2024年(令和6年度)の介護報酬改定で「生産性向上推進体制加算」が導入されました。

対象サービスにおいて、生産性向上の推進体制を強化し、見守り機器等のテクノロジーを活用して介護の質を含めた業務改善の取り組みによる効果を示すデータ提出することで得られる加算となります。
条件として1つ以上の“見守り機器等のテクノロジー”を導入する必要があり、業務改善の取り組みによる効果を示す項目のデータ提出が必要です。

今まであまり優先順位を上げてこなかった事業所・施設様でも今回こそは、と、
これから、ICTや介護ロボットの情報収集のために展示会に出かける方も多いと思います。

しかし、展示会というのは、【とりあえず行っただけではただ疲れる】、そういうものです

とりあえず行ってきたという方によくありがちな感想として、「行ってはきたけど成果になったのか、よくわからない」「忙しいのに頑張って行って骨折り損のくたびれ儲け」、があります。

そこで、今回は、2024年の介護関連の展示会情報をお伝えするとともに、介護ソフトを探す事業所を例に挙げて、展示会を十二分に活用して情報を集めるノウハウについてお伝えしようと思います。

書いている私自身、ITからウェブ業界、介護関連の展示会を、ほぼ毎年訪れています。

おかげ様で東京ビッグサイトのランチやロッカーの場所は、ほぼ把握しています。

業界は関係なく、展示会というオープンな場所で情報を集めるコツはほぼ同じだと思います。

これから展示会で情報収集しようとされている方の参考になれば幸いです。

目次

  1. 国内の主要な介護展示会について
  2. 展示会での介護ソフトの情報収集
  3. 展示会当日のコツ
  4. 最後に:介護というくくりでの注目分野

【1.国内の主要な介護展示会について】

毎年、介護の展示会は日本全国あちらこちらで開催されています。

大手メーカーや地方の福祉協議会、マスコミが主催するものからイベント会社がやっているものまで様々です。

民間のイベント会社が主催している展示会では、介護単独というのは少なく、「介護×福祉」と「介護×医療」という形で開催されるものが多い印象です。

ここでは民間のイベント会社が毎年定期的に行っている、規模の大きい展示会をまとめました。

「開催地域」

規模の大きな展示会は「東京」「大阪」が突出して多いです。つまり大きな展示会は、東京の東京ビッグサイト(東京国際展示場)、大阪はインテックス大阪(大阪国際見本市会場)でよく開催されています。また、東京と名前があるものの、千葉県の幕張メッセ(千葉県日本コンベンションセンター国際展示場)もよく利用されています。

「2024年に開催される主要な介護展示会」

医薬品や医療機器等の医療関係の展示会を除いて、介護に関わりのある展示会の一覧です。

※敬称略

通称
(主催者)
展示
会名
開催
日時
開催
場所
概要
ナーシングケア大阪
(リード エグジビション ジャパン株式会社)
第10回介護&看護EXPO2024/01/17~2024/01/19インテックス大阪介護ICTや介護/福祉機器、人材サービスなどが出展されます。
CareShowJapan
(インフォーマ マーケッツ ジャパン株式会社)
介護・高齢者福祉展2024(第10回)2024/02/20~2024/02/22東京ビッグサイト化学・医薬品、総合小売、医療・介護に関連する展示会です。
メディケアフーズ展2024(第16回)2024/02/20~2024/02/22東京ビッグサイトフードと医療・介護に焦点を当てた展示会です。
ヘルスケアIT2024(第9回)2024/02/20~2024/02/22東京ビッグサイト化学・医薬品と医療・介護のIT関連展示会です。
病院・クリニック展2024(第4回)2024/02/20~2024/02/22東京ビッグサイト化学・医薬品と医療・介護に関連する病院とクリニックの展示会です。
保険薬局支援展2024(第5回)2024/02/20~2024/02/22東京ビッグサイト化学・医薬品と医療・介護に焦点を当てた保険薬局の展示会です。
東京ケアウィーク’24
CareTEX東京
(ブティックス株式会社)
第10回【国際】介護用品展/介護施設産業展/介護施設ソリューション展(CareTEX東京'24)2024/03/12~2024/03/14東京ビッグサイト介護用品、障がい者・障がい児福祉支援、介護施設向け設備などが出展されます。
第7回【次世代】介護テクノロジー展(Careテクノロジー'24)2024/03/12~2024/03/14東京ビッグサイト介護における最新のテクノロジーとソリューションが紹介される展示会です。
バリアフリー2024
(社会福祉法人 大阪府社会福祉協議会・テレビ大阪・テレビ大阪エクスプロ)
バリアフリー2024(第30回)2024/04/17~2024/04/19インテックス大阪高齢者と障がい者の福祉に関連する展示会です。
慢性期医療展2024(第14回)2024/04/17~2024/04/19インテックス大阪慢性期医療に特化した展示会です。
在宅医療展2024(第6回)2024/04/17~2024/04/19インテックス大阪地域包括ケアシステムにおける在宅医療の専門展です。
看護未来展2024(第9回)2024/04/17~2024/04/19インテックス大阪看護サービスの新しいステージを目指す専門展です。
CareTEX東京’24【夏】第1回【国際】介護用品展/介護施設産業展/介護施設ソリューション展(CareTEX東京'24【夏】)2024/07/30~2024/08/01東京ビッグサイト介護用品、障がい者・障がい児福祉支援、介護施設向け設備などが出展されます。
住まい×介護×医療展2024in東京(高齢者住宅新聞社)住まい×介護×医療展2024in東京2024/08/06~2024/08/07東京ビッグサイト介護・医療に携わる人のための展示会です。介護・医療に関する経営者・管理者層が多数来場します。
大阪ケアウィーク’24、CareTEX大阪
(ブティックス株式会社)
第9回【国際】介護用品展/介護施設産業展/介護施設ソリューション展(CareTEX大阪'24)2024/10/09~2024/10/11インテックス大阪介護用品、障がい者・障がい児福祉支援、介護施設向け設備などが出展されます。
第7回【次世代】介護テクノロジー展(Careテクノロジー'24)2024/10/09~2024/10/11インテックス大阪介護における最新のテクノロジーとソリューションが紹介される展示会です。
ナーシングケア東京
(リード エグジビション ジャパン株式会社)
第7回介護&看護EXPO2024/10/09~2024/10/11幕張メッセ介護ICTや介護/福祉機器、人材サービスなどが出展されます。
H.C.R
(全国社会福祉協議会 保健福祉広報協会)
第51回国際福祉機器展&フォーラムH.C.R.20242024/10/02~2024/10/04東京ビッグサイト高齢者や障害者(児)の日常生活の自立促進のための福祉機器、リハビリテーション機器や介護機器・用品などが出展されます。

【2.展示会での介護ソフトの情報収集】

この記事では、どういった点で選んで良いかとても難しい「介護ソフト」選定を例にあげたいと思います。大規模な介護の展示会に行くと必ず介護ソフトやシステムに関するブースが集まったエリアがあります。

そこで必要な情報を一度に集めてしまえば、介護ソフトの選定にはかなり役立ちます。

「事前の準備」

まず事前の準備が必要です。

そのために一番大切なものは調査をする前提となる条件です。

介護ソフトを使う前提条件がきちんと整理されていれば、調査項目はおのずと決まってきます。

前提条件とは例えば、次のようなことです。

  1. 介護事業の種類:介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、介護老人保健施設、または訪問介護(ホームヘルプサービス)、訪問看護、通所介護(デイサービス)等どのような介護事業を行っているか
  2. 職員の数:介護ソフトを利用する人数
  3. 現状の介護ソフトの価格:年間介護ソフトにかかっている費用
  4. 介護ソフトの対応範囲:どこからどこまでを介護ソフトで対応しているのか
  5. 現状の介護ソフトへの不満:現在利用中の介護ソフトで不便な機能
  6. 今後拡充したい機能:現状の介護ソフトではできていないが実現したい機能

上記の1から6の要件を整理すると、。特に5番目と6番目の前提条件は自分で自分の事業所や施設でのヒアリングなどの調査が重要なことがわかります。

現場で介護ソフトを使っている人に対して、今どんな不便を感じているのか、どんなことをしたらより便利になるのかを事前にスタッフにヒアリングしましょう。

不満についての回答例)小規模のA居宅介護支援事業所

「現状の介護ソフトへの不満」

  • できれば、ソフトの利用料をもう少し安くしたい
  • 事業所の特定のパソコンでしか利用できない。
  • 出先や自宅などで情報の確認が出来ず、不便。
  • 報酬改定時に更新費用が掛かるのが負担

「今後、拡充したい機能」

  • ケアプランデータ連携を行えるものが良い
  • 報酬改訂時の更新に手間や費用が掛からないシステムが良い

「調査項目と下調べ」

前提条件が決まったら、それに基づいて自分たちが調査すべき項目を書き出してみます。

メモ程度のもので構いません。

展示会では、多くのブースがあり、多様な製品があります。色々なメーカーのところに行って話を聞くときに、同じ評価ポイントでヒアリングしないと比較調査になりません。

前述の例のA居宅介護支援事業所の場合でいえば、このようなイメージの調査項目が出来上がります。

  1. 介護事業の種類:居宅介護支援
  2. 職員の数:5人
  3. 現状の介護ソフトの価格:年間約15万円
  4. 介護ソフトの対応範囲:ケアプランの作成・管理から介護保険請求まで
  5. 調査項目:
    • 利用料は安いか
    • 利用できるパソコン台数に制限があるか
    • クラウドのシステムか
    • ケアプランデータ連携が簡単にできるか
    • 報酬改定時のシステム更新は無償なのか。更新方法は

調査項目を決める上での注意点は数を多くし過ぎない事です。
あれもこれもと聞くべき項目を増やしていくとあまりのシステムの種類の多さに結局情報を集めきれなくなってしまいます。
頭の中でも憶えていられるくらいである5項目前後がベストです。

これぐらいに項目を絞って行くと、展示会当日と情報を集め終わった後のまとめが楽で、スタッフとの相談内容も大きく悩まなくて済みます。
これ以上知りたいものがあったら個別の製品名で検索して、後程WEBなどから問い合わせみると良いでしょう。もちろんその場で「コレだ!」というものがあればその場で聞けるだけ聞いてしまうのがもっと楽です。

さて、ここまでまとめて初めて、【どの展示会に行くか】を決めましょう。

先ほどの例で挙げた事業所の場合には、「居宅介護支援」系のソフトを取り扱っている企業が出展している展示会に行かないと意味がありません。

居宅介護支援の請求等に対応する介護ソフトは、幅広い介護サービス全般に対応している介護ソフトや居宅介護支援サービスに特化した介護ソフトなどが対応してています。

ただし、低価格のソフトを探す場合は、大手よりも比較的規模の小さい後発のソフト会社が費用を抑えて提供している傾向があるため、検討に入れることをお勧めします。

また現在は介護ソフトも多種多様になっており、「ケア記録専門のもの」や「訪問介護などの特定のサービスに特化したもの」などもあり、介護ソフトが必ずしも自法人の介護サービスに対応したソフトを扱っているとは限りません。

そのため、事前に展示会のホームページを確認することは大事です。

展示会のホームページには必ず会場の案内図や出店企業の名前や説明文が出ています。

その内容から展示内容を事前に確認することが出来ます。

是非、その時には聞いたことがあるソフトばかりではなく、よく知らないソフトなども見てみるようにしましょう。
自分が知らなかったソフトの中に、コスパが良いと感じられる自分の事業所のオペレーションに合致したソフトが見つかるかもしれません。

会場の案内図や企業一覧などを見て、居宅支援事業所対象の多種多様な介護ソフトの会社がたくさん出ているような展示会は大いに行く意味があります。
出会いを作り、その場で比較できる、それこそが展示会の醍醐味です。
最近はICTやロボットなどの展示会と合わせて介護ソフトが出展されているところもあります。
課題を解決してくれる製品がある可能性の高い展示会を適切に選択することが必要です。

得るものを多くするために、自分にとって意義深い展示会を選びましょう。

「展示会での情報収集のポイント:ホームページ」

展示会のホームページには出展社の会社名が必ず載っていると上部でも記述いたしました。

さらに出展社である介護ソフトの会社のホームページを見れば、その会社が、自分たちが探している内容の介護ソフトを販売しているのかどうかわかります。

事前にホームページを最大限活用して情報を集めましょう。

「システムのデモを見る準備」

事前にホームページを見ることで、だいたい、このブースは行った方がいいという検討がつきます。また、製品に関しては出展社の個別のホームページまで見ることによって、製品についてある程度どんなものか目星を付けることもできます。
目的の製品ができると、その製品を中心に予定が決まります。

事前準備をする中で気になったら、最初にシステムの概要だけ目にしておいて、当日そのブースに立ち寄ったときに、必ずシステムのデモを見ましょう。実際に提供されている画面を見せてもらうことでより深く製品について知ることができます。

画面を見て話をすると、事前に想定していたものと随分違うということはよくあります。

また、できる機能は増えたけど、今当たり前にできている機能がない、ということもよくありますので、しっかりとチェックが必要です。
ホームページを見てある程度絞った上でさらにデモをみることで期待通りか期待外れかどうかは現地である程度わかります。事前のインプットで理解はより深まるでしょう。

展示会イメージ

画面を見ながらブース担当者に話を聞くと、どうしても時間がかかります。
しかも基本的には立ちっぱなしなので、疲れてきます。
疲れると集中力も切れますので、判断力も下がります。
じっくり話を聞いてデモを見る価値があるのかを、事前情報である程度取捨選択しないといけません。
また取捨選択した後の質問は洗練されていますので、時間は無駄にならず、疲れからの判断力低下を最小限におさえることができます。

当日に直感で決めることも良いのですが、事前にある程度絞っていると精度の高い情報集めになります。

事前にホームページを見て調べると、それだけでかなりの時間の節約になりますので必ずやっておきましょう。

「事前予約」

事前予約のシステムがある展示会は、この予約システムを最大限に利用しましょう。

何時・どこに立ち寄るかという予約ができれば、他の客に気を使わなくても良く、予約時間いっぱい使いながら聞きたい事を聞くことができます。予約をしないとブースが大人気だったり、次から次へと質問が来ていたり、ブース担当者が自分の直前にお話の長いお客さんに捕まってしまうと、自分が思う存分質問をぶつけるのが難しくなります。気になっていたのに自分の滞在可能時間を過ぎそうになっても目的の話が聞けないのはよくある失敗談です。
予約さえしておけばブースの会社も時間をとってちゃんと対応してくれますし、ブースによってはテーブルや椅子が用意されていてじっくり製品を確認できます。

質問の順番を待つこともありませんし、こういった事前予約のシステムがある場合は最大限に活用しましょう。

【3.展示会当日のコツ】

さてここからはもっと具体的な当日の過ごし方です。

大きな展示会は広いので、一周歩くだけでも運動になります。
普段現場で歩き回っている皆様であったとしても、慣れない場所、人混み、お食事の長蛇の列、すぐに入れないトイレなど、目的をあっさり達成できないことは無駄な動きを生みますので大変に疲れます。

「歩きやすい服と靴」

歩きやすい靴と、動きやすい服で、両手が自由になるタイプのリュックなどのバッグがおすすめです。
特に歩きやすい靴はマストです。
出展社のブース担当者がハイヒールという場合もあるかもしれませんが、おそらく会場にいる多くの方が明らかに疲れる靴は選択していません。出展社であっても疲れない靴で来ていますので、来場するお客様はもっと気楽で良いのです。

当日、展示会などで資料やパンフレットなどを配る会社が多いため、回るブースが多ければ多いほど、帰りの荷物はかなり大きくなるのが普通です。

「名刺とスマホ」

ブースで担当者に訪ねても、ニッチな質問であった場合にはすぐに答えがわからない、つまりその場で情報が得られないことはよくあります。

そういった時には必ず名刺を渡し、こういうことについて聞きたいのだけれどもいついつまでに回答が欲しいとはっきり伝えましょう。

きちんとした体制をもっている企業、やる気のあるブース担当者であれば後できちんと連絡をくれるはずです。対応でもふるいにかけることはできます。

またスマホの写真をメモ代わりに使いましょう。

ちょっと覚えておきたいデータや、展示会会場で見かけた表など表や商品は写真に撮っておきます。

気になる機器の画面の操作などは動画に撮っておくこともできます。

もちろん、その際に出展社に「撮影しても良いですか?」という確認はマナー上必要ですが、後になって、これは何の情報だったかをまとめるのに写真の記録は便利です。
ちなみに写真や動画ですが、これは取り扱いには十分お気を付けください
狙っていなくても個人の顔がはっきりと映り込んでしまったような写真や動画については、その人個人に承諾を得ない状態でブログやSNSに無加工であげるのはやめましょう。ブログやSNSに投稿する写真や動画は、個人が特定できる状態で映りこんだ場合、かならず許可を取りましょう。取れなければモザイクなど本人を確認できないようにするレベルまで画像に加工をかける必要があります。
展示会に参加している人には様々な事情がありますので、軽い気持ちで挙げた写真や動画から思わぬ大きな問題に発展するようなリスクは予め避けておくのが無難です。

4.最後に:介護というくくりでの注目分野

ここまでは居宅介護支援事業所の介護ソフトの比較調査をすることを例に挙げて、その方法について述べてきましたが、最後に介護関連製品で注目されている分野についてご解説します。

「超高齢化社会」と言うだけあって、日本における医療・介護という市場は大きくなる一方です。

ある経済産業省よりのシンクタンクの予想によれば公的な医療保険・介護保険を中心にしたヘルスケア産業の市場規模は大きく、2025年には約33兆円になると推計しています。
ヘルスケア産業市場のポテンシャル
出典:経済産業省ウェブサイト 第3回新事業創出WG事務局説明資料【資料2】P3

介護ソフトはデータ管理において必須ですが、それ以外でこれから発展する分野はやはり「介護ロボット分野」「介護食」という分野の2つだと思います。

「介護ロボット」

そもそも介護の業界で「介護ロボット」という言葉の定義自体が非常に広く曖昧でした。

「介護ロボット」の定義は、厚生労働省のサイトにまとめられていますが、見守りセンサーの類から、移乗補助器具まで全て「介護ロボット」にまとめられています。この定義は、厚生労働省が重点項目として「介護ロボット」を定義するために必要なものであって、「介護ロボット」そのものの意味としては範囲は狭められています。

仮に、介護で使われているロボットという定義にした場合、その種類と数は使用する人によって無限大であり、もちろん海外のものも含まれてくるでしょう。
介護とは高齢者や障がいのある人で通常の生活支援が必要な人を助けることですが、ロボットとは様々な見解のある単語であり、もともとはカレル・チャペック氏の「R.U.R.」という戯曲による造語からスタートし、とある研究機関では「センサー、知能・制御系、駆動系の3つの要素技術を有する、知能化した機械システム」と表現し、とある業界では産業用とサービス用に区分されるとか、人に代わって仕事をする自動操縦システムであれば全てロボットだとか、説はたくさんあります。自分はどの立ち位置、どの見方をしているかで範囲や分け方が変わってくるのです。

別の言葉で言えば、これから介護ロボットの定義の範囲も広がる可能性があるわけで、モーターとセンサーとアクチュエーターが組み合わさったものであれば、何でも介護ロボットになる可能性だってあります。

今後、生成系AIが発展していけば、今では考え付かないようなものも、つまりどんな機器でも「介護ロボット」になれる可能性があるのですから、世界で最先端とも言える日本発で今後どんな新製品が出てくるか楽しみな分野でもあります。

「介護食」

もう一つは食事にまつわる分野です。

飲み込みやすい嚥下食は既にかなり進歩発達しています。

最近では、一見これが「介護食」とはわからないようなものも出てきています。

見た目を美味しそうにするという技術もありますが、体力の落ちてきた方に対して栄養を効果的に取れるような補助食品というのは、嗜好品と言えるレベルの非常に美味しいものが少なく、これから口腔機能が衰えても食という楽しみを継続できるような開発が期待されます。

もう一つの方向性というのは調理時間の短縮です。

人手不足の中、いかに美味しい食事を安全に提供できるかというところで現在多くがセントラルキッチン方式を採用していますが、こちらにも多種多様な食品企業の参入が期待されます。
飲食のチェーン店などでもセントラルキッチンを採用しているところが多いですが、これが介護福祉方面で様々な分野の料理にコラボ参入などによって展開されると、高齢者の食の喜びは今より格段に選択肢が増え、QOLももっと上がるのではないかと思います。

冷凍技術がかなり発展しているのでこの辺りもこれからますます変わってくることを期待しています。

狙いを定めてまっすぐ帰ってくれば疲れは最小限ですが、せっかく展示会に行かれるのでしたら、ここで最後に一例として挙げている「介護ロボット」と「介護食」のジャンルも少しだけ覗いてみてはいかがでしょうか。

以上、最後は他の分野に脱線しましたが、介護分野、特に介護ソフト分野での展示会のコツを確認してきました。

介護ソフトは請求・記録・帳票と機能に予想が付きますが、介護ロボットは毎年進化しているので、例えば介護ソフトと連動することで予想外の未来の介護が見えるかもしれません。

この記事が、これから介護のICT化に向けて、介護ソフトを比較検討する方の参考になれば幸いです。

著者プロフィール

上尾 佳子

合同会社ユー・ラボ 代表
WACA上級ウェブ解析士
愛知県出身

バブル期に大手通信企業に入社し、通信システムの法人営業を経験。
1990年代、インターネット検索ビジネスを手がける新規事業部に移り、ポータルサイト運営に関わる。以後20年間一貫して、データを活用したマーケティング支援に携わる
2011年IoTスタートアップに合流、介護福祉用具カタログをデジタル化するアプリをきっかけに介護業界について知見を深め、2014年独立。
家族の遠隔介護をきっかけに、中小企業へのデータ活用したデジタルマーケティング支援を行うかたわら、介護サービス利用者家族という視点で情報発信を行っている。現在介護関係のサービスを運営中。

介護のDX化、ICT化について考えるサイト「介護運営TalkRoom」

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