・介護現場でペーパーレスをすすめるには

LIFEによって大きく脚光を浴びているのが、介護記録ソフトである。基本的には、日々の介護記録において、タブレットを用いて入力することで、自動的にコンピュータにデータが送信されて蓄積され、電子データ化される。介護計画書やアセスメント、スクーリングなどの日常業務を、介護記録ソフトを介して行う事で、LIFEへのデータ提供がオートメーションで行う事が可能となる。実際、LIFEに情報を提供するために、全利用者の介護計画書等を紙ベースで作成して、パソコンに手入力することは非効率的で職員の負担も大きい。特に、複数のLIFE関連の加算を算定する場合は尚更である。

介護記録ソフトを細かく精査していくと、計画書の作成や、記録の記載についても多くの問題が存在している。介護記録ソフトを導入したが、現場レベルで活用されていない介護施設を多く見かける。最たる例が、現場レベルでは、未だに紙ベースで記録が作成されて、後で介護記録ソフトに手入力しているケースである。タブレットも最初は導入したが、現場では高齢の職員が多く、使いこなせないという理由で紙ベースの記録に戻ってしまっている。そもそも、介護記録ソフトは、紙ベースで記録を作成してパソコンに手入力するという2段階の作業プロセスを、タブレットに入力するだけの一段階で完結させるためのICT機器である。紙の記録を残すのであれば、導入の意味が無い。

ある介護施設で、LIFEの活用のために介護記録ソフトを導入した。しかし、職員から、タブレットで介護記録を入力して、間違ったときの修正方法が面倒だから、介護記録は従来通りに紙ベースで記載すると言われた。これでは、介護記録ソフトを入れた意味が無い。小規模な事業所に於いては特に、現場サイドでのICT化に対する拒否反応が強い。介護ロボットを導入した介護施設でも、実際に使われずに倉庫に眠っているケースを見かける。何のためのICT化なのかを職員に理解させないと、いつまで経ってもICT化は進まず、業務改善や効率化も進まない。この辺りは、経営陣のICTへの理解も大きく影響する。先進的にICT化を成功させている介護施設の多くは、経営者がICTやDXに強い関心を持っていることが共通している。ICT化に関心を持てない経営陣は、先進的な介護施設を是非、視察して見るべきだ。そこでは、ICTを活用することが日常となり、高い生産性と業務の効率化を実現していることに気づくだろう。

・ペーパーレスに寄与する？ケアプランデータ連携システム

ケアプランデータ連携システムも同様である。介護サービスは、役務の提供がサービスであり、労働集約型のビジネスである。人材の確保が年々厳しさを増す現状の中での対策は、ICT化の推進であり、業務の効率化である。ICT化を中心として、介護の質の低下を招くことなく、質の向上を図りながら、介護現場の業務負担軽減と人員配置の効率化を実現する。この方法にしか、具体的な対策が見いだせない。令和5年度より、ケアプランデータ連係システムの提供が開始された。従来から、ケマネジャーと担当事業所間での提供表などのやり取りは、基本的に紙ベースで行われ、給付管理ソフトや介護報酬請求ソフトなどに手入力するという二度手間が発生していた。これを、ケアマネジャーと担当事業所、各々でクライアントソフトを導入して電子データとしてやり取りする。それを給付管理ソフトや介護報酬請求ソフトなどに取り込むことで二度打ちの手間が無くなる。例えば、月初に担当事業所から届く提供実績表は、ケアマネジャー一人あたり100枚前後となる。これを給付管理ソフトに入力するために3日間程度の時間を要している。これが、1日も掛からずに終えることが出来る。圧倒的にケアマネジャーの手間が削減される。今、行政の主導で、紙の廃止が進められているのだ。

・現場の気持ちに目を向ける

ICTの活用は、職員が楽になった、導入して良かったと感じないと、決して成功とは言えない。コロナ禍の影響でオンライン会議システムとオンライン研修が普及した結果、職員は自分の時間を有効に利用出来る環境を手に入れつつある。うまく活用できれば業務は楽になり、自分の時間を増やすことができるのである。ICT化の弊害となっているのが、PCなどを苦手とする職員の存在であろう。そのために、介護記録ソフトやケアプランデータ連携システムが中々、組織に浸透しない。導入時に職員が【使いやすいソフト】を選択する。現場に寄り添い、ここから、ICTアレルギーを払拭することで、スムーズなICT化が可能となり、職員も安心して紙ベースの業務から脱却できる。そして初めて業務の効率化が進むのではないか。

出典：財政制度分科会（令和5年5月11日開催）資料