令和6年8月1日より始動の新LIFE、傾向と対策をピンポイント解説、予測解説していく。この最新の解説を、現在苦戦している事業者、不安な事業者、今後どうなるかで悩んでいる事業者に参考にしていただければ幸いである。
目次
1.LIFEの新システムへの移行
令和6年4月10日をもって、旧LIFEが終了した。
令和6年8月1日から新LIFEがスタートしている。そのため、令和6年5月から7月については、LIFE加算の算定要件であるデータ提供が出来なかった。
しかし、各月の評価作業は加算算定に置いては必須であるために実施しなければならない。
特例として提出待ちのデータは、令和6年8月1日から10月10日までの間で遡って提供することとなる。また、旧LIFEから新LIFEに自動的に引き継がれるデータは、様式情報、事業所情報、端末情報に限られる。職員情報、利用者情報、暗号化キーについては、手作業での移行が必要であった。そのような移行期間を経て、新しいシステムとなった。
新たなシステムでは、旧システムで明らかになっている集計の不具合も修正されているだろう。薬、誤嚥性肺炎や新規褥瘡発生での集計ミスなどである。また、集計項目も見直されて、重複項目も整理されている。そのため、集計項目が減少し、項目の入れ替えも行われている。ある意味、スッキリとしたのではないか。
ただし、今回はあくまでもシステムの変更に過ぎない。制度上のルールは従来と同じである。なので、基本的にやるべきことは変わらない。
※資料出典:厚生労働省 介護保険最新情報 Vol.1227 令和6年3月15日 – 厚生労働省 P6
2.年末から新たなフィードバック票の提供もスタート
システム移行に伴って、新たなフィードバック票のサンプルも公開された。
これまでのフィードバック票は、全国平均との比較のみで、地域特性が反映されていないという批判があった。また、事業規模なども一律の集計のため、自施設の的確な比較対象とは言えなかった。
新たな事業所フィードバックについては、都道府県、事業所規模、平均要介護度の各項目を設定できるようだ。利用者フィードバックについても、都道府県、要介護度、日常生活自立度(身体機能と認知機能)の設定が出来るとされている。
ただし、旧LIFEの時も、サンプル通りのフィードバック票が提供されては来なかった。そのため、様式や機能などの変更は十分に考えられる。しかし、サンプルを見る限り、格段に使えるフィードバック票に仕上がっていると思われる。この新たなフィードバックの提供は10月以降とされている。
※資料出典:富山県HP LIFEのフィードバック見直しイメージ(事業所フィードバック)P2
3.LIFEの活用が今後の運営指導で指導対象になる
ここで問題となるのは、今後の運営指導でLIFEは指導対象になることである。
この3年間において、旧LIFEは使い物にならなかった。そのため、運営指導においても、ほぼノータッチだった。
新LIFEが使えるようになると、確実に運営指導の指導対象となる。多くの加算には、LIFEの活用が算定要件として位置づけられている。
今後は、LIFEフィードバックの活用記録が重要となってくる。LIFEが始まって3年間、フィードバック票が不十分であったことを理由に、LIFEにデータを提出するのみであった。単に加算だけ算定するケースが大部分である。問題は、利用者に加算として費用を負担させながら、何も利用者に還元して来なかったことにある。
新たなフィードバック票の提供が始まった時点から、その言い訳は通じないことになる。
4.次期改正への期待
令和6年度介護報酬改定では、期待された訪問サービスと居宅介護支援へのLIFE加算の創設が見送られた。その要因の一つに、今回のシステム変更があったと思われる。そうであれば、次回令和9年度改定において満を持して、訪問サービスと居宅介護支援へのLIFE加算が創設されるであろう。
そこで注目されるのは、令和8年から制度が整備される介護プラットフォームである。この中で、LIFEのフィードバック票は、他の介護事業者、医療機関、ケアマネジャー、利用者と共有されるとされる。
この形が実現した場合は、LIFEを活用していない事業所は問題視される。
また、リハビリなどの成果が見える化されるため、単に機能訓練を提供するだけではなく、しっかりとしたアウトカムが求められてくる。リハビリを提供する事業者の経営環境が大きく変わることが予想されるので、注意が必要だ。
5.求められるLIFEの活用
LIFEの活用を上手く機能させるためには、多職種が連携して、利用者の更なる状態の改善に取り組む必要がある。
多職種連携における最大の課題は、介護業界における慢性的な人材不足だろう。各職種が集まってカンファレンスを行う時間が確保出来ないという事業所も多い。各加算の算定要件である多職種協働についても、事後報告に近い形で終わっているケースも多く見かけてきた。
しかし、それでは各職種の知見が拡がらない。各職種のスキルアップ、レベルアップにつなげて、引いては施設、事業所のケアの質の向上に繋がるというメリットが活かせないのだ。
LIFEを活用するためには、同時並行としての業務改善、効率化に取組むことも重要である。新たなフィードバック票の提供が始まると、LIFE活用がいよいよ本格化するだろう。
もともとの想定でも、利用者フィードバック票は、施設・事業所内だけの活用に留まらない。
利用者や家族に手渡して、近況の報告と今後の対応についてのディスカッションに活用出来る。サービス担当者会議でその利用者を担当する担当事業所間で共有することで、エビデンスに基づいた検討が可能となる。その利用者が、デイサービスとデイケアを利用している場合、それぞれの検討結果と解釈を共有することで、より連携したケアが可能となる。デイケアで開催されるリハビリテーション会議に於いても、同様の効果が期待出来る。
フィードバック票を上手く活用することで、目標の達成に向けて、担当事業所間での連携の加速も期待出来るのだ。
過去に寄稿したものにLIFEの活用についての解説があるので是非こちらも参考にして欲しい。
・参考記事:LIFEのフィードバック活用について
小濱 道博 氏
小濱介護経営事務所 代表
C-SR 一般社団法人介護経営研究会 専務理事
C-MAS 介護事業経営研究会 顧問
昭和33年8月 札幌市生まれ。
北海学園大学卒業後、札幌市内の会計事務所に17年勤務。2000年に退職後、介護事業コンサルティングを手がけ、全国での介護事業経営セミナーの開催実績は、北海道から沖縄まで平成29年 は297件。延 30000 人以上の介護業者を動員。
全国各地の自治体の介護保険課、各協会、介護労働安定センター、 社会福祉協議会主催等での講師実績も多数。「日経ヘルスケア」「Vision と戦略」にて好評連載中。「シルバー産業新聞」「介護ビジョン」ほか介護経営専門誌などへの寄稿多数。ソリマチ「会計王・介護事業所スタイル」の監修を担当。