【介護職員処遇改善加算とは】

介護職員の安定的な処遇改善を図るための環境整備とともに、介護職員の賃金改善に充てることを目的に創設された加算です。加算を請求するには、キャリアパス要件、職場環境等要件をクリアする必要があります。また、全5区分あるうち、4と5については令和4年3月31日で廃止となっており、現行加算の算定は1~3までの上位区分です。
※関連の加算の種類として、介護職員等特定処遇改善加算、介護職員等ベースアップ等支援加算がありますが、別の記事でご紹介します。

【処遇改善加算を取得するには】

処遇改善加算は、利用者様にサービスを提供して取得するものではないため、そのまま加算ができるわけではありません。まずは、介護職員の賃金改善計画、キャリアアップ計画、職場環境の改善計画を立てるところから始まります。
各自治体で様式がダウンロードできますので、申請書にその内容を記載します。書き方については多くの場合、様式をダウンロードする場所に記載例も同時にあることが多くなっていますが、詳細については各都道府県・自治体にお問い合わせください。
申請は加算予定の2カ月まで迄に行う必要があります。また、設定した要件は明示が必要ですので、事業所・施設様へご勤務される職員様へのご説明が必要になります。

■加算取得の流れ

介護事業所・施設にて介護職員の賃金改善、キャリアアップや
職場環境の改善を行う上での計画を立てる
介護事業所・施設にて介護職員の賃金改善、キャリアアップや職場環境の改善を行う上での計画を立てる
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都道府県・市町村に申請
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国保連に加算請求
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都道府県知事等へ実績報告書の提出
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年度更新
※書面は2年間の保管義務があります。

新規取得申請及び加算の区分変更申請は年間通して受け付けられています。提出締切は毎月末です。

また、加算を取得したら各事業年度における国保連から最終の加算の支払い(入金)があった翌々月の末日までに、必ず実績報告書の提出が必要になります。事業廃止がなく、継続して介護職員処遇改善加算を算定した場合は、自治体から提示された提出期限は厳守となります。

なお、年度の途中で事業を廃止した場合や介護職員処遇改善加算の算定を終了した場合も提出自体は必須となるためご注意ください。

【介護職員処遇改善加算の内容】

対象:介護職員
※介護事業所の判断により、他の職員の処遇改善にこの処遇改善の収入を充てることができるよう柔軟な運用を認める
算定要件:以下のとおりキャリアパス要件及び職場環境等要 件を満たすこと

・処遇改善加算(Ⅰ)|月額3.7万円相当※1

キャリアパス要件のうち、 ①+②+③を満たす かつ 職場環境等要件 を満たす

・処遇改善加算(Ⅱ)月額2.7万円相当※1

キャリアパス要件のうち、 ①+②を満たす かつ 職場環境等要件 を満たす

・処遇改善加算(Ⅲ)月額1.5万円相当※1

キャリアパス要件のうち、①or②を満たす かつ 職場環境等要件を満たす

※1:事業所の総報酬に加算率(サービス毎の介護職員数を踏まえて設定)を乗じた額を交付。
※キャリアパス要件、職場環境等要件のほかにも、下記の実績報告や労働保険納付状況、法令に関わる要件もあります。

>算定要件について

算定要件「1.キャリアパス要件」

3種の要件があります。

キャリアパス要件①
職位・職責・職務内容に応じた任用要件と賃金体系の整備をすること
介護主任・班長・一般介護や、サービス管理責任者、生活相談員、事務員などの職位職責などを定めた上で賃金体系も明示する必要があります。

キャリアパス要件②
資質向上のための計画を策定して、研修の実施または研修の機会を設けること
接遇研修、移乗研修や食事介助研修などの技能研修、ヒヤリハットに関する研修等の現場で活かせる研修やセミナーを設ける必要があります。

キャリアパス要件③
経験若しくは資格等に応じて昇給する仕組み又は一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組みを設けること
キャリアパス要件③による資格は、「介護福祉士」のような資格や、「実務者研修修了者」のような一定の研修の修了が想定されています。また、昇給する仕組みについては、正しくは「介護福祉士資格を有して当該事業所や法人で就業する者についても昇給が図られる仕組み」といい、介護職員として働きながら、介護福祉士が、「介護支援専門員」「社会福祉士」など、事業所が指定する他の資格を取得した場合に昇給が図られる仕組みを想定されています。なお、この資格は、公的な資格でなくても良いとされています。

昇給の仕組みについては、非常勤職員を含め、事業所・施設や法人で働く全ての介護職員が対象となる必要があります。介護職員であれば派遣労働者であったとしても、派遣元と相談の上、介護職員処遇改善加算の対象とし、昇給の仕組みを整えた上で派遣料金の値上げ分等に充てることは可能です。この場合は計画書・実績報告書ともに、派遣労働者を含めて作成する必要があります。

■キャリアパス要件に要件③による昇給の仕組みの例
・「勤続年数」や「経験年数」などに応じて昇給する仕組み
・「介護福祉士」や「実務者研修修了者」などの取得に応じて昇給する仕組み
・「実技試験」や「人事評価」などの結果に基づき昇給する仕組み

算定要件「2.職場環境改善要件」

「介護職員の賃金以外に職場環境などを改善する取り組みを整備していること」とされています。
例えば、事業所・施設様の経営理念やケア方針を示して具体例を挙げることによる目的の明確化、資格取得を目指す人材に対して研修制度を設けることや、仕事に対して悩んだ時のメンタルヘルスの相談体制を整えること、書類業務の効率化のためにICT化を促進する事や、子育て支援体制を整えること、有給休暇を取得しやすい環境を整えることなどがあります。

算定要件「3.実績報告書」

各自事態に様式があり、ダウンロードができるようになっています。
こちらも記入例が用意されていることがあります。
詳細については各自治体にお問い合わせいただく事が確実です。

算定要件「4.労働保険への加入及び労働保険料の適正な納付」

算定要件「5.労働基準法、労働災害補償保険法、最低賃金法、労働安全衛生法、雇用保険法その他の労働に関する法令に違反歴のないこと(罰金以上の刑に処せられていないこと)」

>算定率について
厚生労働省のホームページにてご確認いただけます。
※抜粋
現行の介護職員処遇改善加算等と同様、介護サービス種類ごとに、介護職員数に応じて設定された一律の加算率を介護報酬(※1)に乗じる形で、単位数を算出。

サービス区分(※2)加算率
訪問介護2.4%
夜間対応型訪問介護2.4%
定期巡回・随時対応型訪問介護看護2.4%
(介護予防)訪問入浴介護1.1%
通所介護1.1%
地域密着型通所介護1.1%
(介護予防)通所リハビリテーション1.0%
(介護予防)特定施設入居者生活介護1.5%
地域密着型特定施設入居者生活介護1.5%
(介護予防)認知症対応型通所介護2.3%
(介護予防)小規模多機能型居宅介護1.7%
看護小規模多機能型居宅介護1.7%
(介護予防)認知症対応型共同生活介護2.3%
介護老人福祉施設1.6%
地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護1.6%
(介護予防)短期入所生活介護1.6%
介護老人保健施設0.8%
(介護予防)短期入所療養介護(老健)0.8%
介護療養型医療施設0.5%
(介護予防)短期入所療養介護(病院等)0.5%
介護医療院0.5%
(介護予防)短期入所療養介護(医療院)0.5%

※1 現行の処遇改善加算等の単位数は、基本報酬に、処遇改善加算及び特定処遇改善加算以外の加算・減算を加えた単位数に、加算率を乗じて算出。
※2(介護予防)訪問看護、(介護予防)訪問リハビリテーション、(介護予防)福祉用具貸与、特定(介護予防)福祉用具販売、(介護予防)居宅療養管理指導、居宅介護支援、介護予防支援は加算対象外。

いかがでしたでしょうか?
処遇改善加算は介護の職場におけるキャリアアップや昇給を明確化し、労働環境を改善することで取れる加算です。
職場全員で改善することで、より良い環境と給与を手に入れましょう。

ここまでお読みいただき誠にありがとうございました。

※介護保険制度の詳細については各自治体の介護保険制度の担当窓口にお問合せください。

※こちらのコラムは令和6年度介護報酬改定の内容を反映いたしておりません。反映次第、こちらの注意書きを削除いたします。