令和6年2月からの介護職員処遇改善支援補助金、。4月から5月の現行の処遇改善3加算、。6月からの介護職員等処遇改善加算の提出期限は4月15日に統一された。
ただし、6月からの介護職員等処遇改善加算については、執筆時点(令和6年3月15日)では案の段階であり、小規模事業者向けの【別紙6】が出されていない。そのため、今回は2月からの介護職員処遇改善支援補助金について解説を加えていく。
1.介護職員処遇改善支援補助金のポイント
介護職員処遇改善支援補助金の交付率は、すでに介護サービス毎に示されている。一月当たりの介護報酬総単位数(介護職員処遇改善加算および特定処遇改善加算の金額を含めた金額)に交付率を掛けて受給額を計算する。処遇改善3加算を含めた金額で計算する部分が、既存の処遇改善加算と異なるので注意が必要だ。
ポイント解説、注意が必要な点は5つ
①受給は2月分から5月分の4ヶ月限定で、6月分からは、新たな介護職員等処遇改善加算に包括されること。
この点は、2月からの6000円相当の支給を令和6年度の改定率に組み込むための措置である。2月から加算とした場合、令和5年度の改定となるため、4ヶ月は補助金で対応して、6月から加算とすることで、令和6年度の改定率となる。大きな違いは、補助金では利用者負担は生じず、加算は利用者負担が発生する事である。
②基本給等での賃金改善は、4月分と5月分の2月分の受給総額の3分の2以上を4月分と5月分で引き上げること。それ以外の2月分、3月分、および3分の1未満の4,5月分は一時金となる事。
③支給月は処遇改善加算等と合わせること。処遇改善加算等が2月遅れでの支給の場合、支援補助金も2月遅れでの支給とすること。
④令和6年6月以降においても、本事業により講じた賃金改善の水準を維持すること。
この3つのポイントは纏めて解説する。
これまでのベースアップ等支援加算と解釈が異なるので注意が必要だ。現在、処遇改善加算等が2月分を4月の給与で支給している場合は、今回の支援補助金も2月分を4月の給与で支給することになる。
では、2月分を2月の給与で払った場合はどうなるのか。支援補助金の支給は5月で終了する。
新たな処遇改善加算では、6月分は8月の給与での支給となる。そうすると、6月と7月の処遇改善分の資金源泉が無い事となる。しかし、この2月間は支給しない事は不可である。それは、④で示されている。6月と7月を支給しない場合、賃金改善の水準が下がることになるため、自腹での支給が求められることになる。
⑤賃金改善は、ベースアップ(賃金表の改訂により基本給等の水準を一律に引き上げること)が基本であること。処遇改善計画書には、ベースアップの見込みを記載すること。実績報告書には、ベースアップの実施有無及びベースアップ率等を記載すること。
2.一律に昇給するベースアップでの実施が求められた
今回の支援補助金では、賃金表の改訂により基本給等の水準を一律に引き上げることを求めている。
これは、4月分と5月分の2月分の受給総額の3分の2以上を月給ベースで支給する部分についての規定である。
同じ職の職員間での支給額に格差があってはならないと言うことだ。同じ職種では、全員一律に賃上げを行う必要がある。例えば、介護職員は、全員が一律で月額3000円の昇給。看護職員は一律で1000円の昇給といった具合である。
このベースアップの実施の有無を計画書に記載して、実施した結果のベースアップ率は、実績報告書に記載しなければならない。実施していない場合は、その理由の記載が必要となる。この規定では、3分の1未満の一時金での支給が認められている部分については適用されないので、柔軟な配分が可能である。
3.6月からは介護職員処遇改善支援補助金に統合される
この補助金は2月から5月の4ヶ月間だけの支給である。
6月からは、新たに一本化される介護職員等処遇改善加算に含まれる事になる。5月までは補助金であるため、利用者の負担は無い。6月からは加算となるため、利用者負担が発生する。また、加算の場合は計算方法が変わり、一月当たりの介護報酬総単位数(介護職員処遇改善加算および特定処遇改善加算の金額を差し引いた金額)となる。
6月からは、現行の介護職員処遇改善3加算が廃止となり、新たに創設される介護職員等処遇改善加算に一本化される。特例として、令和6年度末(令和7年3月)までは、新加算の区分Ⅴの1−14として、既存の算定要件での継続も可能である。
小濱 道博 氏
小濱介護経営事務所 代表
C-SR 一般社団法人介護経営研究会 専務理事
C-MAS 介護事業経営研究会 顧問
昭和33年8月 札幌市生まれ。
北海学園大学卒業後、札幌市内の会計事務所に17年勤務。2000年に退職後、介護事業コンサルティングを手がけ、全国での介護事業経営セミナーの開催実績は、北海道から沖縄まで平成29年 は297件。延 30000 人以上の介護業者を動員。
全国各地の自治体の介護保険課、各協会、介護労働安定センター、 社会福祉協議会主催等での講師実績も多数。「日経ヘルスケア」「Vision と戦略」にて好評連載中。「シルバー産業新聞」「介護ビジョン」ほか介護経営専門誌などへの寄稿多数。ソリマチ「会計王・介護事業所スタイル」の監修を担当。