介護事業者にとって必要な書類や報酬に関する書類の管理が行える介護ソフト。導入する目的はズバリ、業務効率の大幅な向上です。
特に事務面での効率の向上は、常にケアで忙しい介護現場では必須事項です。昔は全て物理的人的な作業が必要だったことが、機械によって一瞬で処理できることも多くあります。
介護ソフトを検討しなければならない…わざわざ何でそんなものに貴重な運営資金をかける必要があるのだろうという疑問について、以下で解説いたします。

【介護報酬と請求ソフト】

適切な介護サービスを提供されることは介護サービスの利用者様また、そのご家族にとっては大変重大な問題です。適切な介護サービスの提供を受けるためには、介護サービス提供者が介護報酬を的確に受領することで切れ目ないサービスの提供を行うことが重要です。

介護事業者は的確に介護報酬を受領することで、単にサービスを継続していくだけでなく、介護報酬の制度自体がケアの向上を追求し、介護現場でのよりよい環境を提供できる様に構成されているために時代に沿った介護サービスを継続・発展していくことができます。

つまり、介護サービス提供者が的確に介護報酬を受領することは、ひいては利用者様とご家族の為になります。ケアの向上を願うのであれば、介護サービスを提供する側は適正な金額を国保連に請求することが必要です。

適正な金額とは、介護報酬の制度に則った請求金額に他なりません。日本の介護制度の歴史の中で国や有識者や現場が話し合いを重ね、3年に1度、国の報酬改定を行い時代に合った適正な金額を定めています。

介護報酬は算定が複雑なため、介護保険請求ソフトを利用します。介護保険請求ソフトは、手計算よりも迅速に、また正確性をもって現場の担当者がなるべく簡単に操作を行えるようにします。複雑に定められた介護報酬を介護サービス提供側が的確に受けられやすいように工夫を重ねたシステムです。

【介護請求ソフトと伝送ソフト】

介護報酬を国保連合会から正確に受領するために必要なものとして、「介護保険請求ソフト」とそのソフトでまとめた介護保険請求情報を国保連合会に送るための「伝送ソフト」が上げられます。

「介護保険請求ソフト」には、
・利用者様の情報管理機能
・介護サービスの種類や提供時間及び利用者人数などを正確に入力できる機能
・誤請求の防止や修正を簡単に行える機能
・法令や規則に従った請求書の作成ができる機能
・請求書の作成から送信までの流れを効率的に行える機能
が備えてあります。

「伝送ソフト」には、
・介護保険請求データを国保連合会に確実に送付する機能(インターネット伝送機能)
があります。

この2つのソフトウェアですが、分けて持つこともできますが、「介護保険請求ソフト」の製品によっては「伝送ソフト」の機能まで兼ね備えているものもあります。
介護ソフトの製品を検討する際には、ソフトの内訳や詳細を確認し、契約内容に2つの要素が入っているか確認する必要があります。

【無料のソフトは存在する?】

無料で介護報酬の請求がずっとできるソフトは現状存在しません。
国保連合会で提供している介護保険請求ソフトでも利用料が発生します。
時代に合わせた制度として介護保険制度は3年に1度大きな改定が入り、改正に対応する必要があるなど、介護請求ソフトは一回作ってしまえば終わりではなく、その後の維持や管理、開発、最新の状態に保つことに多くの資金が必要です。また、開発した責任を全うするために、使用する人に対してサポートをしつづけることが必要です。

無料で請求に利用することはできませんが、無料で操作性を試せるソフトは複数存在します。
なぜかというと、システムには相性が存在するからです。
導入コスト面を加味した上で介護事業所・施設の業務効率により寄与するソフトをご選択いただく事がおすすめです。

高額で様々な機能がついて痒い所に手が届くように各事業所の状況に応じて作り変えられるようなソフトもあれば、少額で最低限度の機能しかなく使うのも多少不便というものも存在します。

そして事業所内でシステムを使う人によって使った印象が異なることもあります。また、ICT化が叫ばれる現在、どんなICT機器を現場で使用するかによっても各メーカーの製品の対応機器(パソコン、タブレット、スマホなど)や特長と合わせて検討が必要になります。

現場ではどんなシステムが最低限必要なのか、ということに加えて今後は何を効率化するといいのかを、現在と未来の軸両方で実際の現場のルーティンや設備・配置に置き換えつつ、
実際に操作を体験して検討することが重要です。

【なぜ介護ソフトの導入で未来のことを考える必要があるのか?】

今、介護業界は人材不足で困っています。
しかし、これは介護業界だけなのでしょうか。

実は違います。介護業界は今現在、成長市場でありもう少し伸びる予測があります。
つまり、市場としては拡大していて人が追い付いていません。しかし、他の業界を見回すと拡大していないにも関わらず人材不足の業界もあります。

実は人材不足は見えやすいところから見えている日本全体の問題です。その根底にあるのが、出生率の低下で、労働人口の減少です。日本の人口の年代別の人口は逆ピラミッドであり、高齢者が多く若者が少ない状況です。今後若者が増える見込も現時点では何もありません。労働力人口は15~64歳で見ると、総務省統計局の統計では2021~2022年で6万人減少しています。
介護業界は人口減でそのまま規模が縮小している国内の他の業界と違い、今現在もどんどん拡大しており、このままでは2040年には69万人の介護職員が不足すると言われています。つまり、同じ仕事を同じ人数で同じやり方で回し続けることが難しいということを意味します。
現時点でも人材不足に困っている介護事業所は多いですが、今後はさらにその状況が加速するとみて間違いありません。働ける人がいないのですから…

では、どうやって人材不足を解消するかというと、人でダメなら機械をということになります。しかし、ご存知の通り、介護職は機械ではどうにもならないことが多い仕事です。全てを機械化することは不可能な業種です。せめてできる所から機械化していこうというのが、最近多く聞かれる介護のICT化です。

ICT化は現時点では事務作業こそ効果を最も発揮します。最初に効率化すべきなのは事務作業であり、また、ICTによって事務作業のようなやりやすい物理的障壁からいかに業務を減らしていけるかが未来を考える上で重要です。

前出で、介護ソフトの導入を考える際には、「現場ではどんなシステムが最低限必要なのか、ということに加えて今後は何を効率化するといいのかを、現在と未来の軸両方で実際の現場のルーティンや設備・配置に置き換えつつ、実際に操作を体験して検討することが重要です。」とつづらせていただきましたが、介護ソフトの導入は効率向上の突破口になり得ます。
介護ソフトを導入して、請求以外の業務も効率化した例はあまたに存在します。
是非、未来の事業所の姿を思い描く際には、システム導入の優先順位をあげていただければと思います。

余談ですが、今の若者(生年が西暦1981~は特に)は生まれながらにしてパソコンなどの電算機器の整った時代を生きています。全ての効率が改善する機械に対し、抵抗のある人はあまりいません。共通価値観として未成年時代に携帯電話やスマホといった機器を利用しながら生きてきました。最初から機械がある程度、物理的障壁を効率化してきた時代を生きてきたのです。また機械に人格も求めていません。ただコストに見合って便利で効率が良いこと、これからの人材はそういった見方で介護ソフトを評価していきます。もしかしたら職場の選び方もそうなのかもしれません。淘汰は自然に起こることは歴史が示します。コストに見合って便利で効率が良いということを、今までは経営側から人材側に対して求められてきましたが、今後は労働者側から見た場合も同じと思ってよいでしょう。

※日本の将来推計人口は2022年では日本人の平均年齢は約48歳と予測されており、それを元に若者という表現を使用しています。

最後までお読みいただきありがとうございました。