【社会福祉法人豊明会(宮城県)様】の事例インタビューです。
●本コーナーでは「無料もしくは低コストのITを使って、お金をかけずに介護をより良くする活動」を行っている「NPO法人タダカヨ」さんにご協力頂き、「介護ICTに関する理解」と「介護職の知見」を活かした、ケア樹ユーザーインタビューを実施して頂きました。
宮城県栗原市にある社会福祉法人豊明会様は、平成元年に開設されました。高齢部門、障がい部門においてそれぞれに入所・短期入所・通所の各事業所を運営しており、さらに居宅介護支援事業所と地域包括支援センターも展開しています。
どの年代の方にも、必要なサービスを切れ目なく提供し、その人らしさや、その人らしい生活を続けていただく事をモットーとされているそうです。
今回は、法人のICT導入の責任者である長澤様に、選定から現場での導入に至るまでのお話を伺いました。
本日は宜しくお願い致します!
栗原市の福祉を幅広く支えている豊明会様が、法人全体でケア樹を導入した経緯や過程について聞ける事が楽しみです。
豊明会は、どの年齢であっても「通える」「泊まれる」「相談できる」という形で地域の方々を支えています。
しかし、私達の地域は人口減少やそれに伴う介護スタッフの人材確保が大きな課題となっており、その点も今回のICTへの取り組みに繋がりました。
介護業界全体で人材不足が課題となっていますが、豊明会様ではこの課題をどのように捉え、どのような取り組みをされたのでしょうか。
私達の地域では想定よりも早いペースで人口減少が進み、人材不足は深刻な問題となっています。単に募集を続けるのではなく抜本的な改革に取り組みました。まず、業務を細分化し、専門的な業務は専門職が担当し、洗濯や清掃などの専門外業務は他のスタッフに振り分ける等、業務の見直しを進めました。その結果、介護記録の負担が非常に大きい事が改めて浮き彫りとなり、ここをいちはやく改善する必要があると認識しました。
介護ソフトやICT活用など、新しい取り組みをはじめ、働く人から選ばれる事業所になる事を目指しました。
介護記録や報告書などは全て手書きだった所からケア樹を導入されたとお聞きしました。
手書きの記録は転記や重複が多く、ここを改善できればかなりの負担軽減が見込めますね。
ケア樹の導入は、どのように進んで行かれたのでしょうか。
ICT導入支援事業補助金制度の後押しを受け、まずは利用するソフトの選定からスタートしました。それまで使用していたソフトに介護記録機能を追加できないかという相談や、その他の介護ソフトについても情報収集と検討をしました。その結果、ケア樹は非常に安価で費用対効果が高く、また現場スタッフの評価も①入力のしやすさ②見やすさの点で最も高かった事も決め手となりました。
現場のスタッフの方にも選定に入ってもらっていたのですね。
選定、導入と進んで来られて、課題になった事はありましたか。
スタッフの不安感や一時的な作業、心理的な負担が増えることが課題となりました。導入開始時には覚える手間がかかりますが、これは一時的なものであり、スタッフの業務を改善するためのものです。しかし、「それでも変化は求めない」という意見も一定数ありました。
変化や新しい取り組みに不安や抵抗感を感じる方は少なくないと思いますが
そういった心理的な対応は何かされたのでしょうか。
一斉に全事業所や全部門で進めるのではなく、まずは介護現場のケース記録のみを移行するか、全利用者様の半数からスタートするなど、段階的・部分的に進めていきました。
請求業務についても、それまで利用していたソフトとケア樹を並行して使用し、データはいつでも確認できるが、実際の請求はケア樹で行うという方法を取りました。
また、完全に移行するまでのスケジュールをしっかりと立てつつ、その期間内で柔軟に変更できるようにしました。
段階的、部分的に計画的に進められた事がよかったんですね。
計画をしっかり遂行しながら、スタッフの方の負担に寄り添われたからこそのスムーズさだと思います。
では導入時のはいかがでしたか。
事業所ごとに異なるやり方を統一することが課題となりました。16の拠点を持つ法人であるため、拠点ごとに計画作成のツールが異なるなどの問題がありましたが、導入開始時から、その壁さえ超えれば計画通りに進むだろうと想定していました。
各拠点ごとにICT担当者を配置し、進捗状況や対策を都度相談できる体制を整えたことも、スムーズな連携に繋がりました。
導入時の混乱が見えると導入自体が高い壁に感じてしまいそうですが、複数の拠点があるからこそ、どのような課題が出るか想定しておく事が重要ですね。
では、ケア樹導入後の成果やスタッフの方の声はいかがでしたか。
スタッフのアンケートでは、情報が集約されていて確認しやすい、記録の重複や転記がかなり減った、といった意見がありました。
単に効率が上がっただけでなく、業務の合間に記録が完了できる事で、記録の量が増え、それがアセスメントにつながったという声もありました。
その後の展開として、よく使う文章を定型文にしてより記録がスムーズになるよう工夫するようになり、スタッフ同士やユニット間で良い方法を参考にしあう事も見られました。
また、現在使用しているセンサーマットの反応データを介護記録に反映できないかといった、次の展開を見据えた前向きな視点が出てくるようになったのも大きな収穫だと思います。
ケア樹の導入をきっかけに、サービスの質の向上や新たなICT活用に繋がる展開にまで至ったのですね!
成果はまだまだ他にもあると思いますが、今後さらにICTでチャレンジしたい事はありますか。
将来的には、介護ロボットによる身体的負担の軽減や、見守りシステム、ナースコールの連動を進めたいと考えています。さらなるICT活用を図り、人が関わるべき部分は人が、置き換え可能な部分はICTを活用することで、職員不足の課題に取り組みながらも、利用者様に安全で安心な環境を提供し、生活を支えていきたいです。
地域ならではの課題と、それをどのように捉えてICT化を進められてきたかがよく分かりました。とても貴重なお話を、今日はありがとうございました!
役職 :法人統括管理者
仕事内容:法人全事業所の運営、経営統括
趣味 :スポーツ観戦、社会人チームバスケ、旅行
中門 千恵子(所属:NPO法人タダカヨ)
福祉系専門学校卒業後、介護職員やケアマネジャーとして様々な施設で勤務。福祉系パラレルワーカーを目指し、現在は訪問介護ヘルパーとして勤務しながら、介護保険外の個人ヘルパーとしても活動。現場で、書類の多さや職員のコミュニケーション、ITツールの課題に直面した経験から、ITの導入で介護業界で働く人達の力になりたいと思いタダカヨに参画。
介護福祉士、ケアマネジャー。
NPO法人タダカヨ
「ITを上手に使って、お金をかけずにより良い介護へ」のビジョンの元、介護業界のIT活用を支援するNPO法人です。
https://mmky310.info/