介護が必要だと思った時の、一般的なイメージってどんなものでしょうか?

「介護施設に入って面倒を見てもらう」
この言葉は主に介護が必要になっていない人からよく聞かれる言葉ですが、「施設に入る」以前に在宅介護という仕組みがあります。介護制度自体、自分に関係するまではボヤッとした印象であることは間違いありません。
今回は、本当に介護が必要になった時、今までの生活を維持、本人のやる気次第では改善も可能な在宅介護について記載させていただきます。

【在宅介護を受けるには】

共通事項としては、まず各市区町村から「要介護認定」を受ける必要があります。
非該当・要支援1~2・要介護1~5で構成されており、数字が大きいほど介護の必要性が高いと判断されます。要支援・要介護の認定を受けるとその人にあった適切なサービスを受けることができます。
要介護認定は市区町村が行いますので、相談などは役所の窓口で行うことができます。

要支援に認定された場合は、介護予防サービスと必要に応じた介護サービス、要介護に認定された場合は介護サービスを受けることができるようになります。
どのサービスを受ければよいのかは、要介護認定時に個別の困難な状態を判断された上で、本人の状態や気持ち、家族の状況に合っているものを選ぶことになります。そこに登場するのは地域のケアマネージャーさんになります。ケアマネージャーさんは、多くの経験と知識を持っていて介護サービス提供に関して総合的かつ介護サービスを受ける本人や家族に寄り添った判断をしてくれます。

【在宅介護、サービスの種類やそれぞれの特徴】

在宅介護は6つに分類できます。
・訪問型サービス
・通所型サービス
・宿泊型サービス
・訪問・通所・宿泊の融合型サービス
・住環境を整えるサービス
・介護保険適用外のサービス

それぞれ特徴を見ていきましょう。

・訪問型サービス

▷訪問看護
看護師が自宅へ訪問し、担当医の指示に基づいた医療行為、診断補助、健康状態のチェックを行ってくれます。主治医の看護指示書が必要ですが、要支援・要介護ともに受けられる医療サービスです。
▷訪問入浴介護
自宅の浴槽での入浴が困難になった場合、看護師や介護士が訪問して入浴介助をしてくれるサービスです。浴槽や給湯器を持ってきてもらうこともできます。もちろん体を拭くことも補助してもらえます。
▷訪問リハビリテーション
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などがリハビリなどの自立支援を自宅で提供してくれるサービスです。離床から歩行の訓練、発声に至るまで、生活するにあたって困難になった状況の改善ができるよう支援してくれます。こちらも主治医の訪問看護指示書が必要です。
▷居宅療養管理指導
医師・歯科医師・薬剤師・栄養士などが医療的な栄養管理や栄養指導を行ってくれるサービスで、生活習慣病などの持病がある人や入院入所の判断が必要な人が対象となっています。医師が直接自宅に来てくれます。
▷夜間対応型訪問介護
夜間の決まった時間にヘルパーさんが訪問してくれるサービスです。他のサービスと組み合わせると24時間体制に限りなく近い形で見守りが可能となります。訪問介護のように介助を受けることもでき、緊急事態が発生した場合は通報すれば駆けつけてくれます。
▷定期巡回・随時対応型訪問介護看護
看護と介護の両方の視点で24時間定期的に巡回してくれるサービスです。緊急事態が発生した場合は通報すれば駆けつけてくれます。

・通所型サービス

▷通所介護(デイサービス)
日帰りで日常生活に関する介護やレクリエーションが受けられます。日常生活の向上を目指したものなので、引き篭もりがちになる中で「外出をする」、軽く体を動かすことで「運動機能を保つ、もしくは向上させる」、時間の感覚が鈍くなる中で「定時に約束する」、集団の中で「会話する」ことなど、心身の健康を保つ上で必要なことを提供しています。
▷地域密着型通所介護
小規模な通所介護でよりその地域に特化しています。アットホームな雰囲気でそれぞれに個性があります。食事や入浴、機能訓練指導など、事業所によってやれること、やれないこと、得意不得意もあるため、ケアマネージャーさんとよく相談して決めましょう。
▷認知症対応型通所介護(認知症対応型デイサービス)
認知症に特化した対応をしてもらえます。医師より認知症の診断を受けることが利用条件にあります。
▷通所リハビリテーション(デイケア)
医師の指定する施設に通ってリハビリのサービスを受けられるサービスです。医療面で充実しており、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などが運動機能の維持回復訓練や日常生活の動作訓練を提供します。
▷療養通所介護
難病や認知症を抱えていて医療と介護が常に必要な人向けのサービスです。通所介護の施設で通常の日常生活の介護の他に医療的なサービスを受けることができます。

・宿泊型サービス

▷短期入所生活介護(ショートステイ)
各種介護施設に短期入所して介護を受けるサービスで、1日単位から利用できます。あくまで短期的な利用になるため、介護をする人がなんらかの理由で介護できない期間が生じた際や、介護施設の入居待ちなどの際に利用されます。
▷短期入所療養介護(医療型ショートステイ)
介護老人保健施設などの医療施設に短期間入所し、医療的な管理や必要な介護を受けられます。医療的な要素が強い為、平穏な日常生活が難しいケースで利用されます。

・訪問・通所・宿泊の融合型サービス

このサービスを利用した場合、訪問リハビリテーション・居宅療養管理指導・福祉用具以外のサービスは同時に利用できません。
▷小規模多機能型居宅介護
訪問介護、ショートステイ、通所介護が組み合わされたサービスを受けられます。利用者の状況に応じて柔軟に対応します。家庭的な環境と地域住民との交流の下で日常生活上の支援や機能訓練を行います。
▷看護小規模多機能型居宅介護
小規模多機能居宅介護に訪問看護を組み合わせた医療的な支援ができるサービスです。

・住環境を整えるサービス

▷福祉用具のレンタル
介護用のベッド、歩行器具などをレンタルや購入ができるサービスです。日常生活をサポートする機能のある用具は保険を適用しないで購入すると非常に高額になる場合があります。この制度を活用することで比較的安価で用具を入手でき、自立した生活ができるだけ続けられるようになる場合があります。
▷バリアフリー化リフォーム費の支給
手すりをつけたり、スロープを作ったりする費用を一部負担してもらえます。工事前の申請が必要です。

・市町村による総合事業サービス

▷介護予防・日常生活支援総合事業
市区町村単位で事業者を通じて提供しているサービスです。訪問型と通所型の2種類に分類され、要支援の方を中心に高齢者で必要なサービスであれば利用は可能です。

・介護保険適用外のサービス

▷介護保険外サービス
全額自己負担のサービスです。個人商店での配達サービスや24時間警備など、介護とは言えないですが日常生活のサポートをしてくれる場合があります。また、NPO団体などがボランティアとして何らかの支援を行っている場合があります。

【在宅介護、メリットとデメリット】

在宅介護のメリットは、住み慣れた土地・家・家族から離れずにいられることです。古くから基盤のある地域社会の中で生活を続けられる在宅介護は、生活が困難になったとしても生きていく中で必要な「安心」を確保することが可能です。

在宅介護のデメリットは家族の負担です。もしも家族が追い詰められていたら…
在宅介護サービスを組み合わせて利用しても家族の協力は不可欠なのが在宅介護です。家族にも自分の生活があります。介護離職、共倒れといった問題のニュースがクローズアップされることも増えてきました。また、老々介護というキーワードが世間で良く聞かれていますが、自分も衰えていく中で、家族に心を傾けてケアをし続けることは並大抵の精神力では継続することが困難です。ご家族の状況の確認は、在宅介護を選択する上で大きな要素になるでしょう。

【在宅介護の限界】

それは本人の意思の他に、ご家族の限界も関係します。
在宅介護は、認知症の対応や夜間の排泄の対応のような分かりやすいものから、目に見えないような些細なことも含めてどうしても家族に負担がかかります。
ケアマネージャーさんとよく相談して適切な介護とは何か、よく話し合う必要があります。施設に入ることで逆に介護を受ける本人にとって大きなプラス要素になることがあります。
介護を受ける方に寄り添いたい気持ちは誰にでもあります。自分の配偶者や親などの親族であればなおさら、しかし共倒れが一番よくありません。介護をしようとするご家族の人生も大事にする必要があります。精神・肉体の限界が来る前に、相談が必要です。
24時間の見守り体制をもつ施設は、本人だけでなくご家族によって必要な選択肢になり得ます。

【まとめ】

大切な人だからこそ、プロの力も借りる。
在宅介護は介護を受ける本人・ご家族の大きな味方です。
しかし、在宅介護で支えきれなくなった時には、思いつめないで施設での介護もご検討いただくとよいでしょう。ケアマネージャーさんと相談する機会に正直に状況を伝えることが大切です。
良く名前の知れた特別養護老人ホームやグループホームといった施設の他にも、民間で運営する有料老人ホームやサ高住なども存在しているので、要介護度に囚われずに限界が来る前に相談する勇気をもちましょう。

最後までお読みいただきありがとうございました。

※介護保険制度の詳細については各自治体の介護保険制度の担当窓口にお問合せください。