3月になり、春らしくなってきました。

外出環境もだんだん良くなり、毎週「レクリエーションどうしようかな~」と悩んでおられる方も多いと思います。

高齢者の方に喜んでいただけるようなレクリエーション、通称・レクを考えるのって実はすごく難しいです。

利用者様の脳トレや認知症の予防に少しでも役立つこと。そして、出来るだけ季節を感じるようなことも楽しんでもらいたい、例えば今でしたら春のレクリエーションゲームをやりたいと思っても、毎年やってるとネタが尽きてしまいます。

そんな担当者様のお悩みを少しでも解決すべく、今回は「春」に参考になりそうなレクリエーションのアイデアをまとめてみました。

ここでは、実際に楽しんでいることがわかるような動画も多々簡単にみつかるレクリエーションと、利用者様の参加が多い「参加型」のレクを中心にまとめてみました。

ただし「春」と一口に言っても日本の北と南とでは気候がだいぶ違います。

2月は梅が満開の地域もあれば、全く咲いていない地域もあります。福寿草がいつ開花するのかも地域によって全く異なっているでしょう。
4月から5月は北海道や東北地方では、まだ肌寒く桜の開花もまだのところがありますが、九州では5月になると半袖Tシャツで雰囲気はもう夏です。

ですので、ここで季節「春」のイベントと言ってもご覧になっている地域では季節がそぐわないかもしれません。

ここでは日本の南北を考えて、2月から5月(旧暦4月頃)までの季節を感じられるレクリエーションというのを月毎に追いかけてみたいと思います。

【2月のレクリエーション】

地域によっては寒さがピークに達します。レクも室内が中心の時期です。インフルエンザや風邪なども流行のピークです。レクを実施する側も感染対策に気をつけましょう。手指消毒、室内の乾燥などには十分に気をつけましょう。

「節分」

節分といえば豆まきと鬼退治。豆まきと鬼退治動画は各地域、多種多様に公開されているものがありました。

普通に豆をまいていたんじゃ運動にならないので豆まきを上手に運動になるように皆様工夫されています。

「鬼退治」にはいろんなやり方があるようです。例えば鬼に見立てたペットボトルを、ボーリングみたいにマメをぶつけて物理的に倒すというレクリエーションがありました。

まず殻付きの落花生を袋ごと買ってきます。これを2つずつラップで包んで大きな豆を作ります。ちょうど手のひらで握れるサイズになります。

落花生写真

この“ラップで包んだ豆”も参加する高齢者の方が手伝って作ります。

この豆を1人2つずつ持って、ターゲットになる鬼に見立てたペットボトルに投げて倒すという簡単なゲームです。

ペットボトルに当てればいいだけだし、距離は近いので座ったままで投げることができますから車椅子の方も参加できます。

最初は照れていた方達、まあまあいい加減にやっていた方達でもだんだん熱が入ってきます。

また“投げる”という動作も普段やらないこと動作ですし、増してや“ぶつける“となるとストレス解消には効果的なのかもしれません。

最初は遠巻きに見ていた男性陣も後半はしっかり参加してペットボトルを全て倒していました。

【3月のレクリエーション】

3月は少し暖かくなってきますので外出を楽しむ機会が増えてきます。しかし、寒暖の差が大きい季節でもあります。比較的暖かい地域でも屋外でレクをする時には上着を1枚持っていくことを忘れない方がいいでしょう。もちろん北国ではまだ防寒着必須ですし朝晩5℃ないのも当然の時期です。また、3月は北海道以外は杉花粉のピーク。花粉症対策のマスクやメガネ、ティッシュは必需品です。

「ひなまつり」

ひな祭りと言うと豪華なちらし寿司とかお食事などを楽しむ施設もあるようですが、自分たちで作って食べる料理のイベントが盛り上がっています。

人気のあるのは桜餅を手作りするイベント。

さくらの葉の香りがとても良いですし、桜餅のサイズも作る人によってバラバラというところも手作り感があっていいですね。

桜餅も関西風と関東風があって、薄いさくら生地で餡をくるむタイプは関東風です。ホットプレートで焼くだけなので、これは安全で簡単です。座って調理できるので車椅子の方も参加できます。

作る人だけでなく男性陣も食べることで参加できるので、イベントとして男女関係なく皆様で楽しむことができるのではないでしょうか。

桜餅写真

【4月のレクリエーション】

4月といえば何と言ってもお花見。お花が楽しめる時期は暖かい地域や桜の種類の少ない地域ですと1週間ぐらいしかないのでやはり特別なイベントです。
最近では3月に散ってしまう地域もありますが、温暖化を抜きに考えますと、4月は全国的には桜前線のニュースが重大です。

お花見の時の重大ポイントは何と言っても駐車場とトイレの確保です。また車椅子での移動が前提ですので、道路状況や段差の有無などは事前に現地調査が必須です。トイレも座ってする便座のある安全なトイレと言うと数がかなり限られます。楽しい花見の成功は下準備にかかっています。

「お花見」

一年に一度、日本人が最も愛する花「桜」のイベントなので、全国津々浦々、皆様色々工夫を凝らしていらっしゃる傾向があります。

トイレと駐車場の確保、これはもう大前提ですが、「どうせ出かけるのなら!」と色々なイベントと組み合わせてやっておられます。

桜のフォトコンテストというのも一つのイベントでしょう。お出かけして思い思いに写真を撮りたいという方も多いと思います。最近はガラケーではなくスマホを使って写真を撮る利用者様も見かけるようになりました。

またスケッチブックと水彩絵の具でゆったりとスケッチを楽しむというのも素敵な時間の使い方だと思います。

宴会(勿論アルコールは抜きです)として会場においてその場で全員が盛り上がれるものとしてはビンゴ大会があります。これはスマホを持っていなくても絵が書けなくても楽しめるので良いのではないでしょうか。

また、お花見に出かけられない利用者様の方がいる施設等では、職員の方と利用者様の方が協力してお花見弁当を手作りして楽しむ施設も多いです。

座ったまま手を動かすだけでできるお料理は、手先を動かすことから脳トレにもつながります。チラシ寿司、三色団子等のレシピは動画で探せばたくさんのパターンが出てきます。施設に応じてこれならできる!というのも見つけやすいと思います。

チラシ寿司は、材料を切って混ぜるだけですし、三色団子も電子レンジでチンすればできるので、あとは形を整えるだけで簡単にできます。

三色団子写真

料理イベントの場合、室内ではサクラやお花を沢山飾って、季節が変化を楽しみましょう。

忘れがちなのは水分補給。4月は案外乾燥しているものです。お茶やお水などを忘れずに。

「コンサート」

暖かくなるとコンサートなどのイベントを開催しても楽しい季節となります。定期的に毎月やっておられるところもありますが、外を見た時に気分のいい春と秋だけという施設など色々な形があります。

施設内に楽器を持ち込めたり、アンプなどの音響機器をもっていたりして屋内の集合できる場所でコンサートをされるところがほとんどですが、天気の良い日に駐車場などオープンなところで青空コンサートをやっておられるところもあります。

そのような場合、地域の方たちや、利用者様の家族の方も参加して青空の下、一緒にコンサートを楽しむというような形で地域イベントとして盛り上がっていました。

室内でコンサートという時も、クラシック音楽やバイオリンの演奏・お琴など、いろいろな楽器やジャンルのバラエティがあります。ここも、会場ではお部屋の中にお花を飾ったり季節感を演出したりするとやはり盛り上がります。

お琴写真

またこれはコロナ禍を経て、最近ではオンラインでコンサートも増えてきました。

春ではありませんが、どうしてもここで言及させていただきたいのでご紹介するのですが、2023年6月には八代亜紀さんが演歌で介護施設だけに無料でYouTube配信をするというコンサートもありました。八代亜紀さんの心意気を感じる素晴らしい企画です。

無料コンサートと圧倒的な知名度と人気もあって2000施設以上が楽しんだそうです。
八代亜紀さんが亡くなってしまって、今後八代亜紀さんの新しい配信は無くなってしまうと思うと悲しいですが、このような機会を提供されるシンガーの方がいらっしゃれば、是非こういったイベントへの参加も考えるのも素敵ですね。

コンサートイベントは、男女問わず、体が動かない人も参加できます。しかし、普段カラオケは歌わないし、内心うるさいと思って苦手意識をもっている人も、音楽は静かに楽しみたいと思っておられる方もいます。施設内の方のご希望を考えつつも、全員が楽しめる可能性も高いコンサートは一つ選択肢には欲しいところです。

【5月のレクリエーション】

5月は本来、風も爽やかで外に出るのが気持ちの良い季節。しかし最近は5月になるともう夏で昨年は最高気温が30℃を超えたところもあります。一気に気温が上がってきて熱中症になる方も出てきます。定期的な水分補給を心がけましょう。さすがに5月にもなれば青森県の弘前城の花筏も終わってしまいますが、実は北海道では上旬に桜がやっと見ごろです。

「お茶会」

5月は新茶の季節。八十八夜なんていうぐらいでこの歌を聴くと昔を懐かしく思い出す方も多いと思います。新茶の季節でお茶の香りも素晴らしいのでお茶会を催してはいかがでしょうか。

本格的にお抹茶を立てて普段とは違うお茶菓子を楽しむというのもありです。お茶菓子も手作りで、どら焼きを参加者で作って1日イベントとして開催している施設もあります。

普段お抹茶をいただくという機会も少なくなってきているので、本格的なお抹茶をいただくイベントは喜んでいただけるのではないかと思います。

「ガーデニング」

もし施設にちょっとしたお庭があれば、5月は菜園の植え付けに最適な季節。

この時期に植えておけば、トマトやサツマイモ、枝豆などの野菜を夏から秋にかけて収穫できます。

ガーデニングがレクリエーションとしていいのは、植え付ける時もイベントですが収穫して食べるという楽しみもイベントになる事です。

また日々植物は育って大きくなります。外出の機会が限られる利用者様の方にとっては、自分が植えた苗が生き生きと育って実がつくのを日々見守るのは楽しいことです。庭の雑草取りや手入れは心の張り合いになりますので、利用者様でお手伝いできる状態の方がいらっしゃらない場合は職員様の踏ん張りどころかもしれません。

芋堀り写真

動物や鳥を飼うのと違い、植物は騒音もなく手間もかかりません。季節の移り変わりが楽しめますし、地味ですがお薦めレクです。

【春と言えどまだまだ寒い、室内お勧めレク】

今回は春ということでまとめましたが、イベントを単独で開催するのではなく、イベント内にプログラムを持たせるともっと盛り上がります。利用者様の疲労がどの程度かと言うところもありますが、組み合わせとして以下のレクもお考えになってもいいかもしれません。

「ホワイトボードレクリエーション」

室内でできるレクリエーションで、最近人気なのがホワイトボードレクリエーション。

ホワイトボードを使った全員参加のクイズみたいなものですね。

ホワイトボードを見ながら全員で同じ絵やイメージを共有できるので、クイズ一つやるのでも盛り上がります。

大人向けにおすすめなのが【都道府県クイズ】。

まずホワイトボードに手書きでどんなどこの県でもいいので県の形を書きましょう。
北海道の形をざっくりと書きます。少々下手でもご愛敬。これでクイズのスタートです。

どこの県の形かクイズで当ててもらったら、その県の名産品や観光地美味しい食べ物などのクイズができます。

この都道府県クイズのいいところは、参加されている利用者様の中には、その地域に行ったことがある人が一人二人は居て、ものすごく物を知っている人もいるわけです。話す方も、自分の地元の県が出てきたらやっぱり嬉しいですよね。普段自分から話をしない方でも、人前で会話をするきっかけになることです。

自分は住んだことはなくとも親戚がそのエリアに県に住んでいるという場合もあります。いとこは今どうしているかなという思い出や回想ということにもつながります。

高齢者に限らず、子供から大人まで楽しめる都道府県クイズは端午の節句などのお孫さんとのふれあいイベントがあった場合などにも使えるネタです。

「ボール落としゲーム」

ダンボールの真ん中に穴を開けそこにボールを落とすという、これもたわいのない簡単なゲームです。

このダンボールを一人で持っていては面白くもないので、4~5人もしくは7~8人で輪になって段ボールを全員で持ってダンボールの角度や傾きを変えて真ん中のボールを落とすのです。

このゲームは座っていてもできるので、脚が不自由な方や、片手に麻痺が残る人でも参加できるのが大きなメリットです。

これをダンボールではなくレジャーシートにしてもっと難易度を高くして楽しんでおられるデイサービスもありました。

レジャーシートの端を持つ人は7~8人はいました。輪になった参加者がお互いに顔を見て気持ちを合わせていかないとボールがなかなか落ちないのでとても盛り上がっていました。

【まとめ】

以上、すこしブレることもありましたが「春」ということにちなんだレクリエーションをまとめてみました。

やはり柏餅でも桜餅でもお寿司でも、調理して全員で食べるという料理イベントはどの地域でも男性女性ともに参加できるため、鉄板です。

またコンサートや外出イベントなどもご家族や地域の人たちを巻き込んでやっている施設は開かれた印象で好印象です。

様々なレク動画を見ていて感じたのは、施設の人が全部準備して利用者様の方をもてなすという形よりも、利用者様の方が協力して準備まで手伝っているとより盛り上がるということです。レクをする施設の職員の方と、参加する人も一緒になってイベントを作ることで一層盛り上がっておられた姿は印象的でした。

レクを考えて実行される職員の方は大変ですが、ぜひ参加者の方が準備から楽しめるイベントへの挑戦もご検討ください。

以上、悩める施設様の何かのご参考になれば幸いです。

著者プロフィール

上尾 佳子

合同会社ユー・ラボ 代表
WACA上級ウェブ解析士
愛知県出身

バブル期に大手通信企業に入社し、通信システムの法人営業を経験。
1990年代、インターネット検索ビジネスを手がける新規事業部に移り、ポータルサイト運営に関わる。以後20年間一貫して、データを活用したマーケティング支援に携わる
2011年IoTスタートアップに合流、介護福祉用具カタログをデジタル化するアプリをきっかけに介護業界について知見を深め、2014年独立。
家族の遠隔介護をきっかけに、中小企業へのデータ活用したデジタルマーケティング支援を行うかたわら、介護サービス利用者家族という視点で情報発信を行っている。現在介護関係で2つのサービスを運営中。

介護業界向けカタログアプリ「介護のカタログ」
介護のDX化、ICT化について考えるサイト「介護運営TalkRoom」

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