介護に向き合う介護サービス利用者のご家族にとって、良いデイサービスを探すというのは、死活問題です。
利用者様ご本人が喜んで行ってくれるデイサービスでないと、自分の時間が確保できず、仕事や家事など生活全てに影響が及びます。
そして、デイサービスを経営されている方にとっても、運営するデイサービスを人気のデイサービスにすることは、経営の安定のための命題で、利用者確保と稼働率をアップすることは大きな課題です。
しかし、正直、デイサービスで提供されるプログラムは、どこもあまり変わりないように見えます。書道やお花や切り絵等はどこでもやっています。
デイサービスの人気を高めるにはどうすれば良いのでしょうか。人気のあるデイサービスの条件、それは一体何なのでしょうか。
ネットや雑誌等で「人気のあるデイサービス」をいろいろ調べる中で、その共通項とも言えるものがあることに気付きました。
あくまでもインターネットからの情報であるという前提に、ご参考にしていただければ幸いです。
【参加型である】
「社会参加」
利用者自らが働くタイプのデイサービスもあります。地域やコミュニティの役に立つサービスの主旨に賛成して、参加をするという形です。
実際に何をやるかと言うと、洗車、庭木の剪定、ポスティングなど地域で求められているちょっとした仕事のお手伝いです。
デイサービスの利用者は自分ができそうな活動を選んで参加します。
デイサービスの役割は2つ。「地域で求められている仕事とデイサービスの利用者のマッチング」と「利用者が活動するときの支援」です。
この社会参加型のデイサービスの素晴らしいところは、参加者が活動の主役になっているところです。これは高齢者のプライド、特に男性利用者のプライドを保つことができるという意味は大きいです。
男性の場合、会社を退職後に自治会や老人会に積極的に参加する男性高齢者はごくわずかです。社会と切り離されてしまうことで家に引きこもりがちになり、認知症が進んでしまうリスクが高まります。
社会でまだ役に立てるということが、高齢者の気持ちの張りにつながったり、やりがいにつながったりします。同時に共通の目的を持って集まっている人たちですから、自然に仲間ができてゆきます。このような社会参加型のデイサービスであれば、意義を感じて参加したくなる人は多いのではないかと思います。
「ゲーム参加」
こちらも同じ参加型でも、楽しんでゲームに参加しようというタイプのデイサービスです。
麻雀、囲碁将棋、トランプ等全て対戦相手が必要です。
ルーレットやカジノ等も、複数人が参加する場が立っていれば俄然面白くなります。
最近は、卓球等もデイサービスでやっているところがあるそうです。
デイサービスの施設内のみで使える通貨が発行されていて、その通貨を使ってカジノやルーレットができるようなデイサービスまであります。
高齢者でなくても、覗いてみたくなる娯楽要素の強いゲーム参加型のデイサービスは、当然人気が出ると思います。
「スクール参加」
同じ参加型でもスクールタイプのものも人気です。一人暮らしになって、やっと自分の時間ができた、一からいろんなことを学びたいと思っている人は多いのです。「学び」には根強い人気があります。
大人向けに昔あった学校の教科をやり直すスクールや、音楽等を学ぶスクールなどもあります。教えてくれと頼む人がいないという高齢者には、パソコンやスマホ教室なども人気があります。
「外出参加」
デイサービスの外出は、遠方への旅行ではなく、ショッピングや外食に出かけるなどの身近な外出です。しかし、こういった些細なこと、自由にショッピングや外食に出かけるというデイサービスも実は人気があります。
足が不自由になった、一人で複雑な駅の乗り換えができなくなった等の理由で、一人で外出ができない、という不便さを覚えている高齢者の方が実は多いのだと思います
ちょっとしたお花見や、街中で新しくできたお店に行きたいという希望を皆さん持っているのだと思います。
【フィードバック型】
ここで言うフィードバックとは、利用者がデイサービスで活動した結果、何かが変わったとか、結果が見えるような形で利用者本人がわかるようになっていることです。
結果があるからこそ頑張れるという面から考えると、様々な工夫により明確なフィードバックを得られる「フィードバック型」は継続する動機としては強いものになります。
「リハビリ特化型」
リハビリ特化型はフィードバックが見える典型的なデイサービスでしょう。
リハビリ特化型のデイサービスに参加されるような方は、自分の体力維持、自立のためという目的意識のある方が多いです。
リハビリをやった結果、足腰が強くなったり、歩行速度が速くなったりという効果が出れば、利用者様の生活の大きな改善に繋がります。
すぐに効果がでなくとも、定期的に体力や歩行速度を計測して、数字で表現してもらえれば本人もよりやる気が出ますし、また継続することへの励みにもなります。
「農作業型」
植物を植えて育てる農作業型のデイサービスも、活動結果がはっきりとわかり、本人の関わる意欲や、やる気を引き出しやすいです。
季節の移り変わりが楽しめますし、動物を飼育するほど手間がかかりません。
さつまいも等簡単に畑で収穫を楽しめるものから、レタス等の葉物の水耕栽培に挑戦されたり、いろいろな事業所が様々な植物を育ててらっしゃったりします。当社がお付き合いのある事業所様でも、花を楽しめる植物を育てておられます。
収穫を楽しめる植物は、育てた後に料理等のイベントにも使えます。まさに一石二鳥と言えるでしょう。
「料理型」
料理というのも、行動に移した結果が、すぐに結果として見える活動です。
料理は、材料を揃えて、切って、煮炊きをして、という一連のプロセスを段取りして、手を動かさないと完成しないので、自然に認知症対策にもなります。
しかも、みんなで集まって料理して、食べればやはり楽しいものです。一人暮らしの高齢者の方にとっては一食になるわけで、経済的でもあります。
【自己決定型】
「高齢者」とは一体何歳からを指すのでしょうか?
70歳の方にアンケートを取ったところ、「80歳以上」と回答したという冗談のようなデータを見たことがあります。
つまり、人はいくつになっても自分のことを「高齢者」とは思いたくないのです。ですから、周囲の家族から「デイサービスに行っては?」と進められても喜んで行くような人はまずいないと思います。
現実として、デイサービスというところは、やりたくもない決まりきったお遊戯や音楽を、他人に合わせてさせられるところというイメージが染みついてしまっている高齢者も多くいらっしゃいます。
特に高齢者の男性にはそういう思い込みを持っている傾向がありますから、デイサービスに通うことを説得すること自体も一苦労です。
デイサービスには自分で決められる「自由」がない。
自分で好きなようにプログラムを組めない、食事1つするにも自分の好きな時間に食べることができない、こんな不自由なイメージを持っている方が多いです。
ところが、人気のあるデイサービスを見てみますと、このネガティブな面を覆すように、利用者様ご自身で様々なことを決めてもらう機会を増やしています。
もちろん、自分で決めるとは言っても、ランチは2種類のうち好きな方を選ぶとか、やりたいアクティビティを選ぶ、リハビリをする時間を選ぶ、など制限がある中での選択ではあります。
しかし、自分が選択できるということ自体が、高齢者にとっては嬉しいことで、それが選ばれるキーポイントなのです。
大規模なデイサービスの中では、施設内でのみ使える疑似通貨を発行して、アクティビティやリハビリに参加し、参加報酬として疑似通貨を貯めることができたり、ためた通貨を施設内で自由に使っておやつや好きな物を買える、というようなことまでやっているところもあります。
自分で選択できること。
当たり前のようなことですが、高齢者にとっては自分を尊重してもらっているという感覚が生まれることは、とても大事なことなのだと思います。
【設備が充実している】
設備と言っても豪華な玄関や華美なインテリアが必要なわけではありません。
高齢者にとって人気の設備は、ずばり大きなお風呂とマッサージチェアです。
このお風呂が天然温泉であれば言うことはありません。
高齢者にとってお風呂の掃除ということ自体が負担です。ですから、自宅でお風呂があってもお湯を張って入浴するということが億劫なので、お湯に浸かる機会がどうしても減ってしまいます。
大きなお風呂で体を温めることは、誰にとっても気持ちのいいものです。
また、どのお風呂屋さんに行ってもマッサージチェアが置いてあります。マッサージチェアは本格的なものは高額なので、自宅に置けない高齢者の方にとっては極上の癒しタイムになります。
マッサージチェアが1つあれは、デイサービスに行ったついでに、というプラスの動機付けになります。
【発信力がある】
最後になりますが、人気のあるデイサービスというのは発信力があると思います。
発信力と言っても大げさなものではなくて、日常的に使うSNSやホームページのブログなどを使って、自分たちの事業所の様子をそのまま伝える活動を地道にやっているというだけのことです。
日常の予想外のハプニングや嬉しかったこと、デイサービスでこういうイベントをした、利用者さんに喜ばれたこと等など、内容はちょっとしたことでよいのです。
近隣の方々に向けての情報発信を意識して、ハッシュタグをつけたりグループに投稿したりしてSNSでこまめに情報を発信すると、地域での認知度は少しずつ向上します。
どんなSNSでもブログでも良いので、自分たちのリアルな姿を伝え続けることが大事です。
細かな継続の積み重ねは、いつか大きな反響になって帰ってきます。
【まとめ】
こうしてみると、最後の設備の充実というのはハードウェア面でのことですが、残りのポイントは全て、ソフト面や運営面に関することばかりです。
特にご紹介した参加型、自己決定型、フィードバック型は、利用者様の方の心の持ち方、尊厳など心理面に関係したデリケートなサービスです。
デイサービスのプログラムや道具立てなどは、日本全国それほど変わるものではないということなんだと思います。
そういった道具立てやプログラムを、どういう形で提供するのかというアイデアやノウハウ、知恵が問われているのだと思います。
ただ、こういった利用者様の方の気持ちや参加意識を刺激するような素晴らしいデイサービスが増えてきているのは希望が持てます。
デイサービスでの活動やリハビリ運動を通じて、高齢者がいつまでも人や地域とつながっていられるような社会になってほしいと思います。
※介護保険制度の詳細については各自治体の介護保険制度の担当窓口にお問合せください。
上尾 佳子
合同会社ユー・ラボ 代表
WACA上級ウェブ解析士
愛知県出身
バブル期に大手通信企業に入社し、通信システムの法人営業を経験。
1990年代、インターネット検索ビジネスを手がける新規事業部に移り、ポータルサイト運営に関わる。以後20年間一貫して、データを活用したマーケティング支援に携わる
2011年IoTスタートアップに合流、介護福祉用具カタログをデジタル化するアプリをきっかけに介護業界について知見を深め、2014年独立。
家族の遠隔介護をきっかけに、中小企業へのデータ活用したデジタルマーケティング支援を行うかたわら、介護サービス利用者家族という視点で情報発信を行っている。現在介護関係のサービスを運営中。