【社会福祉法人聖明福祉協会 様(東京都青梅市)】の事例インタビューです。
●本コーナーでは「無料もしくは低コストのITを使って、お金をかけずに介護をより良くする活動」を行っている「NPO法人タダカヨ」さんにご協力頂き、「介護ICTに関する理解」と「介護職の知見」を活かした、ケア樹ユーザーインタビューを実施して頂きました。
社会福祉法人聖明福祉協会様は、東京都で唯一の、視覚障害のある高齢者向けの特別養護老人ホームを含めた3施設を運営しています。
「明るく楽しく豊かな老後」をスローガンに掲げ、施設入所前と変わらない、その方らしい生活を継続していただける介護に取り組まれているそうです。
今回は、記録などの間接的な業務を改善をし利用者様への直接的な関わりを増やしたいという想いから、介護記録の電子化やネオスケア(介護ロボット 予測型見守り介護システム)の導入に尽力された天神様にお話を伺いました。
本日は宜しくお願いします!
ケア樹を導入されたのは4年程前との事ですが、
まず、導入前の状況を教えていただけますか。
当時は毎朝申し送りがあり、各々それまでの業務の手を止めて集合して、30分程かけて行っていました。
その内容は結局コピーをして各部署へ配布しており、結果的に得る情報が重複していたんです。
また、業務に入る前の必要な情報を得るために、各部署を回って紙の記録を見たり、現場で人を探したりと、情報収集や共有に関する無駄な時間が多いと感じていました。①業務の時間を削減する、②いつでもどこでも、最新の情報を確認できるようにしたい、という背景がありました。
デモ機使用などを天神様が中心となり進めたとの事ですが、選定についてはいかがでしたか。
ケア樹さんは初期費用も月額費用もかなり低価格で、経営層に相談する上でこれほど大きなポイントはありませんでした。経営層の1番の懸念点は、高い費用をかけて電子記録へ移行したにも関わらず、上手くいかず紙の記録に戻る可能性だったのです。
また、デモ機で使用させていただきましたが、画面が見やすくiPhoneのように直感的に入力できること、その後でPCでより詳しい内容の入力や閲覧が出来ることも決め手になりました。
苦手意識を持つ職員が多かったため、操作方法が分かりやすいケア樹は大きな魅力でした。
選択作業で入力・記録ができる事で手書きや漢字の課題をクリアできたそうです。
ケア樹は、見やすく分かりやすいデザインが好評と聞いています。とてもスムーズに導入されたのではと感じますが、課題となった事はありましたか。
スタッフが習得するまでしっかりとしたサポートが必要でした。
パッと見た感じでどこに何を入力するのかはある程度理解できるのですが、今までやってきた記録の方式があるので、はじめはどうしても混乱がありました。
その点は、以前の紙の記録とケア樹の記録を区別して伝えて、誰でも理解できるようにルールやマニュアル作りをした事で少しづつ落ち着いていきました。
スタッフの皆さんに分かりやすく伝えるために私自身が仕組みをよく理解しておく必要があって、そこはケア樹の皆さんに何度も問い合わせをして、その都度サポートしていただきました。
記録に関わる事だけではなく、幅広く調整して対応していったんですね。
はじめにお聞きした、以前の紙の記録の頃と比較するとどのような成果がありましたか。
最終的に朝夕の申し送りをなくして、 ケア樹だけ見れば必要な情報が確認できるようになりました。
導入前は電子記録への移行についてほとんどのスタッフが反対という状況だったのですが、申し送りをなくす事ができた後のアンケートでは、98%のスタッフが「以前の申し送りは不要、戻りたくない」と回答するいう結果になりました。
申し送りをはじめとした、情報共有についての時間の節約がかなり行えたので、以前は発生した残業も減らす事ができ、定時で退勤できることが多くなりました。
アンケート、素晴らしい結果ですね!
慣れない間は大変でも、記録や情報共有にかける時間を大幅に削減できた事が大きいですね。
他にはどのような時に成果を感じられましたか?
お話しきれないくらいありますが、やはり大きな体験としては新型コロナのクラスターです。
感染区域にiPadを持ち込めば、ケア記録の確認や入力を行うことができ、安全区域との情報共有が出来ます。紙では出来ない事のため、電子化のメリットをスタッフが強く感じていました。
感染症については今後も常に起こり得る事なので、導入をしておいて本当によかったと思います。
寿荘様は3年前から、ケア樹とネオスケア(予測型見守り介護ロボット)を連携させて活用されているんですよね。
その辺りの背景も教えていただけますか?
それまでの対策は、巡回などスタッフが直接目で見るという形でしたが、夜間帯などどうしてもマンパワー不足になる時の課題があり、補助金などの情報収集から導入に向けてスタートしました。
離れた場所から様子をただ見られるだけではなく、ネオスケアは事故につながる可能性のある行動を察知して知らせてくれるのが魅力に感じました。
実際、事故などかなり減ったのではないでしょうか?
ネオスケアに限らない事ですが、新しい機器等を導入すると手を止めたり考えたりが発生して、一度は効率が下がるものなのですぐに激減というわけにはいきませんでした。
ただ、ネオスケアは察知した危険性のある行動の前後10秒間が録画されて確認できるので、なぜその行動に至ったかや事故の前後の様子が分かり、「見守りの強化」だけだった事故の対策がより具体的に、個別性を持たせて立てられるようになったのはとても大きかったです。
また、事故に繋がる事だけではなく普段の生活リズムもネオスケアを通じて新たに発見する事もあり、利用者様のケアに活かす事ができるようになった点も、導入した後で「こんな活用の仕方もできるんだ」という発見になりました。
ケア樹もネオスケアも、ただ導入して機能を利用するのではなく
様々な調整やスタッフさんとの連携をしっかり取る事で、期待していた以上の成果に繋がった事がよく分かりました。
貴重なお話をたくさん聞かせていただきありがとうございました!
天神 洋平
所属:社会福祉法人聖明福祉協会(特別養護盲老人ホーム 聖明園寿荘)
〒198-8531 東京都青梅市根ケ布2丁目724番地
鍼灸師、柔道整復師の資格を持ち、長く鍼灸接骨業界で働く。
介護予防事業への参画や介護認定審査会委員などを経験し、高齢者福祉の業界に興味を持ち転職。
特別養護老人ホーム聖明園寿荘では働き方改革会議メンバーの一員として、ICT化・電子化を主に担当。
福祉機器、次世代介護機器の選定から補助金申請、導入などを、スマート介護士資格により得た知識と経験で推進していっている。
中門 千恵子(所属:NPO法人タダカヨ)
福祉系専門学校卒業後、介護職員やケアマネジャーとして様々な施設で勤務。福祉系パラレルワーカーを目指し、現在は訪問介護ヘルパーとして勤務しながら、介護保険外の個人ヘルパーとしても活動。現場で、書類の多さや職員のコミュニケーション、ITツールの課題に直面した経験から、ITの導入で介護業界で働く人達の力になりたいと思いタダカヨに参画。
介護福祉士、ケアマネジャー。
NPO法人タダカヨ
「ITを上手に使って、お金をかけずにより良い介護へ」のビジョンの元、介護業界のIT活用を支援するNPO法人です。
https://mmky310.info/