生活上、いままで簡単にやってきたことが急に「あれ?」となる。
誰しも老いていけばできなくなっていく事が多数あります。
人は30を超えてくるとそんなことが数多く出てきます。
子どもの頃、何回も素早く出来たでんぐり返し…今でも簡単にできますでしょうか?
一般的な生活を送れば送るほど、できなくなっていくに違いありません。
高齢になればなるほど、「あれ?」は増えます。
しかも、できると思い込んでいるものなので、出来ない瞬間がふと訪れた時に怪我が伴ってしまうこともあります。転んだとかぶつけたとか軽いものであるならまだしも大怪我に繋がったら大変です。
その「あれ?」に対応し、今までの生活通りに導いてくれるのが機能訓練です。基本的動作の回復、日常生活活動の自立を整え、あるべき状態へと戻す過程です。「身体機能の改善や減退防止」を目的に実施します。
機能訓練はやみくもにやっても効果は乏しく専門知識が必要です。
身体における特徴を把握し、動作しやすくトレーニングしてくれる。
多くの人を助ける機能訓練指導員について解説します。
【機能訓練指導員とは】
「介護保険法が定める『機能訓練指導員』とは、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護師、柔道整復師、又はあん摩マッサージ指圧師、一定の実務経験を有するはり師及びきゅう師の資格を有する者とされている。そしてこれらの全職種が、利用者の日常生活機能の維持向上を目的に同等のサービスを提供することが必要とされる。」
「公益財団法人日本柔道整復師会の日本機能訓練指導員協会ホームページ」の冒頭に、よくわかる一文で説明されています。
令和3年度の介護報酬改定にて、高齢者の自立支援や重度化防止の取り組みがより重要視されてきており、機能訓練指導員はそのカギとなります。超高齢化といわれる日本社会の中にあって、今後もその流れは続いていくと思って間違いありません。
【機能訓練指導員の仕事内容】
介護事業所や施設において、一人一人、利用者様の心身の状態に合わせた形での機能訓練を行い、問題なく自立して生活できることを最も高い目標として、出来る限り自分で身の回りに関する行動や活動ができるようになるように支援します。
利用者様の生活について環境を確認し、身体機能を評価します。利用者様ご本人のご意思やご家族のご意向を踏まえ、適切な機能訓練計画を作成します。機能訓練計画は3か月に1回見直しが必要で、利用者様ご本人様の状況や回復経過を確認して次の計画を立てる、という流れの仕事になります。
【機能訓練指導員になるために必要な資格】
機能訓練指導員になるために必要な資格 |
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看護師または准看護師 理学療法士 作業療法士 言語聴覚士 柔道整復師 あん摩マッサージ指圧師 鍼灸師 |
ここに介護福祉士がないことが特筆すべき点になります。
資格としては機能訓練指導員にはなれないため、機能訓練のサービスを提供したい場合の配置には注意が必要です。
【介護保険制度で算定する/機能訓練指導員の人員配置基準】
機能訓練指導員は加算要件の他にサービス提供上での配置基準が定められています。通所介護(地域密着型通所介護)、短期入所生活介護、特定施設入居者生活介護(地域密着型特定施設入居者生活介護)、介護老人福祉施設(地域密着型介護老人福祉施設)、認知症対応型通所介護がそれにあたる為、運営上での必須職種となっています。配置できない場合は「人員基準欠如」として指導の対象になります。
機能訓練指導員を配置し、算定要件に定められた内容で的確なサービスを提供することで算定できる加算の種類は以下になります。
提供介護サービス | 加算名称 | 単位数 |
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通所介護 地域密着型通所介護 | 個別機能訓練加算(Ⅰ)イ | 56単位/日 |
個別機能訓練加算(Ⅰ)ロ | 76単位/日 | |
個別機能訓練加算(Ⅱ) | 20単位/月 | |
短期入所生活介護 | 個別機能訓練加算 | 56単位/日 |
介護老人福祉施設 特定施設入居者生活介護 地域密着型介護老人福祉施設 地域密着型特定施設入居者生活介護 | 個別機能訓練加算(Ⅰ) | 12単位/日 |
個別機能訓練加算(Ⅱ) | 20単位/月 | |
認知症対応型通所介護 | 個別機能訓練加算(Ⅰ) | 27単位/日 |
個別機能訓練加算(Ⅱ) | 20単位/月 |
※個別機能訓練加算についてはこちら。
【最後に】
機能訓練指導員は、これからの超高齢化社会において、一人一人の人生におけるQOLを向上させるために、介護における重要性がどんどん増していく職種です。
筆者の祖母は最期こそ病院のベッドの上でしたが、その一週間前までは自宅で普通に生活をしており、趣味もこなしつつ楽しく生活しておりました。本人の希望である「ピンピンコロリで逝きたい」通りの結果となったことでお葬式は悲しみもあるものの、喪失というより個人の人生そのものにフォーカスしたものになりました。まさに理想だったのかなと今更ながら思います。祖母は、足は悪かったものの、亡くなるついぞ1週間前までは自立して歩いて時間をかけて趣味である買い物にも行っていました。人生を充実したものにするには、やはり「自分で出来る」「自分がやれる」ことが大事で、それこそがポジティブシンキングにもつながって、よりよい生活行動に繋がっていくのかなと感じます。
出来なくなってきても、その状態から悪化しないことは何よりも重要で、筆者の祖母のように「足が悪くとも歩けなくならない」ということが一つのキーポイントだったように、機能訓練することで、「あれ?」という状態になってもその時点で身体機能が維持・回復されることは、誰にでも訪れる加齢という現象を受け止めた上で人生を最後まで楽しく生きるための分岐点なのではないでしょうか?
そのターニングポイントのキーパーソンとしての役割を機能訓練指導員は担っています。
※介護保険制度の詳細については各自治体の介護保険制度の担当窓口にお問合せください。