ケア樹あそぶ for Pepper <伊達な介護ロボプロジェクト>

ケア樹あそぶ for Pepper  in 伊達な介護ロボプロジェクト

伊達な介護ロボプロジェクトは、東北は仙台から発信する、地域包括ケア・共生型サービスにおけるコミュニケーション型ロボットの在り方、またその活用方法や関わり方を未来志向で考える、そんな草の根活動のプロジェクトです。

伊達な介護ロボプロジェクトは、仙台市泉区の地域密着通所介護事業所である「ゆらリズム」と介護に関するIT・IoTを開発している「株式会社グッドツリー」の出会いから始まりました。
ゆらリズムは、音楽リハビリプログラムを提供し、この地域では大人気の地域密着通所介護事業所です。
職員の皆さんが常に高いレベルの音楽療法を利用者に提供し、利用者も「ゆらリズム」を生きがいにしています。
利用者の表情は一様に明るく、みんな音楽が大好きで、通うのを楽しみにしています。
ブラジルで音楽療法を指導したり、フィンランドの留学生を受け入れたり、「音楽」をハブとして理想の介護を世界にアピールする日本国内でも先進的な介護事業所です。

社長の野崎さんは世界共通語である「音楽」に「IT・IoT」の要素を加えて未来の介護やケアを考えていけないかとずっと考えていました。
そんな時に地元の研修会で出会ったのが、実は何気に近所にあったIT企業、弊社グッドツリーでした。

弊社グッドツリーは介護請求に端を発して、介護に本当に役に立つIT・IoTとは何かをずっと考えていました。
介護請求だけでなく、介護記録などを販売しているものの、もっと何か介護に対して良い提案ができないか模索していたのです。

研修会に参加していたグッドツリーの宋はグループホームでボランティアをしながら、趣味でおじいちゃんやおばあちゃんに喜んでもらえるロボットを作っていた技術者でした。
いろいろな事を試した結果、Pepperが一番良いと考えた宋は、その年、介護向けの「 ケア樹あそぶ for Pepper 」を開発していました。

野崎さんと宋、意気投合した二人は、人型ロボットPepperを使って介護に役立つ提案をしたいと考えるようになりました。
また、ちょうどそのころグッドツリーに入社してきた山田はその考えに賛同して、動かないと始まらない、継続的に行える何かをするべきだと提案しました。

3人は考えました。

――――仙台から発信して地域の介護福祉から世界の介護福祉へ。何かおもしろいことがしたい。

伊達な介護ロボプロジェクトが提案するPepperの可能性

音楽リハビリプログラムをケア樹あそぶ for Pepperに取り入れる。

それは野崎さんの未来の介護へ向けた提案でもありました。

音楽と同様、Pepperのような人型ロボットにも国境はありません。
ロボットには差別も人種の違いも好きも嫌いもなく、同じ作業ばかりでも飽きる事がありません。
みんなの中心になってみんなを繋げていける、そんな可能性があるのです。

しかしPepperに、高齢者に生きがいをプロデュースする「ゆらリズム」のメソッドの全てを搭載するのは夢のような話です。

ケア樹あそぶ for Pepper はコンテンツのカスタマイズ機能を持ち、誰でも簡単に・自由にPepperの動作を作ることができます。
そこで、まずは音楽リハビリプログラムの一部を取り込んでみることにしました。

音楽療法が高い人気を誇る一方で音楽療法士が少ない現状、また、そもそも業界で叫ばれている人材不足において
Pepperがハブとなって、これら介護の人材不足問題を解決できないだろうか。

またこれを皮切りに盛んに使われるようになった「地域包括ケア」や「共生型サービス」という言葉の独り歩きも解決できないだろうか。

グッドツリーの二人は介護ソフト開発会社の社員という立場以上に、野崎さんの理念に感動して是非一緒にやりたい、やらなければと決意を新たにしました。

今後の活動は継続的に。
音楽リハビリプログラムの搭載を皮切りに、様々なアプローチで行ってみよう。

最初の一歩は実証実験の公開から始まりました。

伊達な介護ロボプロジェクトの始動

初めて行う「ロボット」を中心に据えた介護事業所イベントです。

ゆらリズムのスタッフのみなさんは、一生懸命考えました。

利用者さんは、Pepperをどんな風に動かしたら喜ぶのか、どんな発言をさせたら可愛がってくれるのか。
どうしたら見慣れない「ロボット」を受け入れてくれるのか。

「やはり、利用者さんは音楽リハビリプログラムが大好きで、歌や音楽の演奏が大好きでゆらリズムに通っている。」
「それに、ロボットに直接話しかけられたら面白いと思うかもしれない。」
「子どもの設定になっているので生意気なことを言わせた方が可愛いかもしれない」

考えを形にするために、ゆらリズムのスタッフは ケア樹あそぶ for Pepper を使って準備をしていきます。
初めてのことなので、グッドツリーも手伝います。

パソコンでメインの音楽リハビリプログラムコンテンツを模倣作成し、スマホでリモートコントロールして随時発言を加える。
様々と機能を考えた上での最初の運用が決まりました。

さて、勝負の時です。

第一回 伊達な介護ロボプロジェクト ~実証実験の公開~

当日は驚くべきことに、地域のテレビ局が多数取材に訪れました。

音楽リハビリプログラムは少し不具合が出ましたが、逆にその拙さや微妙な間が利用者の笑顔を引き出しました。
音楽に合わせて利用者さんは軽い運動をしたり、トーンチャイムで演奏をしたり、
ゆらリズムのプログラムである、ケア樹あそぶ for Pepperのコンテンツ「音楽リハビリプログラム」を楽しんでくれました。

多少話がかみ合わない場面があっても、利用者さんはPepperをまるでお孫さんのようにかわいがってくれました。

またリモートコントロールによる呼びかけ設定は、その場でPepperが利用者さんのお名前を呼んで励ましたり、
生意気なことを言ったり、素早くツッコミをいれたり、その場を和ませることに大きく成功しました。

利用者さんは休憩時間になると、ケア樹あそぶ for Pepper のデフォルトコンテンツである
豆知識クイズや脳トレも積極的に楽しんでくれました。

その日は多くの取材が来たため、利用者さんはインタビューをたくさん受けました。
最初は驚いていたり恥ずかしがったりしていましたが、最後はとても楽しそうでした。

あまりの大きな反響に衝撃を受けましたが、利用者さんはPepperに興味津々で楽しく一緒に遊んでくれました。
実験としては、ケア樹あそぶ for Pepper のカスタマイズ機能による音楽リハビリプログラムは大成功。
利用者さんは大喜びで、スタッフのみなさんにも笑顔があふれました。

第二回 伊達な介護ロボプロジェクト ~伊達カフェ~

ケア樹あそぶ for Pepper を通じた友情は、活動にさらなる展開を生みました。
東北の介護福祉と言えば、そう、スポーツでも有名な東北福祉大学です。

東北福祉大学の情報福祉マネジメント部の漆山先生は、
Pepperを使って重度の身体障害者への支援ができないか研究しています。

漆山先生に、地域への参加、学生の介護福祉のロボット利用の理解を深めて今後の学生の研究に役立てるためにも
伊達な介護ロボプロジェクトに参加してもらえないだろうかと相談しました。

漆山先生は伊達な介護ロボプロジェクトの理念に賛同、参加を快諾してくれました。
当日は予想を超える大勢の学生を引き連れて、伊達カフェに参加。

伊達カフェは3つのパートで行われました。
1つ目は全員で介護事業所での活用事例ということで、野崎さんと宋さんのプレゼン。
2つ目はPepperのプログラム講座と、Pepperの社会人による運用方法の伝授の2グループに分かれた講座。
3つ目は4つのテーブルに分かれたアイデアソン。

介護福祉にロボットを役立てるには…
介護福祉でロボットが活躍できるのか…

学生さんは本当に真剣で、課題に一生懸命取り組んでいました。

ロボットと言ってもPepperについてになってしまいましたが、
1つ目のパートで事例の紹介、2つ目のパートで実際の動かし方と、かなり具体的に話は進みました。

最後のテーマを4つにわけたアイデアソンは特に盛り上がりを見せました。
「対話術」「介護予防」「意思伝達支援」「見守り」でのロボットの活用を考える内容でした。

学生と社会人が真剣にロボットの利用について語り合いました。
【将来の介護福祉の現場で、ロボットをこのように活用したい!】

アイデアが盛りだくさん出てきて時間はあっという間に過ぎてしまいました。
最後に各テーブル毎に発表し、大盛り上がりで幕を閉じました。
正直なところ、時間は全然足りませんでした。

東北福祉大学のみなさん、漆山先生とは伊達な介護ロボプロジェクトに賛同してくれた仲間として、
その後も引き続き一緒に活動を続けています。

伊達な介護ロボプロジェクトの行く先

伊達な介護ロボプロジェクトはこれまで様々なテーマを絡めながら継続的に行われてきています。

ゆらリズムは今年、仙台の「ビジネスグランプリ2018」で優秀賞に輝きました。

伊達な介護ロボプロジェクトで行ったPepperを店長とした子ども食堂の運営、

『多世代が集う交流の場としての展開の実現などを元に、
 地域コミュニティーのハブ的機能を果たし、バリアフリーな共生社会を目指す』

その理念が高い評価を受けました。

もちろん、それだけではありません。
ゆらリズムは「音楽で健康も生きがいも」をスローガンに、
全国初となる音楽療法に特化した高齢者のデイサービスや障がい児の放課後デイサービス事業などを展開していること。
その音楽リハビリは海外からも注目され、研修生の受け入れも行っていること。
その要素のすべてが絡んでいます。

現在力を入れているのは伊達な介護ロボプロジェクトである、
~音楽×食×ロボットを通じて地域共生社会の実現~をテーマにした多世代型交流の子ども食堂の展開
です。

ここは高齢者・現役世代・学生・子ども達が集い、互いに助け合い、楽しみながら同じ時を過ごします。
介護される人も、されていた人も、障がいをもった人たちも同じ空間で一緒に楽しむことができるのです。

地域包括ケア、共生型サービス。
独り歩きしていたこれらの単語は今、Pepperを中心としたこのプロジェクトによって内容の伴ったものへと形を変えつつあります。

ここからは、ゆらリズムのホームページを抜粋させていただきます。

ゆらリズムは2020年までに、児童・障害者・高齢者まで集える「ゆらリズムcafe」を作ります。
そこは、高齢者が集い、歌って、体操し、栄養バランスのある食事を提供する「音楽リハビリサロン」としても機能し、
放課後デイを卒業した障害者などがスタッフとして働きます。

高齢者のみのサロンではなく地域の「元気高齢者」「大学生」「子育て世代」など多世代が気軽に立ち寄れるcafeとします。
また毎年JICA(国際協力機構)プロジェクトで来日している「外国人」にも参加してもらいたいと思います。

「ゆらリズムcafe」は常に音楽が流れる空間です。
地域の「学生」や「高齢者」などが気軽に演奏や歌など披露できるスペースも用意します。
またpepper君などロボットが常駐し、一人一人のヘルスケアデータを管理します。
「ゆらリズムcafe」では地域連携のツールとして「音楽」「食」「ロボット」を活用したいと考えています。
これからのゆらリズムの活動にご期待ください。

ケア樹あそぶ for Pepper の行く先

ゆらリズムとグッドツリーには強い絆があります。

ケア樹あそぶ for Pepper によって実現できること、できないこと。

現在、ゆらリズムでは、Pepperを寺口さんと中西さんを中心に介護事業所での活かし方、
また、高齢者により愛されるPepperであるために様々な工夫を考えています。

また、2017年に財団法人テクノエイド協会の介護ロボットモニター調査事業に採択されたことで、
より綿密に効果や必要なコンテンツの検証が行われています。

施設長の鴇田さん、副施設長の川島さんは、ケア樹あそぶ for Pepper について、
その効果検証に大きく協力してくれています。

機能としての細かい修正部分や、Pepper自体の限界やそれをどのように補うのか、
また、介護事業所の忙しい時間の中で、どのようなコンテンツが必要なのかなど、
伊達な介護ロボプロジェクトだけでは導き出せなかった事が沢山わかるようになりました。

今までは、お話し好きな高齢者の話し相手であったり、
音楽やクイズ、搭載しているアートなどで認知症の症状を和らげる効果があることはわかっていましたが、

今回分かったことは、
普段おとなしく発言の少ない高齢者にやる気をもたらす
という事です。

普段あまり返事も少ないような高齢者が劇的にやる気になるケースが認められ、
「人とのコミュニケーションではなく、ロボットだからできるコミュニケーションがある」
という事が分かりました。

仮説の段階ですが、
恥ずかしがり屋さんや遠慮深い高齢者はあまり自己主張をしたがらない傾向がありますが、
人相手ではなく、ロボットだからこそ、その恥ずかしさや遠慮は失われ、
積極的なコミュニケーションができる可能性があります。

伊達な介護ロボプロジェクトによる地域包括ケアや共生型サービスのヒントだけでなく、
このような綿密な調査を行うことで、
Pepperは地域の介護の中で大きな存在になっていく可能性を秘めていると考えます。

ケア樹あそぶ for Pepper は、今後も介護に対する貢献を考えながら改善を続け、

未来の介護を作る礎になりたい と考えています。