令和6年度介護報酬改定において、第一号事業(介護予防・日常生活支援総合事業)においては大きく目立った変更点は無い。しかし、相当な事業者数が存在する第一号通所事業及び第一号訪問事業についてわかりやすく解説を行う。
1.第一号通所事業の変更点
第一号通所事業においては、予防通所リハビリテーション同様に、運動機能向上加算が廃止され、基本報酬に包括された。同時に、選択的サービス複数実施加算が一体的サービス提供加算となった程度である。
この加算は、栄養改善加算と口腔機能向上加算の要件を満たした上で、2つの加算に変えて算定出来る。
指定相当通所型サービスの基本報酬には、入浴介助及び運動器機能向上サービスの実施に係る費用が包括評価されている。
その利用者が可能な限りその居宅において、自立した日常生活を営むことができるよう、必要な日常生活上の支援及び機能訓練を行うことによって利用者の心身の機能の維持回復を図り、もって利用者の生活機能の維持又は向上を目指すものであるため、サービスの実施に当たっては以下の点に留意するとされた。
【留意点】
①入浴介助は、利用者自身で又は家族等の介助によって入浴ができるようになることを目的として行う。この際、利用者の状態や、当該利用者が日頃利用する浴室における当該利用者の動作及び浴室の環境を確認し、これを踏まえて、利用者が日頃利用する浴室に近い環境で行うことが望ましい。
②運動器機能向上サービスは、専従の機能訓練指導員を1名以上配置して、国内外の文献等において介護予防の観点から有効性が確認されている手法等を用いて行うこと。
また、送迎は、外部委託が可能となった。この場合、送迎を行わない場合の減算の適用は無い。委託費の額は送迎を行わない場合の減算の額を踏まえて、事業者と委託先との間の契約に基づき決定する。
この他、総合事業の実施主体としての市町村が、地域全体で高齢者の移動手段を確保するという視点に立って、利用者の送迎を、地域の交通事業者等による通所型サービス・活動Aとして委託することや、地域住民の互助活動による訪問型サービス・活動B及びD並びに一般介護予防事業として補助することによって、事業者以外の者に担わせる場合は、事業者が送迎を実施していないために、当然に本減算が適用されるとされた。
2.第一号訪問事業の変更点
複数の要支援者等がいる世帯において同一時間帯に訪問型サービスを利用した場合、それぞれに標準的な所要時間を見込んで介護予防サービス計画に位置づけるとされた。
この扱いは、要介護者と要支援者等がいる世帯において同一時間帯に訪問介護及び訪問型サービスを利用した場合も同様である。
指定相当訪問型サービスは、利用者が可能な限りその居宅において、自立した日常生活を営むことができるように、入浴、排せつ、食事の介護その他の生活全般にわたる支援を行うことで、利用者の心身機能の維持回復を図り、利用者の生活機能の維持又は向上を目指すものであるため、特に生活援助中心型の単位数を算定する場合は、要支援者等のできることを阻害することのないよう留意することと1点明記された。
また、介護報酬の訪問介護同様に、口腔連携強化加算と同一建物減算に12%の区分が創設されている。介護職員等処遇改善加算の取扱も同様である。
3.老認発0319第3号全体においての変更点
市町村は、従前相当サービスとしての第一号事業費の額を別に定めることも可能で、適切な額の設定を行うとされた。この場合、報酬告示に定める単位数の変更(単位数の引上げを含む。)のみが可能とされ、加算や減算の設定を行うことはできない。
指定事業者に対して市町村独自の評価を行う場合は、委託費を支払う等の方法によるとされている。
例えば、訪問型サービス費について、地域の事業所が小規模である場合や、利用者が限られる場合等には基本報酬の単位数を引き上げることが出来る。また、通所型サービス費については、運動器機能向上加算が廃止されたが、地域全体で運動器機能向上の推進を図る観点から、改正前後の単位数の差と廃止される前の運動器機能向上加算の単位数を踏まえて、基本報酬の単位数を適切な範囲で引き上げることも可能であるとした。
従前相当サービス以外の事業に係る第一号事業支給費の額については、単位数の変更、報酬告示に定めのない加算や減算の設定等、市町村による柔軟な設定が可能とされている。
また、各サービスに介護報酬同様、高齢者虐待防止措置未実施減算と業務継続計画未策定減算が創設されている。
【運営よりケア樹ユーザーの皆様へ】
令和6年度介護報酬改定により、総合事業におけるサービスコードは各自治体がサービスコードマスタを発表次第、システムに取込を行っております。
もし、発表されたにも関わらずまだ登録されていないサービスコードがございましたら、是非ご連絡くださいませ。
「現在のケア樹へのサービスコード取込状況の確認」と「ご連絡先について」はケア樹ログイン画面下部のお知らせ欄にリンクがございますので、そちらをご確認ください。
※システムへのサービスコード取り込みにはPDFやExcelの一覧ではなく「CSV形式のマスタ」が必要です。
小濱 道博 氏
小濱介護経営事務所 代表
C-SR 一般社団法人介護経営研究会 専務理事
C-MAS 介護事業経営研究会 顧問
昭和33年8月 札幌市生まれ。
北海学園大学卒業後、札幌市内の会計事務所に17年勤務。2000年に退職後、介護事業コンサルティングを手がけ、全国での介護事業経営セミナーの開催実績は、北海道から沖縄まで平成29年 は297件。延 30000 人以上の介護業者を動員。
全国各地の自治体の介護保険課、各協会、介護労働安定センター、 社会福祉協議会主催等での講師実績も多数。「日経ヘルスケア」「Vision と戦略」にて好評連載中。「シルバー産業新聞」「介護ビジョン」ほか介護経営専門誌などへの寄稿多数。ソリマチ「会計王・介護事業所スタイル」の監修を担当。
