令和3年4月より本格スタートした科学的介護情報システムのLIFE(Long-term care Information system For Evidence)は開始より1年以上が経過しましたが、まだまだ発展段階と言えます。VISITとCHASEが統合した形でスタートし、多くの障害を乗り越えて初年度を過ごし、現在を迎えていますが、大きな特徴は制度を活用することによって加算が付くことです。
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【厚労省のLIFE実態調査】

厚生労働省では活用に関するアンケートを行い、現在の活用状況は現場での問題点を公表しています。

例)厚生労働省 第24回社会保障審議会介護給付費分科会介護報酬改定検証・研究委員会資料(2)LIFEを活用した取組状況の把握および訪問系サービス・居宅介護支援事業所におけるLIFE活用可能性の検証に関する調査研究事業(結果概要)案

訪問系サービス(訪問介護、訪問看護)と居宅介護支援事業所の結果を見てみると、母集団としての登録状況があり、令和3年6月段階では、登録だけで見た場合の普及率が約27%であることが分かります。その後は増えたと思われますが、多くの事業所が登録している状態ではありません。また、導入を進めない理由として、「データを入力する職員の負担になる」が60%を超えており、現場は業務削減を目指して頑張っている中で、業務が「増える」事を恐れている節が見受けられます。

【LIFEの効能】

ケアの一連の活動(介護過程の展開)のプロセスの中で役に立った点について、アンケート結果を見ると、「アセスメント方法が統一されたこと」、「アセスメント頻度が統一されたこと」、「利用者の状態や課題を把握しやすくなった」という項目で20%を超えました。
LIFEを導入すると、主観的ではない見方でケアの一連の活動を進められることに気が付いている事業所が多く、客観的な視点で進める「科学的介護」への変化が進んでいる事が分かります。LIFEを活用することで国の狙いは概ね達成できると言えます。

【アセスメントが肝】

LIFE導入前後で利用者アセスメントについて約50%の事業所にて変化があったと回答しています。内容としては「アセスメント頻度の頻回化」「ADL(Barthel Index)評価」「褥瘡の評価等での評価基準に基づいた評価実施率の向上」が見られました。他にアセスメント内容で大幅な変化があった項目としては、「行動・心理症状(DBD13)」「意欲(Vitality Index)」の項目で、それぞれ25.9%から63.3%、31.7%から71.0%と倍以上の増加が見られます。

目標設定を点数化することにより、より具体的なケアが浮き彫りになり、提供するケアをより利用者様へ特化させていく経過で、必要なアセスメントを必要なだけ確認するようになったということでしょうか。

アセスメントの項目でポジティブな結果が得られたことは、今後、PDCAを実行していく中でどの点にフォーカスさせたらいいのか悩む事業所によってはヒントと言えます。

【LIFEで業務は増えたのか?】

どんな点に問題があるのかというと、LIFEデータとして上げられる項目についてリーダー的な役割を現場で確保し、数値のデータを確認し、分析し、先導しながら計画に落とし、実行するという部分での人材確保、アンケート内にもある通りのLIFEシステム自体の使い勝手とそれに対応できる人物の確保ではないかと考えられます。つまり現状は「人」に関する問題が多くを占めていると考えられるのです。アンケートを読み込んでいくと、「介護関連DB分析」というページがあり、平均利用者数でまとめた、算定事業所と未算定事業所の比較の表があります。これによると、平均利用者数の多い事業所はLIFE加算未算定の事業所の事業所よりLIFE加算を算定している確率が高いことが分かります。特に通所系で顕著な違いが出ていることから、平均利用者数の多い事業所=介護職員数が多い事業所の方が提出に有利であることを表す可能性があります。

まだまだ「人」に依存する状態のLIFEですが、モデル事業所に関しては、ケアが向上する期待を多く寄せているような結果となっています。ケアが向上するための証拠としてのLIFEですので、そのままご家族のご説明にも使えますし、ご家族が安心すればケアにもご満足いただけてケアマネジャーさんへのアピールもよりできるようになります。多くの利用者様にご希望いただく事ができる事業所であれば、様々な展開があり得るでしょう。

現場の業務を減らし、LIFE加算を算定するには、やはり画期的な起爆剤としては「多くの介護現場で業務削減実績のあるICT化」について先に考えることが必要そうです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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