【要約】
- 個別機能訓練加算とはサービス利用者に個別の機能訓練を実施した場合に算定される加算である
- 対象サービスは複数あり単位数や算定要件が異なる
- 2024年の改定内容は2点
(通所介護、地域密着型通所介護の算定要件と単位数の一部変更) ※以下の本文中の赤字部分
個別機能訓練加算とは、対象となっている介護サービスの提供において、利用者(入所者)に個別の機能訓練を実施した場合に算定される加算です。個別機能訓練加算は2021年(令和3年度)報酬改定で、厚生労働省 科学的介護情報システム「LIFE(ライフ)」の正式稼働と共にリニューアルされた加算の一つです。
算定するにはまずは各自治体への届け出が必要です。届け出に必要な書類や推奨される方法は自治体によって違いがありますので、必ず各自治体にお問合せをしましょう。
<すべての自治体で共通で必要とされる書類>
・介護給付費算定に係る体制等に関する届出書(加算届)
・介護給付費算定に係る体制等状況一覧表(居宅サービス・施設サービス)
・従業者の勤務体制及び勤務形態一覧表
・機能訓練指導員の資格証
・機能訓練計画に関連する様式
【対象の介護サービスと単位数】
対象の介護サービスは複数あり、(Ⅰ)と(Ⅱ)で単位が異なります。
提供介護サービス | 加算名称 | 単位数 |
---|---|---|
通所介護 地域密着型通所介護 | 個別機能訓練加算(Ⅰ)イ | 56単位/日 |
個別機能訓練加算(Ⅰ)ロ | 76単位/日 | |
個別機能訓練加算(Ⅱ) | 20単位/月 | |
短期入所生活介護 | 個別機能訓練加算 | 56単位/日 |
介護老人福祉施設 特定施設入居者生活介護 地域密着型介護老人福祉施設 地域密着型特定施設入居者生活介護 | 個別機能訓練加算(Ⅰ) | 12単位/日 |
個別機能訓練加算(Ⅱ) | 20単位/月 | |
認知症対応型通所介護 | 個別機能訓練加算(Ⅰ) | 27単位/日 |
個別機能訓練加算(Ⅱ) | 20単位/月 |
【個別機能訓練加算の算定要件について】
個別機能訓練加算は対象サービスによって単位や算定要件が異なっています(一部同じ要件のサービスがあります)。認知症対応型通所介護以外の共通事項としては「専従の機能訓練指導員1名の配置」があります。
下記で詳細を確認していきましょう。
※個別機能訓練加算において配置が必要な機能訓練指導員の対象資格
理学療法士/作業療法士/言語聴覚士/看護師/柔道整復師/あん摩マッサージ指圧師/鍼灸師(一定の実務経験を有する者)
「通所介護、地域密着通所介護の算定要件について」
※個別機能訓練加算(Ⅰ)のイとロは併算定はできません
■個別機能訓練加算(Ⅰ)イ
・配置時間の定めなしの専従機能訓練指導員1名以上の配置
※常勤・非常勤問わず
※運営基準上配置を求めている機能訓練指導員により満たすことは可能(兼務可)。
・居宅訪問で把握したニーズと居宅での生活状況を参考に、機能訓練指導員、看護職員、介護職員、生活相談員、その他の職種が共同でアセスメントを行い、利用者ごとに個別機能訓練計画を作成していること。
・個別機能訓練計画の作成、実施において利用者の身体機能及び生活機能の向上に資するように、複数の種類の機能訓練の項目を準備し、その項目の選択にあたり利用者の生活意欲が増進されるように援助し、心身の状況に応じた機能訓練を適切に行っていること。
・機能訓練は機能訓練指導員が直接実施していること(補助は介護職員等でも良い)。
・その後、3月に1回以上利用者の居宅を訪問した上で、居宅における生活状況をその都度確認するとともに利用者・家族に個別機能訓練計画の進捗状況等を説明、記録し、必要に応じて個別機能訓練計画の見直し等の評価を行っていること。
・定員超過利用・人員基準欠如に該当していないこと。
■個別機能訓練加算(Ⅰ)ロ
・イの算定要件である配置時間の定めなしの専従機能訓練指導員1名以上の配置に加え、合計で2名以上の機能訓練指導員を配置している時間帯において算定が可能。
・機能訓練指導員、看護職員、介護職員、生活相談員、その他の職種が共同して、利用者ごとに個別機能訓練計画を作成し、計画に基づき、機能訓練指導員が機能訓練を実施していること。
・個別機能訓練計画の作成、実施において利用者の身体機能及び生活機能の向上に資するように、複数の種類の機能訓練の項目を準備し、その項目の選択にあたり利用者の生活意欲が増進されるように援助し、心身の状況に応じた機能訓練を適切に行っていること。
・機能訓練は機能訓練指導員が直接実施していること(補助は介護職員等でも良い)。
・その後、3月に1回以上利用者の居宅を訪問した上で、居宅における生活状況をその都度確認するとともに利用者・家族に個別機能訓練計画の進捗状況等を説明、記録し、必要に応じて個別機能訓練計画の見直し等の評価を行っていること。
・定員超過利用・人員基準欠如に該当していないこと。
「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」 P127より転載
■個別機能訓練加算(Ⅱ)
・「個別機能訓練加算(Ⅰ)イ」もしくは「個別機能訓練加算(Ⅰ)ロ」を算定していること。※上乗せ算定
・利用者ごとの個別機能訓練計画書の内容等の情報を、LIFE へのデータ提出と、提出した情報及びLIFEのフィードバック機能によりフィードバックされた情報の活用によるPDCAサイクルの推進・ケアの向上を図ること
「短期入所生活介護の算定要件について」
■個別機能訓練加算
・通所介護の個別機能訓練加算(Ⅰ)と同じ算定要件です。
【特定施設入居者生活介護、介護老人福祉施設、地域密着型特定施設入居者生活介護、地域密着型介護老人福祉施設の算定要件について】
■個別機能訓練加算(Ⅰ)
・常勤専従の機能訓練指導員を1名以上配置すること。
利用者が100名を超える場合は、機能訓練指導員として常勤換算法で入所者の数を100で除した数値以上を配置すること
・機能訓練指導員、看護職員、介護職員、生活相談員、その他の職種が共同して、利用者ごとに個別機能訓練計画を作成し、計画に基づき機能訓練を実施していること。
開始時及び3月に1回以上利用者に個別機能訓練計画の内容を説明し、記録していること。
■個別機能訓練加算(Ⅱ)※併算可
・個別機能訓練加算(Ⅰ)を算定している利用者について、個別機能訓練計画書の内容等の情報を、LIFE へのデータ提出と、提出した情報及びLIFEのフィードバック機能によりフィードバックされた情報の活用によるPDCAサイクルの推進・ケアの向上を図ること。
「認知症対応型通所介護の算定要件について」
■個別機能訓練加算(Ⅰ)
サービス提供時間に、1日120分以上専従の機能訓練指導員を1名以上配置していること。
機能訓練指導員、看護職員、介護職員、生活相談員、その他の職種が共同して、利用者ごとに個別機能訓練計画を作成し、計画に基づき機能訓練を実施していること。
開始時及び3月に1回以上利用者に個別機能訓練計画の内容を説明し、記録していること。
■個別機能訓練加算(Ⅱ)
・個別機能訓練加算(Ⅰ)を算定していること。※上乗せ算定
・利用者ごとの個別機能訓練計画書の内容等の情報を、LIFE へのデータ提出と、提出した情報及びLIFEのフィードバック機能によりフィードバックされた情報の活用によるPDCAサイクルの推進・ケアの向上を図ること
【個別機能訓練加算に必要な様式】
算定要件にある内容を的確にこなす必要があり、様式がダウンロードできます。
様式が厚生労働省のホームページよりダウンロードできますのでご確認ください。
※参考:厚生労働省
別紙様式3-1(興味・関心チェックシート)
別紙様式3-2(生活機能チェックシート)
別紙様式3-3(個別機能訓練計画書)
別紙様式3-4(通所介護及び地域密着型通所介護用 通所介護計画書)
別紙様式3-5(別紙様式3-3、3-4の書き方)
※ADLとIADLについては過去に記事があります。記事はこちら。
※バーセルインデックスを利用したADL維持等加算についてはこちら。
算定要件に関する様式の記載方法については厚生労働省の令和3年度介護報酬改定における改定事項についてで解説されている内容が反映されています。
それぞれ様式に従い、個別の機能訓練の計画を立てます。
利用者様とそのご家族にご説明の上、同意を経て計画を実施します。
進捗状況の評価は3か月に1回以上実施する必要があります。
状況によっては計画の見直しも必要です。
算定要件に関する様式の記載方法については厚生労働省の「令和3年度介護報酬改定における改定事項について」で解説されている内容が反映されています。
それぞれ様式に従い、個別の機能訓練の計画を立てます。
利用者様とそのご家族にご説明の上、同意を経て計画を実施します。
進捗状況の評価は3か月に1回以上実施する必要があります。
状況によっては計画の見直しも必要です。
【機能訓練とリハビリの違いについて】
機能訓練とリハビリの大きな違いは、リハビリは「医師の指示」に基づいて訓練を行う必要があるという点です。
またそのほか、実施する職員の職種、目的も異なります。
<機能訓練の定義>
機能訓練とは、理学療法士、言語聴覚士、看護士、柔道整復師、あん魔マッサージ指圧師、鍼灸師などの機能訓練指導員が「身体機能の改善や減退防止」を目的に行う訓練を指します。
<リハビリテーションの定義>
リハビリテーションとは、「医師の指示」に基づき、リハビリ専門職(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)が「身体機能の回復・維持」を目的に行う訓練を指します。
【2024年改定、2021年改定との変更点】
今回の改定では、通所介護・地域密着型通所介護における個別機能訓練加算について、機能訓練を行う人材の有効活用を図る観点から、「個別機能訓練加算(Ⅰ)ロ」についての算定要件が緩和されました。配置基準が緩和されたことによって、算定のハードルは下がったと言えます。また、単位数が85単位/日から76単位/日に変わっています。
【最後に】
機能訓練は、加算対象としてLIFEでのデータ収集が推奨されるほど、介護業界だけでなく国でも今後その効果が特に期待されているサービス内容です。維持・回復を促進することによって、衰えを最小限に抑えることにより、個人のQOLを上げ、理想としては要介護度の改善という所があるのだと思われます。機能訓練の難しいところは訓練プログラムを職員側が提供するだけでなく、サービスを受ける利用者様がやる気がなくてはならないというメンタル面に配慮することにあります。衰えが始まった高齢者は一般的に気持ちが沈み、積極的な精神性が徐々に失われていくため、とうとう要介護度の認定を受けるような状況になった時には、「私には出来ない」「私には無理だ」「どうせ変わらない」「昔のように動けるわけがない」などのネガティブな気持ちになっていることが多く、支援する側にとって、改善の意思を持っていただくようにご案内することはとても難しいところです。
肝心の利用者様のメンタル面をどう持ち上げるのか、その点についての議論がもっとあっても良いと思うのはこの文章の筆者だけではないのではないかと考えています。
※介護保険制度の詳細については各自治体の介護保険制度の担当窓口にお問合せください。