同一建物減算(集合住宅減算)は、介護保険給付の公平性を確保する目的から、事業所と同一の建物等に居住する利用者への訪問系サービス、通所系サービスなどの提供において、適正化を勘案した減算です。2024年度の介護報酬改定により訪問介護においてより強化され、居宅介護支援事業所にも新たに創設されました。

2024年の改正を反映した算定要件は以下になります。

【同一建物とは】

(1)訪問系サービス「同一敷地内建物等」の定義

・事業所と構造上または外形上、一体的な建築物
・同一敷地内、隣接する敷地にある建築物のうち効率的なサービス提供が可能な建物※同一敷地内の別棟の建物、幅員の狭い道路を挟んで隣接する場合も含みます。

(2)通所系サービス「同一建物」の定義

・事業所と構造上または外形上、一体的な建築物
例えば、同じ建物の別のフロアに事業所がある場合や渡り廊下などで繋がっている建物が該当します。尚、同一敷地内の別棟の建物や隣接する敷地内に所在する建物は減算の対象になりません。

【同一建物減算の対象介護サービス】

・訪問介護
・(介護予防)訪問入浴介護
・(介護予防)訪問看護
・(介護予防)訪問リハビリテーション
・定期巡回・随時対応型訪問介護看護
・夜間対応型訪問介護
・通所介護
・(介護予防)通所リハビリテーション
・地域密着型通所介護
・(介護予防)認知症対応型通所介護
・居宅介護支援事業所 ※2024年度、新設

【同一建物減算の算定要件】

・訪問系サービス

以下のいずれかに該当した場合、減算を行うことになります。

①事業所と同一敷地内建物等に居住する利用者にサービスを提供した場合(③及び④に該当する場合を除く)
②上記①以外の建物に居住する利用者にサービスを提供した場合(当該建物に居住する利用者の人数が1月あたり20人以上の場合)
③上記①の建物のうち、当該建物に居住する利用者の人数が、1月あたり50人。

※新設:訪問介護のみ

④正当な理由なく、事業所において、前6月間に提供した訪問介護サービスの提供総数のうち、事業所と同一敷地内又は隣接する敷地内に所在する建物に居住する者(3)に該当する場合を除く)に提供されたものの占める割合が100分の90以上である場合

・通所系サービス

以下のいずれかに該当した場合、減算を行うことになります。

・事業所と同一建物等に居住する利用者にサービスを提供した場合
・事業所と同一建物から通所する利用者にサービスを提供した場合

【同一建物減算 種類と単位数】

・訪問系サービス

介護サービス
種別
訪問介護(介護予防)訪問入浴介護、(介護予防)訪問看護、(介護予防)訪問リハビリテーション、夜間対応型訪問介護定期巡回・随時対応型訪問介護看護
①同一敷地内建物の居住者
(②及び③に該当する場合を除く。)
10%減算10%減算ー600単位/月
②同一建物に利用者20人以上/月10%減算10%減算ー600単位/月
③同一敷地内建物の利用者50人以上/月15%減算15%減算ー900単位/月
【新設】
④正当な理由なく、事業所において、前6月間に提供した訪問介護サービスの提供総数のうち、事業所と同一敷地内又は隣接する敷地内に所在する建物に居住する者(③に該当する場合を除く)に提供されたものの占める割合が100分の90以上である場合
12%減算--

※利用者数の条件については、事業所とサービス提供契約のある利用者のうち、該当する建物に居住する利用者の人数を指します。算定月の前月等ではなく、算定月の実績を用いて判断します。

・通所系サービス

介護サービス
種別
通所介護、通所リハビリテーション、地域密着型通所介護、(介護予防)認知症対応型通所介護介護予防通所リハビリテーション
事業所と同一建物に居住して利用する方ー94単位/日要支援1
ー376単位/月

要支援2
ー752単位/月

・居宅介護支援事業所 ※2024年度、新設

以下のいずれかに該当した場合、5%の減算を行うことになります。
・居宅介護支援事業所の所在する建物と同一の建物、同一の敷地内の建物、隣接する敷地内の建物に住む利用者
・居宅介護支援事業所の利用者が1月あたり20人以上住む建物(上記を除く)に住む利用者

【留意点】

同一建物減算を適用する際の留意点は以下となります。

・訪問系サービス

・同一建物等減算を適用する場合は、支給限度基準額の算定の際、減算前の単位数を用います。
※区分支給限度基準額を超える場合、区分支給限度基準額の超過分に同一建物減算を充てることはできません。

・月の途中に減算の適用を受ける建物に入居した、または当該施設を退居した場合、入居した日から退居した日までの間に受けたサービスが減算の対象となります。

・「同一の敷地内若しくは隣接する敷地内の建物」であっても「サービス提供の効率化につながらない場合には、減算を適用すべきではないこと」とされています。
その為、「広大な敷地に複数の建物が点在する場合」や「幹線道路や河川などにより敷地が隔てられており、横断に迂回が必要な場合」などの条件で効率的なサービス提供につながらないものについては、減算対象とはなりません。
※広大な敷地に複数の建物が点在する場合のイメージは、UR(独立行政法人都市再生機構)などの大規模団地です。

・事業所と同一建物について、その建物を運営する法人とサービス事業所の運営法人が異なる場合も、減算対象となります。

・「同一の建物に20人以上居住する建物」の20人以上とは、ひと月の利用者数の平均を用います。この平均の算出方法は、当月における1日ごとの該当する建物に居住する利用者の合計を、当月の日数で除します※。また、第1号訪問事業と一体的な運営をしている場合は、第1号訪問事業の利用者を含めて計算します。※小数点以下切り捨て

・「同一敷地内建物等」の50人以上に該当するかどうかは、ひと月の利用者数の平均を用います。この平均の算出方法は、当月における1日ごとの該当する建物に居住する利用者の合計を、当月の日数で除します※。※小数点以下切り捨て

・通所系サービス

・「事業所と同一建物等」について、その建物の管理や運営が事業所の運営法人と異なる場合であっても、減算の対象となります。

・傷病、その他やむを得ない事情により「一時的に送迎が必要であると認められる利用者」に対して送迎を行った場合は、同一建物減算の対象になりません。
※「一時的に送迎が必要であると認められる利用者」とは、建物の構造上自力での通所が困難である利用者様のことで、二人以上の介助が付いた場合に送迎を行ったことになります。
※建物の構造上自力での通所が困難とは、エレベーターの設置がなかったり故障中である場合などが該当します。

・同一建物減算は、支給限度額管理の対象外の算定項目です。

最後までお読みいただきありがとうございました。

※介護保険制度の詳細については各自治体の介護保険制度の担当窓口にお問合せください。