ様に介護ソフトを導入してみる、そこからスタートしなくてはなりません。

「介護ソフトのメーカー数・シェア」

では、日本国内で介護ソフトはどのくらいあるのでしょうか?

後述しますが、2010年代以降クラウド型のサービスが増えていくに従って、介護ソフトの数も爆発的に増えました。

2023年現在、介護支援ソフトウェア開発の会社・企業は全国に約170社もあります。

このうち、介護保険が始まる2000年よりも前から介護ソフトをリリースし今日まで提供し続けている老舗は以下の2つです。

NDソフトウェア 1992年 「ほのぼのシリーズ」発表
株式会社内田洋行 1996年 「絆シリーズ」発表

介護ソフトのシェアは、導入実績数を各介護ソフトのホームページから抜粋すると、

※2023年7月現在
ほのぼのNEXT:全体で72,000事業所
ワイズマン:44,000事業所
カイポケ:42,850事業所
となっており、事業所全体数から見るとこの3製品でシェア上位を占めていると言えるのではないかと思います。その他の介護ソフトは複数ありますが、四万を超える数字で記載があるのはこの3つのみです。

現在、これら3つがスタンダードとして、他の介護ソフトについては、これらに比べてなにか異なった特徴があって、この3つのスタンダードが現場の事情に合わなかった場合にそのほかの介護ソフトが使われているのではないかと思います。

しかし、介護支援ソフトウェア開発の会社・企業は全国に約170社あることからわかる通り、「現場の事情」に合わせるためにかなり多くの介護ソフトが誕生しているのだと考えられます。スタンダードだけでは介護事業運営の複雑さは測れない顕れです。その証拠にその他にも1,000事業所以上の契約数を持つ介護ソフトは複数あります。

【介護ソフトをとりまく直近20年の変化】

あらためて、介護ソフトとは大雑把で不思議な言葉ですが、要するに介護業務に使うソフトウェア全般のことです。

以前、本コーナーに寄稿したコラムでは、業務ソフト(介護システム)全般を詳しく解説しましたので是非一度読んでみてください。

・コラム名:介護業界向け、小さい事業所でも! 業務管理システムを使って働き方を考える

介護保険という制度ができたのが2000年。介護ソフトは、この頃既に販売開始されています。

当初の介護ソフトは、国保連合会に対する介護保険料の請求と、介護保険請求に必要な書類を作るための機能が主でした。つまり利用者様の情報や利用者様に提供した介護サービスの種類や提供時間、利用者人数などを正確に入力して請求根拠として帳票を作る必要があるわけですが、これらの帳票書類をコンピュータに実施データを入力することで作成できるというものです。

今では介護ソフトの機能は介護サービス運営に必要な業務支援に関する多岐にわたり、職員のスケジューリングやタスクの管理、シフト管理、ケア記録、職員間の情報共有まで介護事業所で必要となる機能をほぼ全てカバーした多機能なソフトウェアになっています。

「インストール型からクラウド型へ」

インストール型のソフトがいいかクラウド型の介護ソフトが良いかという比較検討がよくされますが、ここで少し介護ソフトとクラウド(SaaS)の歴史を簡単にお話しします。

介護SaaSについて詳しい内容については以前寄稿した記事がありますので気になる方はお読みください。

・コラム名:介護SaaS 主な4分野と今注目される理由と導入メリット

2000年介護保険がスタートした時点で、クラウド型のサービスというのは存在しませんでした。

業務用ソフトウェアは、インストール型のパッケージソフトウェアを購入し、そのソフトウェアをサーバーにインストールし自社のオフィスに設置して管理するというのが通常の使い方で、どの業界でもこれは同じでした。

インターネットを繋ぐときに「ピーガガガ」という音がする…

その記憶がある方、インターネットに最初に触れたのは1990年代ですね?

今は無音でサックリ繋がるインターネットですが、昔はダイヤルアップという電話回線を用いた方式で通信していました。このダイヤルアップ、今とは比べようもないほど、データ通信においては通信許容量の少ない通信方法でした。簡素な文章を送るのが精一杯で画像や動画等は以ての外。画像や動画であれば、CD-ROMに焼いて円盤を手渡す…これが常識でした。本当に今では考えられません。

CD-ROMにデータを焼かなくても画像や動画を送信できるようになったのは、ブロードバンドが普及してからでした。光回線やケーブルなど多種多様なブロードバンドが出現して、一気に様々なデータが送れるようになりました。その頃、携帯電話も大きく進化して、覚えていらっしゃる方もおられるかもしれませんが、3G回線が中心になりました。写真が送れるようになって飛躍的に便利になったのですが、なんとなく進化をイメージできましたでしょうか?今では携帯電話はスマホになって5Gが主流ですね。

通信量が大きくできるようになることで、クラウドサービスはどんどん普及しました。それはブロードバンドもまた同時に進化したからです。クラウドサービスは大容量の通信が可能になることによって普及してきたサービスで、歴史的に見れば2010年以降に現れた比較的新しいサービスと言えます。

「クラウド型のメリット」

ではクラウド型とインストール型のソフトウェアのどちらを選べばいいのでしょうか まずはメリットの方をご説明します。

メリット1:購入後のメンテナンス

ここでもう一度クラウド型とインストール型(オンプレミス型)の違いを少しテクニカルなところも踏まえて図を書いてご説明します。

クラウド型とインストール型(オンプレミス型)の違いに関する図

インストール型のソフトウェアを買った場合、そのソフトウェアを動かすためのハードウェアを同時に購入しなければなりません。当然ハードウェアを購入するにはソフトウェアと同等か、それ以上のお金がかかる時もあります。ソフトハード合わせて百万円単位で費用が動きます。一括で購入できるので会計上は固定資産扱いになりますが、導入時の負担が非常に重いのは間違いありません。

ソフトウェアのライセンスが5年という年限がついている場合がありますが、これはハードウェアの固定資産の償却期間が5年間であり、ソフトウェアとハードウェアが一体となった資産とみなされるためにソフトウェアのライセンスも5年という形になっている名残です。

別の言葉で言えば5年経ったら固定資産の償却が終わったのだから、ハードウェアと一緒に買い替えてくださいよ、というわけです。

そしてライセンス購入した後、このソフトウェアを常にアップデートし続けなければならないのです。

システム利用者側の方は、このソフトウェアのアップデートやセキュリティーソフトの更新やデータのバックアップがどれほど頻繁で面倒くさいものかというものはイメージしづらいかもしれません。(図のグリーンの部分)しかし、比較的イメージしやすいものとしてスマホのアップデートがあります。かなり頻繁ではないでしょうか?システムの脆弱性などは世界中でパソコンがインターネットに接続できる限り24時間365日にわたって発見され続けています。そしてその脆弱性をついた危険な仕組みがどこから入り込むかなど想像がつかない程、様々なところでネットワークが繋がってしまいました。いつどこの国でどんな風な新しいウイルスが誕生しているか、正確にすべてを追える人など最早この世にはいないでしょう。

このアップデートだけでも大変な作業を、2000年代まではシステム担当者が全て個々のソフトとハード(パソコン)の両面に対し行っていました。インストール型の介護ソフトライセンスを購入した場合、このようなソフトウェアやセキュリティーのアップデート等を全て自社で行うか、メーカーにメンテナンス費用を払って依頼しなくてはなりません。

しかしクラウド型のサービスを使うことによって、この面倒な作業は全てなくすことができたのです。

上の図のクラウド型の部分をご覧いただくと、青い矢印でアウトソース可能という記載をご覧いただけると思います。クラウド型はインターネット上で全てが解決しますので、利用者側から見た場合は、「次に出勤したら、何かが新しく更新されている」という状態でしかその大変さを感じ取ることができないのです。もちろん多くのクラウド型サービスはシステムメンテナンス費用を必要とせず、自動で一括更新するものが多いということも付け加えておきましょう。

さて、話は介護業界に戻ります。介護業界は他の業界と異なり3年に一度法改正があります。その都度、報酬改定や制度変更があり、ソフトウェアの仕様や算定方法を変えなくてはなりません。定期的なソフトウェア更新は必須の業界です。

つまりインストール型の場合、導入費が高額で、導入した後もメンテナンスの費用負担があり、状況によっては迅速に作業できず、対応に時間がかかる場合もある。ソフトウェアの更新も有料という製品もあります。

しかし、クラウド型の介護ソフトの場合、導入の価格はきわめて低いか、無料になっているサービスもあります。利用料は必要ですが、費用は抑えられたものが多く、個々のシステムのメンテナンスをしなくてもよいのです。

メリット2:どこからでも利用可能

ブラウザとインターネットさえあれば、オフィスを離れてもどこからでも介護ソフトにアクセスできます。またパソコン以外でもスマホやタブレットからデータにアクセス可能なもデバイス(端末)が複数あるのも特徴です。

これに対し、インストール型の介護ソフトの場合、ソフトウェアがインストールされた端末だけに利用が制限されます、介護ソフトを使いたければ、わざわざ事務所に戻り、決められたパソコンを使用する必要があります。

以上を分かりやすくまとめたものがこちらの表です。

 クラウド型インストール型
インストールインターネット経由でウェブブラウザからアクセスローカルコンピュータにインストール
サーバー管理サーバー管理
ベンダーがサーバーを管理し、保守・セキュリティーを行う
自社でサーバーの管理とメンテナンスを行う
初期費用低い(導入時のサーバー購入やセットアップが不要)高い(サーバーの購入と設定が必要)
更新・アップグレードベンダーが自動的にソフトウェアの更新・アップグレードを提供バージョンアップ時に手動で新しいパッケージを購入・インストール
アクセス場所インターネットに接続できる場所からどこでもアクセス可能インストールされたコンピュータに限定される
データバックアップ介護ソフトの会社が定期的なバックアップ自社でバックアップの計画と実施が必要
セキュリティー介護ソフトの会社がセキュリティー対策を行い、データセンターで保護介護ソフトの会社がセキュリティー対策を行い、データセンターで保護
事務所内に設置するため、自社でセキュリティー対策を行う必要がある
利用料金年額や月額利用料が必要一度のライセンス購入で使用権を取得、追加料金はなし

このように、クラウド型サービスの最大のメリットは、払った費用に対して利便性が高い、つまりコスパが高いと言えると思います。

「クラウド型のデメリット」

では、クラウド型にデメリットはないのでしょうか?

セキュリティー面では、インストール型のソフトウェアの方が優れているという指摘も多くあります。

「インストール型は、そもそも介護ソフトにアクセスできる端末も人数も限定されているため、情報漏洩は起きにくい。これに対し、クラウド型はIDとパスワードのみで誰でも介護ソフトにログインできるのでパスワード漏洩すると、利用者の情報に簡単にアクセスされる。」

これは、インストール型のセキュリティーを一昔前風に説明したものです。実は、本当のところ、インストール型のソフトウェアで情報漏洩がゼロかというとそうでもありません。

インストール型は、自社でソフトウェアを全て管理し、セキュリティー対策もしなくてはならないため、最新のセキュリティー対策が疎かになるケースも多いのです。

現実にインストール型の医療システムのセキュリティーの脆弱性を狙って、海外からのセキュリティーアタックはかなり頻繁に起きています。患者の個人情報を人質に取られ膨大な費用を支払ったというケースは後を絶ちません。近年、そのようなニュースをご覧になった方は覚えていらっしゃるのではないかと思います。

インストール型のソフトウェアであっても、管理者IDが一度漏洩すれば同じリスクは発生しています。

クラウド型であれ、インストール型であれ、システムなので、脆弱性はどちらにもあります。しかし、クラウド型の方は、最新のセキュリティー対策を行い、データセンターで保護される分だけ、安全性はむしろ高いとも言えます。

むしろパスワード管理等の【運用管理の仕組み】をルール化し徹底することの方が大事です。

【介護ソフトの選び方・探し方】

介護ソフトの選び方や探し方をご紹介します。

「展示会等イベントへの参加」

業界で必要な製品を集めた展示会は日本の各地の主に大都市で大小開催されています。その一角に介護ソフトのメーカーの出展がほぼ必ずあります。現地では、複数の介護ソフトや介護システムのプレゼンテーションを見たり、体験をして比較することができ、資料も集められるので一気に情報を集めて早いうちに候補を絞ることができます。

「大会への参加」

ケアマネジャー、介護老人福祉施設や介護老人保健施設、グループホームなど、職能や提供介護サービス毎に協会や団体が各地に存在しており、大会が定期的に開かれています。その場にも協賛企業として介護ソフトや介護システムのメーカーが出展していることがあります。展示会ほど数は多くありませんが、ついでに情報収集することができます。

「広告」

新聞に掲載されていたり、雑誌に掲載されていたり、会報に掲載されていたりします。

インターネットで「介護ソフト」と検索すると、大体の介護ソフトは出てきます。ただし、上の方に出ているものだけではなく複数みて比較するのが良いでしょう。

「周りに聞く」

既に導入している周囲の事業所様に聞いてみましょう。特に似た様な方針や信念をもって運営している事業所様にお伺いすることで合うものを探しやすいです。前にダメだったと思っている介護ソフトが数年で進化してとても便利という評価に変わっている場合があるので、昔のネガティブ評価はあまり当てにはなりません。その点だけご注意ください。

「介護ソフトの専門ポータル」

介護ソフトと一口に言っても、100種類以上のソフトがあるので、介護ソフトの比較検討をサポートする比較サイトもあります。

複数ありますので、例えば、「介護ソフト 比較」などと入力して検索すると見つかりやすいです。ただ、比較サイトの運営母体は少し確認した方が良いかもしれません。独立して運営しているサイト、どこかに依頼されて作っているサイトがあります。後者の場合は、情報が深くなく、偏った製品の取り扱いで他でよく見る表現をコピーして作られているため、複数のサイトをよく見比べれば見分けがつきます。

【在宅介護系の事業者向け:これからの介護ソフト選びで重視すべきポイント】

冒頭の驚きからここまで来ましたが、是非あのつぶやきをされた事業所の経営者の方にもご覧いただきたいという思いでこちらをつづらせていただいております。訪問介護のような在宅介護系の事業者の方はどんな点に注意をしてソフトを選んだらよいのでしょうか?

では具体的には以下のポイントのチェックをおすすめします。

「体験サービスの有無」

ズバリ、使いやすいものを選びましょう。

介護ソフトが多機能化してきた結果、余分な機能ばかりで、全ての機能を使い切れてないというケースが多いのです。

実際に体験してみないと本当に自社の事業に必要な機能が揃っているかということは確認ができません。また、おすすめとされている機能が実際に自社に役立つかも分かりません。

そういった意味で購入前の体験サービスがあるかどうかというのは、大きなポイントになります。例えば、介護ソフトを導入する際に何を効率化させることで何が改善するのかは想像しながら選ばれると思います。業務上最大のボトルネックさえ取り除けばかなり改善するのか、もう少し他の機能をいれて改善した方がいいのかに関しても個別の事業所の事情によるでしょう。実際使ってみて改善が大きく進むのか、それともそこを改善したからどうこうなる問題ではないのか、事前に確認できると導入の効果がイメージできます。

またその介護ソフトの導入事例なども参考にするとより、具体的に求める効果と合ったものかの判断に役立ちます。

「リモートからのアクセス」

今後の働き方改革や残業を規制しようという動きはますます加速します。リモートという働き方は働く人にとっても魅力的であり、採用や人材定着につながります。同時にオフィスを離れて働いていたとしても、勤務管理はシステムで記録されていなくてはなりません。

そういった意味で事務所に滞在せずに仕事をすることの多い在宅介護サービスの場合は、介護ソフトにどこからでもアクセスできること、さらに、現場担当のサービス実施関連の情報に関して電子化を考えるのであれば、持ち運びのできるタブレットやスマホに対応しているかということは、働く職員の方には大きな意味を持ちます。ただ、現場担当で直接ソフトに入力をして欲しくない事情を抱えているのであれば、その機能は不要になるでしょう。

「クラウドであること」

あえてクラウドを選ぶことをおすすめする理由は、介護業界は3年に一度法改正がありソフトウェアの更新が3年に一度は起きるからです。ソフトウェアを変更しなければならない時に、すぐに反映されるのとベンダーのシステム担当が来て対応してくれるまで待たなければいけないのと、どちらが便利でしょうか。

もう一つクラウド型サービスの利点としては機能やバージョンアップが追加されるのが早いという傾向があります。これはソフトウェアのメーカー側がメンテナンスにかかる手間が少なくなる分、機能追加に集中できるからです。バージョンアップの都度コスト(費用・時間)がかかるのはあまりお勧めできないなと感じております。

また、厚生労働省の法改正に、素早くキャッチアップしている介護ソフトを選ぶ方が無難であると思います。今更という感じですが、今の段階でLIFEに対して何らかの対応が出来ていない介護ソフトは選択から除外してもよいと思えます。なぜかと申しますと、今後何か大きな改正があったとしてその後もきちんとついていけるか疑問が残るからです。それで請求漏れのリスクが出る様では、効率化が進みません。同様にケアプラン連携等の厚生労働省の推進する制度に対応できていない介護ソフトも未来を見据えた場合は除外することが無難でしょう。

「他のソフトとの連携」

今年4月よりスタートしたケアプランデータシステムを始めとして、今後介護ソフトは色々なソフトウェアや端末と連携していくことが考えられます。介護記録ソフトと介護ソフトとの連携は既に多数実例があります。同様に今後は各種見守り系のシステムのセンサー情報などとも連携が進んでいくでしょう。

今想像しないような機器と連携して、業務の効率化やよりよいケアが可能になる未来もあるのではないでしょうか。実際、一昔前までは体温計で計測した記録が介護記録に自動転記されるなんて誰が思っていたでしょう。他のソフトとの連携の実績があるか、またAPIなどの外部との情報連携方式を定めているかなどは、今後も引き続き介護ソフトが使い勝手がよいのかについて見るべきポイントになります。

クラウド型でかつ他の業務システムとの連携実績のあるものを選ぶと最新の利便性の高い機能を早く利用することができます。

逆に過去に他の業務システムと連携実績がないソフトというのは避けた方が無難です。

「セキュリティー」

平成29年5月に施行された「改正個人情報保護法」で介護事業者も個人情報を取り扱うための目的や利用者の許可を必要とするようになっています。これに則り、クラウドサービスを選ぶ際にも、クラウドサービス側が、個人情報を利用するか否か、利用する際のアクセス条件やポリシー等を定めているか確認する必要があります。

このようなポリシーを開示せず、質問しても曖昧な回答しかない介護ソフトは、選択から除外しましょう。

「過去データの移設」

これまで介護ソフトを使ったことがない事業所の場合は問題になりませんが、今お使いの介護ソフトを切り替えて、別のソフトにする移行する場合は、過去のデータをどうやって引き継げるのかということは大きなポイントです。

全ての過去データや利用者の履歴を引き継げるのか、一部のデータは引き継いでくれるのか、どのような仕組みで引き継ぐのかを確認しましょう。

この時にどこまでのデータをどのように引き継げるか、また保管するのかという説明がない介護ソフトは避けた方が良いです。アドバイスが得られないような介護ソフトはおそらく導入後もあまりサービスが良いとは言えないと考えられます。

過去データは移設をしないとすっぱり諦めてしまう事業所もあると聞きますが、その場合には過去データをどのようにどこに保管をするのか誰がアクセスできるのかなど運用のルールを決めましょう。

「利用者数と料金体系」

クラウドのメリットはコスパだと申し上げましたが、利用する人数が増えると料金が上がっていくという料金体系になっている場合もあります。

利用者の人数が一定の人数を超えたらメリットが出るという大規模向けの介護ソフトもあれば、利用者の人数が30人以下でコストメリットが出やすい介護ソフトもあります。

今後数年間で、介護ソフトの機能を使う職員は何人まで増えるかという規模感を想定し、その規模感にあった料金体系の介護ソフトを選びましょう。短絡的に選ぶ場合は、事業の発展次第では買い替えが必要になります。何度も入れ替えるのが難しいと考えるのであれば、例えば現場職員がどんな場面でどんな風に入力するのかイメージすることで、介護事務以外の場面ではどれくらいの規模でどれくらい入力する人が必要なのかの目安が付けられるでしょう。

【まとめ】

いかがでしたでしょうか。

在宅介護サービスを行い事業者の方が今後介護ソフトを選んだり、入れ替えたりする際にどんなポイントを重視するべきかを、私が推したいクラウド型という観点からまとめてみました。

人手不足、働き方改革など介護業界は色々な変革の時を迎えています。

その際に、機能を柔軟に追加変更できるという意味でも、介護ソフトはまずクラウドで進めるのが賢明な選択だと思います。

後は使い勝手を考え、職員の方が使いやすいソフトを選んでください。

著者プロフィール

上尾 佳子

合同会社ユー・ラボ 代表
WACA上級ウェブ解析士
愛知県出身

バブル期に大手通信企業に入社し、通信システムの法人営業を経験。
1990年代、インターネット検索ビジネスを手がける新規事業部に移り、ポータルサイト運営に関わる。以後20年間一貫して、データを活用したマーケティング支援に携わる
2011年IoTスタートアップに合流、介護福祉用具カタログをデジタル化するアプリをきっかけに介護業界について知見を深め、2014年独立。
家族の遠隔介護をきっかけに、中小企業へのデータ活用したデジタルマーケティング支援を行うかたわら、介護サービス利用者家族という視点で情報発信を行っている。現在介護関係で2つのサービスを運営中。

介護業界向けカタログアプリ「介護のカタログ」
介護のDX化、ICT化について考えるサイト「介護運営TalkRoom」

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