ターミナルケア加算とは、利用者様の終末期において、医療的な体制を整えて「医療的ケア」を実施したことで算定できる加算です。介護保険の算定要件を満たす必要があります。
尚、医療保険では「訪問看護ターミナルケア療養費」にあたります。
※看取り加算とは別の加算です。

【ターミナルケア加算、2024改正のポイント】

介護保険で提供されるターミナルケアと医療保険で提供されるターミナルケアの内容が同等であることで単位数の変更がありました。
また、介護老人保健施設などの在宅復帰、在宅療養支援を行う施設において看取りへの対応の充実、適切な評価を行うという点を鑑みて単位数と区分の見直しがありました。
※訪問看護においては診療報酬改定に合わせて2024年6月1日よりの施行となります。

【ターミナルケアとは】

ターミナルケアとは、終末期医療という日本語訳の通り、終末期における治療や看護を意味する言葉です。

病気や老衰により、身近に迫った「死」を避けられない状態にある人に対して、無理な延命治療を行わずに最期を迎える患者の意思を尊重し、人生最後まで尊厳のある生活を送ることを支援する「医療的な手助け」を指します。

医療と介護の分野で行われています。

日本におけるターミナルケアの在り方については、「人生の最終段階における医療の普及・啓発の在り方に関する検討会」が開催され、その記録は厚生労働省ホームページで公開されています。
※厚生労働省HP https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-isei_471022.html

【ターミナルケアを取り巻く状況】

「第1回人生の最終段階における医療の普及・啓発の在り方に関する検討会」の資料2によりますと、おおよそ半数の方は自宅で最期を迎えたいというご希望がある中で、実際は約75%が病院でその時を迎えています。本人の希望とは違った形でのターミナルケアが行われている現状があります。持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律では第二章第四条にて、「政府は、前項の医療提供体制及び地域包括ケアシステムの構築に当たっては、個人の尊厳が重んぜられ、患者の意思がより尊重され、人生の最終段階を穏やかに過ごすことができる環境の整備を行うよう努めるものとする。」とされており、このターミナルケア加算はそういった政府の環境整備の一環とみて良いでしょう。

【ターミナルケア加算を算定できる介護サービス】

4つの介護サービスにて可能です。
・介護老人保健施設
・看護小規模多機能型居宅介護
・訪問看護 ※介護予防訪問看護は対象外です。
・定期巡回・随時対応型訪問看護介護

【ターミナルケア加算の単位数】

介護サービス種別期間単位数
介護老人保健施設死亡日1,900単位/日
死亡日前々日から前日910単位/日
死亡日4日前から30日前160単位/日
死亡日31日前から45日前72単位/日
看護小規模多機能型居宅介護死亡日及び死亡日前14日以内に2日以上ターミナルケアを提供した場合2,500単位/月
訪問看護死亡日及び死亡日前14日以内に2日以上ターミナルケアを提供した場合2,500単位/月
定期巡回・随時対応型訪問看護介護死亡日及び死亡日前14日以内に2日以上ターミナルケアを提供した場合2,500単位/月

【介護老人保健施設の加算算定要件となる入所者】

  1. 医師が一般的に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがないと診断した者であること。
  2. 入所者又はその家族等の同意を得て、入所者のターミナルケアに係る「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等の内容に沿った取組計画が作成されていること。また、作成にあたっては本人の意思を尊重した医療・ケアの方針決定に対する支援に努めること。
  3. 医師、看護師、介護職員、支援相談員、管理栄養士等が共同して、入所者の状態又は家族の求め等応じ随時、本人又はその家族への説明を行い、同意を得てターミナルケアが行われていること。

※本人又はその家族に対する随時の説明に係る同意については、口頭で同意を得た場合は、その説明日時、内容等を記録するとともに、同意を得た旨を記載しておくことが必要。

※本人が十分に判断をできる状態になく、かつ、家族の来所が見込めないような場合も、医師、看護職員、介護職員、支援相談員、管理栄養士等が入所者の状態等に応じて随時、入所者に対するターミナルケアについて相談し、共同してターミナルケアを行っていると認められる場合には、ターミナルケア加算の算定は可能。この場合には、適切なターミナルケアが行われていることが 担保されるよう、職員間の相談日時、内容等を記録するとともに、本人の状態や、家族と連絡を取ったにもかかわらず来所がなかった旨を記載しておくことが必要。
なお、家族が入所者の看取りについてともに考えることは極めて重要であり、施設としては、一度連絡を取ったにもかかわらず来所がなかったとしても、定期的に連絡を取り続け、可能な限り家族の意思を確認しながらターミナルケアを進めていくことが重要。

※本人又はその家族が個室でのターミナルケアを希望する場合には、当該施設は、その意向に沿えるよう考慮すべきであること。

※個室に移行した場合の入所者については、以下の規定する措置の対象とする。
平成17年9月30日において従来型個室に入所している者であって、平成17年10月1日以後引き続き従来型個室に入所するもの(別に厚生労働大臣が定める者に限る。)
に対して、介護保健施設サービス費を支給する場合は、当分の間、介護保健施設サービス費(Ⅰ)の介護保健施設サービス費(iii)若しくは(iv)、介護保健施設サービ
ス費(Ⅱ)の介護保健施設サービス費(ii)、介護保健施設サービス費(Ⅲ)の介護保健施設サービス費(ii)又は介護保健施設サービス費(Ⅳ)の介護保健施設サービス費(ii)を算定する。

【留意点】

  • 死亡日を含めて45日を上限として、介護老人保健施設において行ったターミナルケアを評価するものです。
    死亡前に他の医療機関等に移った場合又は自宅等に戻った場合には、当該施設においてターミナルケアを直接行っていない退所した日の翌日から死亡日までの間は、算定することができません。
    (したがって、退所した日の翌日から死亡日までの期間が45 日以上あった場合には、ターミナルケア加算を算定することはできません。)
  • 死亡前に他の医療機関等に移った場合または自宅等に戻った場合、当該施設においてターミナルケアを直接行っていない退所した日の翌日から死亡日までの間は、算定することができません。
  • 施設を退所した月と死亡した月が異なる場合でも算定可能ですが、ターミナルケア加算は死亡月にまとめて算定することから、入所者側にとっては、 当該施設に入所していない月についても自己負担を請求されることになため、入所者が退所する際、退所の翌月に亡くなった場合には、前月分の ターミナルケア加算に係る一部負担の請求を行う場合があることを説明し、文書にて同意を得ておくことが必要。
  • 施設退所の後も、継続して入所者の家族指導等を行うことが必要であり、入所者の家族等との継続的な関わりの中で、入所者の死亡を確認することが可能。
  • 外泊または退所の当日についてターミナルケア加算を算定できるかどうかは、当該日に所定単位数を算定するかどうかによります。
    したがって、入所者が外泊した場合(外泊加算を算定した場合を除く。)には、当該外泊期間が死亡日以前45 日の範囲内であれば、当該外泊期間を除いた期間について、ターミナルケア加算の算定が可能です。

【看護小規模多機能型居宅介護、訪問看護、定期巡回・随時対応型訪問看護介護の加算算定要件】

  • 24時間連絡可能な体制を確保しており、ターミナルケアを受ける利用者のために必要に応じて訪問できる環境を整備していること
  • 体制の届出を行っていること
  • 主治医と連携し、ターミナルケアに係る計画や支援体制について利用者様とそのご家族に説明した上で同意を得て、ターミナルケアを行っていること
  • 死亡日ないしは死亡日前14日以内に2日(末期の悪性腫瘍等、特定の利用者様については1日)以上ターミナルケアを行っていること
  • ターミナルケアの提供について必要な事項が適切に記録されていること
  • 厚生労働省の「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」を踏まえて、利用者の意思決定を基本とした医療やケアを医療・ケアチームが提供すること

【留意点】

  • 利用者の「死亡月」に算定します。(最後にターミナルケアを行った日と死亡月が異なる場合、死亡月での算定となります。)
  • 1人の利用者につき、1事業所等だけがターミナルケア加算を算定できます。
  • 算定は1回のみです。死亡日及び死亡前14日以内に2日以上訪問した場合でも最後の訪問日に算定されます。
  • 訪問看護ステーションで医療保険、介護保険の両方の訪問を1日以上実施した場合、最後に実施した保険制度におけるターミナルケア加算等を算定します。
  • ターミナルケアを実施するにあたり、多専門職種の医療・介護従事者とチームを構成し、十分な連携を図るように努めることが求められます。

【最後に】

ターミナルケア加算を算定する体制を作るにあたり、厚生労働省などから様々なガイドラインが公表されています。利用者様本人の意思決定を基本として、利用者様本人及びそのご家族等と話し合いを行いつつ、各関係者と連携をとりながら、ターミナルケアを実施することが大前提となります。
最期の時をどこでどのように迎えるのか。利用者様本人の意思が尊重される環境が徐々に整いつつあると言えるでしょう。

最後までお読みいただきありがとうございました。

※介護保険制度の詳細については各自治体の介護保険制度の担当窓口にお問合せください。

※こちらのコラムは令和6年度介護報酬改定の内容を反映いたしておりません。反映次第、こちらの注意書きを削除いたします。