全ての介護サービス事業者様において経営情報を都道府県知事に報告することが義務化されたことについて解説を行う。
目次
1.今年度から経営情報の報告が全サービスに義務化に
今年度より、全ての介護サービス事業者様が経営情報を都道府県知事に報告することが義務化された。
社会福祉法法人や、みなし指定事業者も例外では無い。報告が求められる。期日までに報告が行わない場合には、期間を定めて報告することが命令され、それでも報告を拒んだ場合、指定の取り消し、業務停止処分に出来るとされている。
なお、経営情報を報告しなくても良いケースは2つある。
1つは1年間の収入が100万円以下の場合である。長期間休業していたり、決算月ギリギリに許認可を受けて稼働日数が少ない場合や、みなし指定を受けていて稼働率が少ない場合などが該当する。
もう1つは、自然災害に被災して報告が出来ない場合である。
2.報告すべき経営情報
今回の義務化で報告するのは、以下の4つのポイントとなる。
- ①事業所施設ごとの名前、名称、所在地、法人番号、消費税の区分、経理方法、事業所番号等の基本情報
- ②事業所、施設ごとの収益と費用の内容
- ③職員の職種別人数の報告
- ④その他必要な事項
以下が、4つのポイントの解説となる
①事業所施設ごとの「名前」、「名称」、「所在地」、「法人番号」、「消費税の区分」、「経理方法」、「事業所番号等」の基本情報
②事業所、施設ごとの収益と費用の内容
端的に言うと、【事業所ごとの収支計算書】を報告する。
ただし、収支計算書をそのまま報告するのでは無く、集約したものになる。今回、基本的に国が求めているのは、営業利益までである。
最低限に、報告すべき区分は、「収益」、「給料費」、「業務委託費」、「減価償却費」、「水道光熱費」、「その他経費」の6つである。
損益計算書上で、細かく勘定科目を分けていたら、それぞれの区分に分類して、合算して報告することが必要となる。まだ、任意で報告を求めている内訳区分もある。
③職員の職種別人数の報告
例えばデイサービスであれば、管理者1名、生活相談員1名、看護職員1名、介護職員3名、機能訓練指導員1名と言うように、決算年度の初日の属する月に在籍した職員数を報告する。
④その他必要な事項
併設サービスの有無。
「医業」や「障害福祉事業」の「兼業の有無」を報告する。医業や障害福祉事業の兼業がある場合には、任意項目として、「医業収益」や「障害福祉事業の収益」などを報告する。
この4つを基本的には事業所ごとに、やむを得ない場合は法人単位で報告することになる。
3.報告期限と報告手段
報告期限は、各会計年度終了後、3月以内とされた。
報告方法は、介護事業財務情報データーベースシステムに電子申請として、経営情報を報告する。
この場合、2つの方法が想定される。一つは、会計ソフトが対応している場合である。会計ソフトが、CSVというデータ形式で経営情報のデータをアウトプットして、これをシステムに提出する。または、コンピュータの画面上に手入力する。
新たなデータベースにアクセスするためには、「GビズIDプレミア」のアカウントを取得しなければならない。これは、報告が義務化された全ての介護サービス事業者に求められる事前作業である。この取得方法は、「オンラインでの申請」と「書類の郵送申請」の2つの方法がある。
会計年度終了後3月以内に報告すること基本的なルールであるが、今年度は、2025年1月から3月の間での報告が必要となっている。今回の報告対象は、2024年3月から2024年12月までに終了する決算期である。
4.GビズIDの取得
介護事業者側で取得するのは、「GビズIDプライム」のアカウントである。申請方法は2種類用意されている。
1つは、オンラインで取得する方法である。
手続きには、法人の代表者のマイナンバーカードと専用のアプリをインストールしたスマートフォン、そしてメールアドレスが必要だ。パソコンの画面上で、基本事項を入力し、メールアドレスを登録すると、確認メールが送信されるので、これを認証する。
認証後のパソコンの画面に、スマートフォンで読み取るためのQRコードが示される。このQRコードをスマートフォンのアプリで読み込むと、登録画面が表示される。その後、マイナンバーカード上にスマートフォンを置いて、マイナンバーカードの情報をスマートフォンで読み込む。その内容が、パソコンで入力した基本情報と突合されて、認証が完了となる。
最後に、パスワードを登録してオンライン審査が完了する。なお、IDは、登録に使ったメールアドレスである。
もう1つの方法は、書類を郵送して申請する方法である。
印鑑証明と申請書を郵送して、IDとパスワードを取得する。この場合は、2週間以内という時間を要する。オンライン申請では、法人の代表者のマイナンバーカードでの手続きが必要であるため、中規模以上の法人に場合は、書類申請が現実的だと言える。
このアカウントに登録することで、この「GビズID」につながっている全ての行政サービスで利用できる、統一アカウントとなる。
来年度までに、すべての自治体における、介護保険制度関連手続きが電子申請システムに移行となるが、ここでも「GビズID」が必要となるであろう。
「GビズID」の利用では、現時点で利用料金は掛からない。また、「GビズID」では、メールアドレスをアカウントで利用するために、メールアドレスは必須である。基本的には24時間、365日稼働するが、定期的なメンテナンスが有るので、その時間帯においては利用できない。
現時点では、アカウントの有効期限は無い。ただ今後、アカウントの有効期限を設ける予定である。
「GビズID」]を使って、データ提供の外部委任も可能である。例えば、契約している会計事務所が、経営情報の提供代行を行う事が可能となる。今後は、記帳代行のように専門の代行業者も出てくるだろう。
5.介護事業財務情報データーベースシステム
報告は、「介護事業財務情報データベースシステムの画面からデータを入力する方法」と「介護サービス事業者が使用する会計ソフトウェア等からファイルを出力して、このファイルをシステムの画面から取り込む方法」の2通りがある。
事業所担当者は、システムを利用して、損益計算書等データの登録から追加情報登録までの一連の作業を実施して、経営情報を登録が完了する。運用方法などの詳細は、2024年11月までに運用マニュアルなどが発出される。
資料出典:厚生労働省 会計ソフトウェアベンダ向け説明会資料 [5.9MB]
P1(PDF P4) 介護現場介護サービス事業者の経営情報の調査及び分析等の制度について
小濱 道博 氏
小濱介護経営事務所 代表
C-SR 一般社団法人介護経営研究会 専務理事
C-MAS 介護事業経営研究会 顧問
昭和33年8月 札幌市生まれ。
北海学園大学卒業後、札幌市内の会計事務所に17年勤務。2000年に退職後、介護事業コンサルティングを手がけ、全国での介護事業経営セミナーの開催実績は、北海道から沖縄まで平成29年 は297件。延 30000 人以上の介護業者を動員。
全国各地の自治体の介護保険課、各協会、介護労働安定センター、 社会福祉協議会主催等での講師実績も多数。「日経ヘルスケア」「Vision と戦略」にて好評連載中。「シルバー産業新聞」「介護ビジョン」ほか介護経営専門誌などへの寄稿多数。ソリマチ「会計王・介護事業所スタイル」の監修を担当。