【シューペルブリアン株式会社(広島県)様】の事例インタビューです。
●本コーナーでは「無料もしくは低コストのITを使って、お金をかけずに介護をより良くする活動」を行っている「NPO法人タダカヨ」さんにご協力頂き、「介護ICTに関する理解」と「介護職の知見」を活かした、ケア樹ユーザーインタビューを実施して頂きました。
シューペルブリアン株式会社様は、「誰もが前向きにチャレンジできる社会を作る」を理念に掲げ、広島県を中心に福岡県、熊本県で事業を展開されています。
事業内容としては有料老人ホームやショートステイ、デイサービス、訪問介護、また障がい者向けのグループホーム等、福祉サービスを多岐にわたり運営しています。また、介護の現場で役に立つDXツールの開発にも力を入れており、「クルトン」というiPhoneアプリを通じて「ケア樹」の記録入力や確認ができるサービスも提供しています。
今回は、2023年8月にオープンした「ショートステイそわか可部東」の管理者、柴田様にお話を伺いました。
本日は宜しくお願い致します!
昨年8月のオープン当初からケア樹を導入されていたそうですね。
はじめからICTの取り組みをされている背景を教えていただけますか?
当施設ではICTを活用した取り組みをいくつか行っています。その一つが記録の電子化ですが、業務効率の向上のみを目的とはしていませんでした。電子化はあくまでも手段として捉えており、最終的な目的は、業務効率をあげる事で介護職員が利用者様への直接的な援助(コミュニケーションやレクリエーションなど)により時間をかけられるようにし、利用者様のQOLの向上を図る事でした。
オープン時のスタッフには、以前の職場で紙の記録を使っていたという方が多く、手書きの方が慣れているという声も多数ありました。しかし、私達は「どんな介護を実現したいか」という目的から考える事をしっかりと共有しました。そして、最初は慣れない部分があるとしても、記録の電子化がどんな効果を創り出し、どんな新しい可能性が実現できるか、という視点で価値を感じられるように取り組みました。
単に使ってもらうだけでなく、その目的と価値を共有していたのですね。
それでは、数ある介護ソフトの中から「ケア樹」に決めた理由を教えてください。
まず第一に、①ICTが苦手な方でも直観的に使える設計が非常に魅力的でした。次に、入力に使用するカテゴリーが②非常にシンプルで無駄な項目がなく、これまでの運営をもとにブラッシュアップされてきた印象を受けました。さらに、同様のソフトをいくつか比較した結果、もっと高価格のものもあり、③圧倒的にコストパフォーマンスが優れている事。この3つの要素が揃った事が決め手となりました。
オープン時から導入していたとの事ですが、その際に課題になったことはありましたか?
スタッフが「ケア樹」の操作に慣れるまでが課題でした。私以外のスタッフ全員が電子記録を使うのは初めてで、手書きの方が慣れているため、かえって非効率だという声が多く上がりました。
これに対しては、記録だけでなくどのICT機器にも共通することだと思いますが、
「導入=効率化」ではなく、実際に繰り返し使っていく中で、その効果や価値が見えてくる事を何度も伝えました。時間をかけて慣れていくことが結果的に大きな効果につながることを理解してもらえるよう努めました。
やはり、どんな目的で何を実現したいかが、この点でも非常に重要だったのですね。
定着するまでの間に工夫したことや、その結果、成果があったことはありますか?
完全に定着するまでの間、情報共有は一時的に連絡ノートを使って行っていました。スタッフ全員にケア樹での入力を強制するよりも、まずは情報共有のスピードや正確さを優先し、紙の記録を一時的に使用することが必要だと判断した時期もありました。このように、段階を踏んで少しずつ慣れていってもらい、約4か月後には紙ベースの記録を廃止することができました。
何が重要かを見極められながら、臨機応変に対応されたのですね。
スタッフの方のICTへの苦手意識については変化はありましたか?
今は、スタッフ皆が「ケア樹」の操作には問題なく対応できていますが、それでもICTに対する苦手意識を持っている方は少なからずいます。とはいえ、ケア樹を使って記録や入力ができるようになったことは、ペーパーレス化や業務効率化にどれだけ貢献しているかを実感できるようになりました。また、「なぜこれを行うのか」という目的を繰り返し共有し続けることが重要だと感じています。
私だけでなく、役職に関係なくICT機器の推進チームを立ち上げ、そのメンバーから現場に伝えてもらうことで、より効果的に取り組みを進められたと思います。
ただ使い方を教わって実践するだけでなく、できるようになったこととその価値を実感できる点が素晴らしいですね! そのような取り組みがあったからこそ、導入後の成果はいかがでしたか?
シンプルに言うと、使用する紙の量を大幅に削減できたことです。次に、ショートステイは、入所退所とそれに関わる荷物の確認をしながら他の利用者様の対応も同時進行で行う、といった業務に追われがちな場面がどうしてもありますが、記録にかかる時間を短縮することができ、業務効率が大きく向上した点が挙げられます。はじめにお話ししたように、この成果で生み出せた時間を、利用者様とのコミュニケーションや他の業務に充てる事ができるようになりました。
業務効率の向上が直接、利用者様との関わりや他の重要な業務に活かされる点が素晴らしいですね。
今後、ICT関連で挑戦したい事はありますか?
記録業務だけでなく、介護ロボットやICT機器を活用して、利用者様一人ひとりに役立つデータを収集し、それを効果的に活かしていきたいと考えています。事業所やその時々の状況に応じて、親和性のあるICTツールを積極的に導入していきたいと思っていますが、あくまで「導入すること」が目的ではありません。重要なのは業務効率を向上させることであり、最終的なゴールはケアの質向上であることを忘れずに取り組んでいきたいと考えています。
導入の目的を業務効率化とケアの質向上にしっかりと結びつけ、常にそのゴールを意識されているのですね。
また、これはあくまで「こんなことができたらいいな」というアイデアですが、たとえばショートステイで持ち込まれた荷物をカメラでかざすだけで、それぞれの品目や数量を自動で認識して記録する仕組みや、食事の下膳時にカメラをかざすだけで食事量を自動的に認識して記録するシステムなどを導入できれば、業務効率が大幅に向上すると思います。単に効率化を目指すのではなく、間接業務をどれだけ減らせるかが重要です。
採用面接をしていると、ほとんどの方が「高齢者が大好き」という気持ちを持って入社してくださいます。しかし、現場に入ると業務に追われ、なかなか利用者様とのコミュニケーションの時間を確保できないという事がよくあります。運営側としては、このギャップを縮め、志を持って入社してくれたスタッフがその思いを実現できるようサポートしていきたいと思っています。
スタッフの気持ちを大切にし、充実感を感じながら働ける環境づくりに取り組んでいる事が伝わってきました。さまざまな取り組みは、その思いが原動力となっているのですね。
本日は、貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました!
役職 :管理者
仕事内容:施設の管理業務
趣味 :ゴルフ
中門 千恵子(所属:NPO法人タダカヨ)
福祉系専門学校卒業後、介護職員やケアマネジャーとして様々な施設で勤務。福祉系パラレルワーカーを目指し、現在は訪問介護ヘルパーとして勤務しながら、介護保険外の個人ヘルパーとしても活動。現場で、書類の多さや職員のコミュニケーション、ITツールの課題に直面した経験から、ITの導入で介護業界で働く人達の力になりたいと思いタダカヨに参画。
介護福祉士、ケアマネジャー。
NPO法人タダカヨ
「ITを上手に使って、お金をかけずにより良い介護へ」のビジョンの元、介護業界のIT活用を支援するNPO法人です。
https://mmky310.info/