2019年(令和元年)10月から運用が開始された、介護職員の特に経験・技能があってリーダーシップを発揮できる人材に対し、賃金の改善を狙った加算です。介護職員処遇改善加算に上乗せして、介護報酬が加算されます。算定対象月は、原則として年度初めの4月から年度終わりの3月までとなります。
介護職員等特定処遇改善加算(Ⅰ)と(Ⅱ)があり、それぞれに算定条件が設定されています。

従来の処遇改善加算に加え、介護職員を3グループに分け、その中でも経験・技能のある介護職員(介護福祉士)に対しては、更なる処遇改善を行う加算です。職場で最低1人以上、キャリアのある介護福祉士の賃金を月8万円以上アップさせる、もしくは年収440万円以上にするという要件があります。もしもそのような職員がいない場合には、その理由を提出する必要があります。内閣府の「新しい経済政策パッケージ」で提示された、「勤続年数10年以上の介護福祉士について月額8万円相当の処遇改善を行う」という方針に基づいていますが、この加算では同じ法人内に連続して勤続した10年を基本としています。しかし、他の法人で長年経験を積んだ介護福祉士の方や、事業所内で能力強化基準を設定し、同等としてよいなど事業所側にも裁量があります。

また、介護職員等特定処遇改善加算を算定するためには事業所が「介護職員等特定処遇改善計画書」を作成し、自治体に届け出る必要があります。加算を取得した事業所は、加算の支給後、自治体に「介護職員等特定処遇改善実績報告書」の提出が必要です。職員の賃金額や改善額についても、提出義務はないものの、求めに応じてすぐに提出できる状態にしておく必要があります。
もし加算に相当する賃金改善が行われていなかったり、事業所が算定要件を満たしていない場合は、不正受給として返還・取り消しになります。

【介護職員等特定処遇改善加算の対象3グループとは】

A、経験・技能のある介護職員
介護福祉士の資格を有し、経験・技能を有する介護職員と事業者が認めた職員です。基本的には勤続10年以上の職員ですが、法人独自の能力基準評価を用いることもできます。
B、その他の介護職員
前段の経験・技能のある介護職員以外の介護職員です。
C、その他の職種
介護職員以外の職員です。

【介護職員等特定処遇改善加算(Ⅰ)の算定要件】

1、介護職員処遇改善加算(Ⅰ)、(Ⅱ)、(Ⅲ)のいずれかを算定していること。
2、職場環境等要件を満たすこと。3、介護福祉士の配置等要件を満たすこと。
4、介護職員等特定処遇改善加算の取り組みについて、介護サービスの情報公表システムや法人ホームページへの掲載を通じて「見える化」を行っていること。
5、介護職員等特定処遇改善計画書を作成し、提出すること。
6、介護職員等特定処遇改善加算の算定額に相当する賃金改善を実施すること。
7、介護職員等特定処遇改善実績報告書を作成し、提出すること。

【介護職員等特定処遇改善加算(Ⅱ)の算定要件】

1、介護職員処遇改善加算(Ⅰ)、(Ⅱ)、(Ⅲ)のいずれかを算定していること。
2、職場環境等要件を満たすこと。
3、介護職員等特定処遇改善加算の取り組みについて、介護サービスの情報公表システムや法人ホームページへの掲載を通じて「見える化」を行っていること。
4、介護職員等特定処遇改善計画書を作成し、提出すること。
5、介護職員等特定処遇改善加算の算定額に相当する賃金改善を実施すること。
6、介護職員等特定処遇改善実績報告書を作成し、提出すること。

【職場環境等要件とは】

厚生労働省にて令和4年に介護職員等ベースアップ等支援加算が施行されるのに合わせて改訂版が公表されています。詳細は下記をご覧ください。
厚生労働省HP  https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000953647.pdf

「入職促進に向けた取組」「資質の向上やキャリアアップに向けた支援」「両立支援・多様な働き方の推進」「腰痛を含む心身の健康管理」「生産性向上のための業務改善の取組」「やりがい・働きがいの醸成」の6区分がある中で、それぞれ1区分につき一つ以上の項目について取り組むことが必要になります。

【介護職員等特定処遇改善加算の配分規定】

>A、経験・技能のある介護職員において
「月額8万円」の改善又は「役職者を除く全産業平均水準(年収440万円)」を設定・確保すること
※リーダー級の介護職員について他産業と遜色ない賃金水準を実現
※小規模な事業所で開設したばかりである等、設定することが困難な場合は合理的な説明を求める。

>平均の処遇改善額が、
・A、経験・技能のある介護職員は、B、その他の介護職員より高いこと
・C、その他の職種(役職者を除く全産業平均水準(年収440万円)以上の者は対象外)は、B、その他の介護職員の2分の1を上回らないこと
※A、経験・技能のある介護職員は、勤続10年以上の介護福祉士を基本とし、介護福祉士の資格を有することを要件としつつ、勤続10年の考え方は、事業所の裁量で設定
※A、B、C内での一人ひとりの処遇改善額は、柔軟に設定可能
※平均賃金額について、CがBと比べて低い場合は、柔軟な取扱いが可能

日本が福祉国家であるためには、介護は必然であり重要です。しかし、日本の労働人口が減っていく中で、特に「人」が必要な介護業界では人員確保がどんどん難しくなっています。介護職員の処遇を上げ、若者が選択しやすい職種にする努力を国を挙げて継続していけるかは、今後も切れ目ないサービス提供を続けるための大きな鍵になるでしょう。

最後までお読みいただきありがとうございました。

※介護保険制度の詳細については各自治体の介護保険制度の担当窓口にお問合せください。

※こちらのコラムは令和6年度介護報酬改定の内容を反映いたしておりません。反映次第、こちらの注意書きを削除いたします。